放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「40歳のリーダー職です。番組やドラマのキャスティング術は、会社のプロジェクトメンバーの選定、担当者のアサインなどにも通じると思います。放送作家さんのテクニックがあれば教えてください」という質問をいただきました。
『笑っていいとも!』などの地上波、ABEMAなどのネット番組、そして僕が原作を手がけた映画と、これまで数多くのキャスティング会議に参加してきました。
いま企業研修のプロデュースも任されていますが、エンタメ界で叩き込まれた「誰を呼ぶか?」「誰と誰を組ませるか?」「数字につながるか?」などのノウハウは、ビジネスシーンにも大いに通じています。
また、うまく機能しないチーム、風通しの悪いプロジェクトなどで起こっているキャスティングミスにも、多くの共通点があることが分かってきました。
そこで今回は、『リーダーが間違えやすい2つのキャスティングミス』と題して、僕の知見をシェアしていきたいと思います。
①市場に対応できないチームの特徴
以前、ある企業の新プロジェクトのお手伝いをしたとき、顔ぶれが超ベテランばかりで面食らったことがあります。
某スタートアップ企業では、会議室にいるほぼ全員が、社長と似た髪型、スーツ、日焼けだったのでギョッとしたことがあります。
ビジネスを進めるには「気が合う」「やりやすい」も必要な要素なので、こういったメンバーの選定は一理あるでしょう。
しかし、企業であれ芸能であれ、すべてのビジネスの目的は需要の獲得なので、「多様化する市場のニーズにアジャストするには、多様なキャラクターを持ったメンバーを揃えたほうがいい」のです。
『さんま御殿』『ダウンタウンDX』『笑っていいとも!』などの長く愛された番組には、かならず老若男女、多様なキャラクターを持った人たちがキャスティングされてきました。
その最大の狙いは「知と知のイノベーション」です。
さんまさん、タモリさん、ダウンタウンさんら話芸を確立したカリスマは、1人で喋っても番組が成立します。しかし、それだけではイノベーションは起こりません。
高齢者、子役、アスリート、海外出身者、トランスジェンダーなど、多様なキャラの人たちが、互いの「すでに持ち合わせている知性」を結合させ、闊達なトークをしていくことで、新たな番組のファンダムや需要が広がっていくのです。
これは企業のチーム編成も同じ。経営者やリーダーは、自分が喋りやすいメンバーを揃えたり、自分のドッペルゲンガーを培養したりするのではなく、「多様なアイデアを生むためには多様なメンバーをキャスティングする」。この意識を持つことが大切なのですね。
②若手が伸びないアサインの特徴
リーダーが間違えやすいキャスティングの2つ目は、若手への業務の割り当て、すなわちアサインです。
多くの会社は、若手に「視野を広げよう」と伝えますが、実際は「逆のキャスティング」になっていることがあります。
業務効率を上げるために組織を縦割りにし、仕事を細分化しているのに、そこへ若手をアサインして、ずっと同じ仕事をさせる。なのに「視野を広げよう」と言っている。これでは若手のモチベは上がりません。
TBSの日曜朝の番組『サンデージャポン』は、いち早く新人タレントや無名の文化人に目をつけ、ブレイクさせてきたので、業界内で「新人の登竜門」として注目されています。
僕も約2年間、演者としてお世話になりましたが、この番組のキャスティング術は実にシンプルです。
それは、新人モデルであろうが、新人声優であろうが、「とにかく面白そうな人を呼んで、畑違いでもいいから政治の話をさせてみる」という型です。
このキャスティング術から学んだのは、モデルや声優といった「専任」があっても、畑違いのことを「兼任」させることで、新たな魅力を引き出し、ブレイクスルーさせることが可能だという知見です。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
若手には小さな分業を与えがちですが、そこに「専任」させず、月に1~2回は別ジャンルの仕事を「兼任」させてみる。
こうした組織として「視野を広げさせるキャスティング」が、若手が伸びる、若手が辞めない企業風土につながっていくと考えています。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

