2026年北中米ワールドカップに出場した日本代表FW小川航基が、2026年夏の移籍市場でオランダ1部NECナイメヘンからJリーグのFC町田ゼルビアへ完全移籍した。29歳、選手として脂の乗った時期での国内復帰には賛否もある。だが、その決断の根底にあるのは、4年後の2030年ワールドカップ出場への強い思いだ。最大の武器であるボックス内での勝負強さを発揮し、チームを優勝に導く活躍を誓った。

「W杯に一番近い」小川航基、Jリーグ復帰を決めた理由
欧州5大リーグへの思いが消えたわけではない。それでも小川は、3年ぶりにJリーグへ復帰する決断を下した。
なぜか? 理由は明確だ。2030年ワールドカップ出場の可能性が最も高いと考えたからだ。
8月27日に東京都町田市内で開かれた入団会見。SNS上では「日本代表入りやW杯はもう諦めたのか」という声も挙がるなか、小川は真っ向から異を唱えた。
「ワールドカップは人生最大の大会、瞬間だったので、もう一度出たいと強く思った。またワールドカップに出るため、ワールドカップで活躍するために日本に帰ってきた。どういう状況にいれば自分が輝けるかは自分自身が一番分かっている。選択肢のなかでワールドカップに一番近いところを選んだ」
2023年夏に横浜FCからナイメヘンに移籍。欧州挑戦1年目からリーグ31試合11得点を記録するなど結果を出し、オランダでは3シーズンで81試合26得点をマークした。
2026年夏のワールドカップでは切り札的な存在として4試合中3試合に途中出場した。1次リーグ初戦のオランダ戦では終了間際にCKに反応してヘディングシュート。MF鎌田大地の頭をかすめたボールがネットを揺らした。
自身の得点にはならなかったが、劇的な同点弾となる「鎌田の1ミリ」を演出。ジョーカーの役割を果たしたが、今夏の移籍市場で希望する欧州クラブからのオファーは届かなかった。
「例えば5大リーグの下位チームに行けたとして、僕が下位のチームで点を取れるタイプのストライカーか、とかいろいろと考えた。カウンターアタックだけのサッカーで僕みたいなタイプの選手が活躍できるかと言われたら、そうは感じない」
「自分が一番輝ける場所」小川航基の武器がFC町田ゼルビアで生きる理由
ゴール前での勝負強さが最大の武器。ボックス内の一瞬の駆け引きでマークをかいくぐり、ゴールを奪うスタイルを磨いてきた。欧州5大リーグの下位クラブに多いカウンター中心のサッカーでは、ペナルティーエリア内に侵入できる機会は減り、持ち味が出せない公算が大きい。
「自分が生きるポジション、生きる場所でサッカーをしたほうが点は取れる。どのクラブでプレーしても点を取らないと代表には呼ばれないしワールドカップにも行けない。僕が一番輝けて点が取れてワールドカップに近いチームがどこかと考えた時に町田だった」
FC町田ゼルビアはJ1昇格1年目の2024年から2年連続で上位争いを演じ、昨季は天皇杯優勝も果たした。就任4年目の黒田剛監督は、ロングスローや縦に速い攻撃を駆使してゴール前に素早くボールを送るサッカーを構築。小川の武器が生きるスタイルと合致する。
DF昌子源やFW相馬勇紀らワールドカップ出場経験のある選手も集うハイレベルな環境も、決断を後押しした。
「大きな可能性を持ったクラブ。Jリーグを変える、そんな可能性を秘めていると思う。活躍しないといけないプレッシャーはすごいが、優勝に貢献できるように頑張りたい」
入団会見2日後の8月29日にはアウェー水戸戦に後半37分から途中出場。約1ヵ月前の練習試合で顔面2ヵ所を骨折しており、フェイスガードを着けてプレーした。得点はならず、試合も1-1で引き分けたが、上々の動きを披露した。
「デビューできたことはポジティブ。思ったより動けた。これからコンディションを上げていきたい」と充実の表情を浮かべた。
Jリーグ復帰は「後退」ではない。小川航基が切り拓く新たなキャリア
欧州で実績のあるストライカーが、脂の乗った状態でJリーグに戻ってくる意味は大きい。才能ある選手の欧州への流出が続く日本サッカー界にとって、転機になる可能性もある。
日本代表の森保一監督も「現役バリバリの日本代表で欧州でも活躍できる選手がJリーグを選んで来るのは魅力がある証でもある。選手が世界の価値観をJリーグで身につけられるようになればいい」と、国内サッカーの発展に期待する。
小川が結果を出せば、日本代表でプレーし続けることはもちろん、再び欧州でプレーする可能性も十分にある。
「Jリーグに帰ってきたから(未来が)閉ざされるわけでは全くない。自分次第だと思っている。Jリーグの舞台でどこまでできるのか自分自身もすごく楽しみ」
日本屈指の得点力を誇るストライカーの挑戦は、単なる「欧州からJリーグへの復帰」ではない。自らの武器が最も生きる場所を選び、そこから再び世界を目指す。新たなロールモデルをつくる戦いでもある。
小川航基/Koki Ogawa
1997年8月8日、神奈川県横浜市生まれ。2016年に桐光学園高からジュビロ磐田入り。2019年はJ2水戸ホーリーホックに期限付き移籍。2022年にJ2横浜FCへ完全移籍し、MVPと得点王に輝く活躍でJ1昇格に貢献した。2023年7月にオランダ1部NECナイメヘンに移籍。日本代表は各年代で選出され、A代表はデビュー戦となった2019年E-1選手権の香港戦で3得点。2026年夏のワールドカップ北中米大会にも出場した。1m86cm、80kg。右利き。

