「なぜ自分ばかり仕事を抱えているのか」「後輩がやるべき仕事まで自分がフォローしている」。そんな状況にモヤモヤした経験はないだろうか。仕事をしない、指示を待つばかりの部下や後輩にどう向き合えばいいのか。5,000社以上に導入されてきた組織マネジメント理論「識学」を提唱する安藤広大氏が、責任と権限の観点から解決策を解説する。【その他の記事はコチラ】

仕事をしない後輩を変えるには、責任と権限を明確にする
【相談】仕事をしない後輩。自分にばかり負担が集中しています(30代・マーケティング職)
年下の後輩がいますが、アシスタントへの指⽰や引き継ぎ、雑務など、⾃分が担当すべき仕事を「できません」と断ったり、頼まれるまで気づかないふりをしたりします。その結果、頼みやすい私に仕事が回ってきます。上司にも「業務が滞ってしまうので後輩本⼈に伝えてほしい」と相談しましたが、状況は変わりません。私から「これはあなたの担当です」と線引きをしたほうがいいのでしょうか。それとも、上司が動かない以上、受け⼊れるしかないのでしょうか。
自分自身は仕事に一生懸命取り組んでいると思っても、ふと気づけばまわりの同僚や後輩は仕事が遅かったり、自分ほどの仕事に対する高い意識を持っていない。それこそ、できるだけ面倒な仕事を避けようとしているのでは、と感じてしまうこともある。
自分だけが頑張っていて割りが合わない、そんな気持ちに捕らわれることもあるだろう。他人が役割を果たしていない状況で、自分はどう行動すべきなのだろうか。
「この状況を俯瞰的に捉えれば、後輩が動かなくても許されている環境が作られていることが問題です。誰かが仕事に手を抜いても許される状態になっていたら、ちゃんと仕事をしている人がバカらしくなるのは当然です」
まずマネジメントがこの環境を許していることが最大の原因なのだが、いきなりマネジメントに組織改革を進言するのは、いちプレーヤーとしてはなかなか難しい。
そんななか「状況を上司に伝える」ことは正しいステップだと安藤氏は評価する。
「まず、上司に状況を説明し後輩に言ってほしいと報告したのは、正しいアプローチです。本来の作業ではないものが誰かに集中し、その人の通常業務を圧迫してしまう。要はプレーヤーの業務範囲を明確にしていないのは、マネジメントの責任ですから」
そこで直ちに改善すべきなのは上司だが、残念ながら上司は状況の改善に動いてくれない。そこで必要になるのが、責任の委譲という考え方だ。
「本来プレーヤーを正常に動かせていないのは上司の責任。でも今回のように上司がその責任を果たしていない場合は、自分にその責任を委譲してもらうんです。
上司に『この後輩に命令する権限をもらっていいですか』とお願いし、後輩には上司から『先輩の指示に必ず従うように』と言ってもらいます。そのうえで、後輩に雑務も含めやるべき業務内容や、期限などを伝え、後輩自身の責任を明確に認識させる。『これはあなたの担当です』とただ線引きするのではなく、自分にその権限があることを後輩に理解させるのです」
識学において“責任”と“権限”は、組織運営の中核をなしている。この2つがあいまいになると、組織内に「言い訳」「不満」「責任の押し付け合い」が生まれ、成果が出なくなるからだ。
「“責任”とは『担当する役割に対して結果を出す義務』です。後輩自身に、自分が担うべき責任を認識させる。そして相談者自身は部門内の業務をスムーズに遂行する責任を果たす。そのために後輩への指示という“権限”を持たせてもらうんです」
上司のかわりに指示できるようになることで、後輩はこれまでと異なり指示を無視できなくなるわけだ。
上司が動かないからといって、現状を受け入れる必要はない。ただし、相手を変えようとするだけでは組織は変わらない。必要なのは、誰が何に責任を持ち、そのためにどんな権限を持つのかを明確にすること。識学の考え方を使えば、そこに改善できる道は必ず見つけられるはずだ。
安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

