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2025.07.31

日本ハム・達孝太が”大谷超え”。プロ4年目でブレイクするまで

2025年シーズン6勝&防御率1点台で堂々のエース候補に。日本ハム・達孝太がスターとなる前夜に迫った。

天理高校時代の達孝太。
天理高校時代の達孝太。

先発ローテ定着で無傷の6連勝

パ・リーグで開幕から順調に首位を走っている日本ハム。近年は若手の台頭が著しいが、2025年最もブレイクした投手といえば達孝太になるだろう。

2024年10月にプロ初勝利をマークすると、2025年は5月からローテーションに定着。ここまで8試合に登板して6勝0敗・防御率1.12という圧倒的な成績を残しているのだ(2025年7月29日現在)。

全試合先発でのデビューから7連勝は、球団OB大谷翔平(ドジャース)らの5連勝を抜き、史上初の快挙。先日行われたオールスターゲームにも初出場を果たした。

天理高校時代から注目。「未完成の素材型」だった大型右腕

そんな達は大阪府堺市の出身。高校は奈良の強豪である天理に進学し、その名前が知れ渡るようになったのは1年秋のことだった。

近畿大会の大阪桐蔭戦で先発に抜擢されると、8回途中まで投げて4失点の好投でチームを勝利に導いている。当時すでに身長は190cm超という体格を持ち、そのスケールの大きさは話題となっていた。

初めて実際に投球を見ることができたのは2年秋の近畿大会、対乙訓高校戦だった。

立ち上がりこそ少し不安定だったものの、走者を背負っても落ち着いたピッチングを披露。最終的には被安打5、13奪三振で1失点完投勝利をおさめて見せた。しかし結果だけを見れば抜群だが、まだまだ物足りなさが残ったことも確かである。

当時のノートには以下のようなメモが残っている。

「長身でも体の使い方の良さが目立つ。姿勢が良く、左足を上げた時に真っすぐ背筋が伸び、マウンド上でより大きく見える。長いリーチを上手くたたんで体の近くで腕が振れており、制球も安定している。

ただ、ゆったりとした動きは悪くないが、体重移動のスピードはまだまだで、ストレートの勢いはもうひとつ。どちらかというと技巧的な面が目立つ。立ち上がりは特に甘く入ったボールをとらえられる。

(中略)

フォームに悪いクセがないだけに、体が大きくなれば楽しみ。高校生の間に完成しないタイプか」

ちなみにこの試合でのストレートの最速は142キロ。アベレージは130キロ台中盤から後半だった。上背はあるものの、まだ体の強さはないというのが達に対して感じた最初の印象である。

しかしそれから約4ヵ月後に行われた3年春の選抜高校野球で達は驚きの成長を見せることになる。

初戦の宮崎商戦で1失点完投勝利をあげると、続く健大高崎戦でも完封。さらに仙台育英を相手にも8回を投げて2失点の好投でチームを準決勝進出に導いたのだ。

この大会でのストレートはコンスタントに140キロ台中盤をマークし、健大高崎戦では最速148キロも記録している。初戦の宮崎商戦を取材したノートにはこう書かれている。

「まだ体つきは細いが、フォームの躍動感と腕の振りの力強さは秋と比べて見違えるほどアップした。

体が左右に振られることなく、捕手に対して直線的にステップし、体重移動のスピードも申し分ない。少しコンパクトなテイクバックで、前で大きく腕が振れており、指のかかりも素晴らしい。

(中略)

ゆるい変化球の時に少し腕の振りがゆるむものの、ストレートの勢いがあるので変化球は見せ球程度で抑えることができる。ストライクゾーンで勝負でき、高めも低めもボールの勢いが落ちない。体ができてくれば150キロ台中盤も楽に出そうな雰囲気」

この大会で達の評価は一気に上がったことは間違いないだろう。ただ選抜以降は調子を落とし、夏は右肘を痛めた影響もあって奈良大会の準決勝で敗れている。

この年は高校生投手が豊作と言われており、小園健太(市和歌山→DeNA1位)、風間球打(明桜→ソフトバンク1位)、森木大智(高知→阪神1位)と比べると少し評価は落ちるというのがドラフト前の評判だった。

それでも、ドラフト当日、日本ハムが日本ハムが1位指名で選んだのは達だった。それには達の誕生日が大きく影響していたという。

達は2004年3月27日生まれの“早生まれ”。実際の成長段階では1学年下の選手と近い。その点で、ポテンシャルの高さを感じたというのだ。

確かに高校2年生だと考えれば、達が3年春の選抜で見せた投球は規格外。プロ入り後も二軍で少し時間はかかったが、4年目でここまで開花したというのは順調といえるだろう。

WBC候補入り、後半戦も飛躍は続くか

プロ入りからの数年は、二軍でじっくりと鍛えられた。球速・球質ともに向上し、今年ついに一軍の先発ローテーションに定着。数字だけでなく、試合ごとの安定感も際立っている。

オールスターゲームを視察した侍ジャパン・井端弘和監督も2026年のWBCのメンバーとして候補に入っていることを明言している。ここから達どこまで高みに上り詰めていくのか。後半戦の投球にもぜひ注目してもらいたい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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