2026年シーズン、ホームランを量産し、6月24日のオリックス戦では打球速度188.5キロを記録。この数字は、7月23日時点でメジャーを含めた世界最速として大きな話題となったソフトバンク・正木智也。長距離砲として一気にブレイクした印象があるが、その豪快な打撃は高校時代から高く評価されていた。高校、大学時代のプレーを追い続けてきたスカウト視点の記録をもとに、その才能の原点を振り返る。

ホームラン量産で覚醒。世界最速打球速度188.5キロが話題に
パ・リーグ三連覇に向けて順調に勝ち星を積み重ねているソフトバンク。そんなチームにまた新たなスター候補が現れた。それが入団5年目の正木智也だ。
2025年は開幕スタメンに抜擢されながら怪我で長期離脱となり、わずか17試合の出場に終わったが、2026年は5月15日に一軍に昇格すると、いきなり13試合連続安打をマーク。その後も好調を維持し、ここまでチーム3位、リーグでも6位タイとなる14本塁打を放つなど強打のトップバッターとしてチームを牽引しているのだ(7月23日終了時点)。
ちなみに6月24日のオリックス戦で放ったホームランの打球速度は188.5キロを計測し、これは今シーズンこの時点でメジャーも含めて世界最速の数字であり、そのことも大きな話題となった。
高校時代から別格だった長打力。プロでも変わらなかった”スケールの大きさ”
そんな正木は東京都出身。中学時代は強豪である世田谷リトルシニアでプレーし、慶応高校でも2年春から4番を任されている。
初めてプレーを見たのは2016年7月27日に行われた夏の神奈川大会準決勝、対東海大相模戦だった。
正木は1回の第1打席にスリーランを放つと、5回にもこの日2本塁打目となるツーランで貴重な追加点を叩き出し、チームの勝利に大きく貢献。どちらのホームランも横浜スタジアムのレフトスタンド中段まで届くもので、打った瞬間に分かる見事な一発だった。
当時のノートにも以下のようなメモが残されている。
「長打力はとても2年生とは思えない。力任せではなく楽に振って飛距離が出るのが長所。少しヘッドが外回るするようなスイングの軌道に見えるが、内角のボールも上手く肘をたたんで対応することができる。
トップの姿勢の時のバットの位置が少し浅く、手首を使ってタイミングをとるのは少し気になるが、下半身の強さもあり、ステップする動きは慎重。打つ以外のプレーは目立たないが、積極性もあり、打者としてのスケールの大きさは十分」
結局、高校時代に甲子園出場には縁がなかったが、3年夏も5試合で2本のホームランを放つなど活躍を見せ、関東でも屈指の強打者として評判の存在となった。
慶応大進学後も2年春からレギュラーに定着。2年秋、3年秋にはベストナインを獲得するなど東京六大学を代表する打者へと成長を遂げる。
そして特に素晴らしかったのが4年春のシーズンだ。リーグ戦ではキャリアハイとなる4本のホームランを放つと、続く全日本大学野球選手権でも4試合で2本塁打、9打点の大活躍でチームの日本一に大きく貢献し、自身もMVPに輝いたのだ。
特に印象に残っているのが2021年4月11日に行われた法政大との試合だ。
相手の先発投手はこの年のドラフト1位でプロ入りする山下輝(元・ヤクルト)で、2回の第1打席は内角の147キロのストレートにバットを折られてサードゴロに倒れる。しかし4回に迎えた第2打席は145キロのストレートを完璧にとらえてレフト中段へ運ぶソロホームランにして見せたのだ。
この試合を記録したノートにも以下のようなメモが残っている。
「タイミングを取る時に少しグリップが下がる動きは相変わらずだが、全体的にゆったりとタイミングをとれるようになり、長くボールを見ることができている。内角の速いボールに詰まらされた後にしっかり修正し、ヒットではなくホームランにできるところが並のバッターではない。ヘッドの走りも年々鋭くなり、速いボールにも力負けしない。足と肩はいつ見ても目立たないが、全力疾走を怠らない姿勢も好感が持てる」
他の試合を記録したノートを見ても、たとえヒットが出ない試合でも常に長打が出そうな雰囲気は感じられる記録が残っている。高校から大学になってバットが木製になり、相手のレベルが上がることで打撃が小さくなる選手も多いが、正木についてはスケールの大きさを失わなかったことが貴重である。このことに関してはプロ入り後も同様で、2025年も左肩を手術した影響で長期離脱となったが、復帰した後はその影響を感じさせない豪快なスイングを見せていた。
チームは好調に首位を走っているが、2025年まで主砲だった山川穂高が不振で二軍調整となっており、世代交代は大きな課題となっているだけに正木の存在は貴重である。後半戦も豪快なホームランでチームを勝利に導く活躍を見せてくれることを期待したい。
■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

