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2026.09.29

「周りは最低限しか働かない。自分だけ頑張るのは損?」“静かな退職”が広がる職場で、頑張ることに意味はあるのか【識学23】

「周りは最低限しか働かない。自分だけ頑張るのは損なのでは?」。そんなモヤモヤを抱える会社員は少なくない。近年、話題になっている“静かな退職”は、実際に会社を辞めるわけではなく、仕事への情熱や過度な期待を抑え、必要最低限の業務を淡々とこなす働き方を指す。では、周囲がそうしている職場で、自分だけ頑張ることに意味はあるのか。5,000社以上が導入する組織マネジメント理論「識学」を提唱する安藤広大氏に聞いた。【その他の記事はコチラ】

「周りは最低限しか働かない。自分だけ頑張るのは損?」“静かな退職”が広がる職場で、頑張ることに意味はあるのか【識学23】

「静かな退職」に自分も合わせるべき? 周りが働かない職場での悩み

【相談】周りは最低限しか働かない。自分だけ頑張るのは損でしょうか?(30代・メーカー勤務)

最近、職場で「頼まれた仕事以外はやらない」「定時になったらすぐ帰る」という人が増えました。SNSでも“静かな退職”という言葉を見かけます。以前は「もっと頑張ろう」という空気がありましたが、今は必要以上に働くほうが損だという雰囲気さえ感じます。

私も「同じ給料なら、自分だけ頑張る必要はないのでは」と思ってしまうことがあります。周りが最低限しか働かないのなら、自分も合わせたほうが合理的なのでしょうか。

近年、話題になっている「静かな退職(クワイエット・クイッティング)」。マイナビの「正社員の静かな退職に関する調査2026年(2025年実績)」によると、20~50代の正社員の46.7%が「静かな退職」をしていると回答した。

「静かな退職」とは、やりがいやキャリアアップを求めてがむしゃらに働くのではなく、​必要最低限​の業務だけを​こなす働き方を指す。実際に会社を辞めるわけではない。決められた仕事をこなすものの、それ以上の業務は積極的に引き受けたりしないのが特徴だ。

では、周囲がそうした働き方をするなかで、自分だけ労力を払う意味はあるのだろうか。

「静かな退職」は、未来への“借金”を増やしている?

「『頑張る人ほど損なのか?』という方にもアドバイスしましたが、これも長い時間軸で考えるべきだと思います。今は大変だけど、経験というものを会社に貯金していると思ったほうがいい。

確かに、そこそこの仕事で成果以上の給料をもらえれば、得したように思うかもしれません」

ただ、仕事を取り巻く環境は、自分の意思とは関係なく変わっていく。会社の方針が変わることもあれば、AIの普及によって、これまで必要とされていた仕事や能力が変わることもある。今は「このままで困らない」と思っていても、同じ仕事、同じ環境がずっと続くとは限らない。

だからこそ、今できることを増やし、経験や能力を積み重ねておくことには意味がある。成長することは、必ずしも出世や給料を上げるためだけではない。環境が変わったときにも、自分で選択できる仕事や生き方を残しておくためでもある。

「仕事は本来、成長していかなければいけないはずです。いわゆる“静かな退職”をしている人は、成長を自ら拒絶しているようなもの。未来に対して借金を重ねているのと同じで、時間とともに借金が増えていくだけです。

でも、もっと成長しようと給料以上の成果を出し続ける人は、未来には莫大な貯金と、その利回りで大きく稼げる。だから、まわりがそうだからと、気にする必要はまったくありません。逆に、そういう人たちは『借金が増えてかわいそうだな』というくらいの考え方にしたほうがいいと思います」

未来の姿を想像すれば、成果以上の給料を得ることだけが「得」なのではない。それに甘んじてしまえば、会社で得られる経験や成長の機会を、自ら止めてしまうことにもなりかねない。

「確かに、かつて日本の経済成長が著しかった時代は、赤字社員を抱えていても会社は回っていたでしょう。でも今はそんな時代ではなく、ただでさえAIの普及などで仕事がなくなっていくなかで、より社員は選別される時代になっていくと思います」

周りに合わせるより、自分の成長のために働く

ただ、本来その状態が組織として常態化しているのであれば、マネジメントの責任でもあると安藤氏は指摘する。

「ただ、まずは相談者の方が、現状プレーヤーとしてどうするか。まわりに流されることなく、自分の成長のための貯金だという考えを持ってほしいと思います。

私がこれまで見てきた会社でも、『この人たちは、こんな仕事量でこんなに給料がもらえるんだ』という組織はよくあります。ただ、能力は上がらないのに社員の年齢が上がっていくだけなので、結局、給料は上げられない。そういう人たちが集まる会社は、確実に弱体化していくだけです」

確かに、「なぜ自分だけが……」という思いもあるだろう。ただ、自分がこれから経験を重ね、より良い仕事と、それをこなす能力を身につけたいのなら、他者と同じでいる必要はない。

周囲に合わせて「頑張らない」という選択をするのではなく、今の仕事で何を経験し、何を身につけられるのか。目の前の仕事を「給料に見合っているか」だけで判断せず、これからの自分に何を残せるのかという時間軸で考えてみる。

今の努力は、すぐに結果として返ってこなくても、未来の自分が仕事や生き方を選ぶための資産になっていくはずだ。

安藤広大/Kodai Ando
識学 代表取締役社長。1979年大阪府生まれ。早稲田大学卒業。大学時代はラグビー部に所属し、勝敗と向き合う厳しい環境で4年間を過ごす。NTTドコモ入社後、営業としてキャリアをスタート。上場企業への転職を経てマネジメントに携わるなかで、「人のやる気」や「人間力」に依存する組織運営に限界を感じ、識学と出合う。誤解や錯覚を排した明確なルールと仕組みによるマネジメント理論に強く共感し、事業部の立て直しでその有効性を実証。2015年に株式会社識学を設立し、創業4年足らず(3年11ヵ月)東証グロースに上場。現在は延べ5,000社以上の組織改革を支援している。組織マネジメントに関する著書は『リーダーの仮面』などベストセラー多数。「がんばっている人が、正しく報われる組織を増やしたい」という思いが、識学の根底にある。

TEXT=牛丸由紀子

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