放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「芸歴18年のジェラードンのキングオブコント優勝に感激しました。いっぽう、私と同学年にあたる某トリオ芸人の万引きのニュースは悲しかったです。やはり、最近見かけなくなった40~50代の芸人さんの金銭事情は苦しいのでしょうか?」という質問をいただきました。
来年40歳になるジェラードンの優勝はお見事でしたね。僕も2人のミドル世代芸人(チュートリアル徳井、スピードワゴン小沢)と観戦していましたが感慨深かったです。
いっぽう、来年50歳になるトリオ芸人のニュースは残念でした。そしてなぜか、「これから増えたらイヤだな」という胸騒ぎもしたのです。
なぜ、そんな虫の知らせを感じたのか? 今週はちょっと答えにくいテーマでもあるのですが、相談者さんご所望の「ミドル世代芸人の金銭事情」について、僕なりに問いを深め、今後の展望を予測していきたいと思います。
収入が減ったミドル世代芸人、3つの金策タイプ
今回の万引きのニュースは衝撃的でしたが、若くして売れた芸人さんが20代後半で減速し、30~40代で金銭的な悩みを抱えるというケースは、これまでにもたくさんありました。
そうなったとき、ミドル世代芸人の「金策」は大きく3つのタイプに分けることができます。
まず最も多いのは、それまでの貯金を切り詰めたり、節約をしたり、バイトをしたりして芸人稼業を継続するタイプ。
よくあるのは、お客さんの目にふれない飲食店の厨房などでバイトをするケースですが、最近は、はんにゃ川島くんのように、寿司職人の修業をして副業を始めるなど、令和のミドル世代芸人は新たな活路や芸人像を見いだしています。
2つ目は、武士は食わねど高楊枝のように、仕事が減っても別の仕事はせず、「芸人であろう・生きよう」とする人たちです。
ちなみに僕の同期や教え子には、病気や諸事情で1~2年ほど活動できなかった芸人がいましたが、彼らは活動休止中、一度も金の無心をしなかったし、こちらが多めに食事代を払おうとしても、必ず拒んで割り勘にする態度がありました。
そして3つ目は、周囲に援助を求めてしまう人たちです。僕の先輩に人気ネタ番組で優勝するほどの実力派だけど、徐々にメディアの露出が減っていった漫才師がいました。
先輩としてのメンツもあるので、ストレートに「金を貸してくれ」とは言わない。
けれど、「お久しぶりです。子供が生まれました!」といった報告で、遠回しに「お祝い」を求めてくる。なので倍がけで寂しくなる。こういったタイプも存在するのです。
このように、金策の手法は人それぞれでも、「一線は超えない」が芸人さんたちの暗黙知でした。なぜなら彼らの本分は「笑い」であり、犯罪は「笑えないから」です。
増えるミドル世代芸人と急がれる対策
くだんのトリオ芸人のニュースを知ったとき、「増えたらイヤだな」と感じたことは既に述べました。
その理由は、「速まっている芸人循環」にあります。
ご存じのように、お笑い界には「8年周期」と呼ばれる法則があり、時代の寵児が約8年ごとに入れ替わってきました。
しかし、最近は「芸による自然淘汰」というよりも、芸以外の諸問題によって退場となる「SNSによる淘汰」が増えており、世代が入れ替わるスピードが速まっています。
また長らく、売れている芸人の象徴は「地上波で冠番組を持つこと」でしたが、YouTubeやストリーミング配信の力が増していくと、おのずと制作費は下がっていきます。
制作費が下がると、わりと安価で作れる「トーク番組」や「ショート系のネタ番組」が生まれやすくなります。
それらの番組が増えると、チャンスをつかむ若手芸人も増えるので、ますます循環が速まる。
すると、「ブレイク期間が短く、早めに金欠になる芸人が増加する」とも考えられるのです。
また、17年間、若手を育成してきた僕が気になっているのは、年々、若手芸人が「名もなきSNS上の小さなトラブル」に巻き込まれる事例が増えていることです。
今年は、プロ野球選手による「ゾンビたばこ騒動」もありましたが、これからの人気商売の人気者たちは、国内だけでなく国外からもターゲティングされる時代です。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
SNSに端を発する諸問題は、前述した「退場」につながる危険も高まるので、これまで以上の細やかなコーチングが必要になると感じています。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

