PERSON

2025.04.10

日本ハム・金村尚真がプロ3年目で開幕投手に大抜擢された理由

開幕戦で見事な完封勝利をあげた、北海道日本ハムファイターズ・金村尚真がスターとなる前夜に迫った。

富士大時代の金村尚真。

開幕戦でプロ初完封勝利

いよいよ開幕した2025年のプロ野球。パ・リーグでは日本ハムの前評判が高いが、そのなかでも新エース候補として期待が高いのが3年目の金村尚真だ。

プロ1年目は怪我もあって4試合の登板に終わったものの、2024年は先発で17試合、リリーフで12試合に登板して7勝、6ホールドをマーク。そして2025年は開幕投手を任せられると、いきな完封勝利をあげてその期待に応えて見せたのだ。

ちなみに日本ハムの開幕投手が完封勝利を記録したのは2008年のダルビッシュ有(現・パドレス)以来、17年ぶりの快挙である。

大学でエースに成長

そんな金村は沖縄県の出身で中学3年時には全日本少年軟式野球大会で優勝。U15侍ジャパンにも選出されており、当時から評判の投手だったという。

その後、岡山学芸館高校に進学。早くから登板こそしていたものの、2年秋の中国大会進出が最高成績で甲子園出場はなく、そこまで目立った実績を残すことはできなかった。

ようやくその才能が大きく花開いたのは富士大学に進学してからだ。

層の厚いチームのなかで1年春からリーグ戦で登板。2年からは先発の柱へと成長を遂げたのだ。

初めてそのピッチングを見たのは2年秋のリーグ戦、2020年8月22日に行われた対青森中央学院大学戦だった。

この年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で春季リーグ戦が中止となり、そういう意味でも秋の開幕戦であるこの試合は貴重な機会だったが、金村はそのなかでも見事なピッチングを披露する。

8回に味方のエラーから3点は失ったものの、7回0/3を投げて被安打6、自責点0の好投でチームを勝利に導いた。

当時のピッチングについて以下のようなメモが残っている。

「テイクバックで早めに肘をたたむスタイルのフォームで上半身の力が強く、少しステップの幅も狭く見えるが背筋など体幹の強さは十分で鋭く腕が振れ、ストレートはコンスタントに140キロ台をマーク(この日の最速は146キロ)。

指のかかりが素晴らしく、手元でのボールの強さがあり、スピード以上に威力を感じる。

(中略)

130キロ台のスライダー、カットボールは鋭く横に変化し、空振りを奪えるボール。130キロ台中盤のフォ

8回にも145キロをマークし、スタミナも十分。先発として試合を作る能力が高い」

この試合を皮切りに金村の快進撃が始まる。

2年秋は4勝1敗、3年春は7勝0敗という見事な成績を残して2シーズン連続でMVP、最優秀投手、ベストナインのタイトルを獲得。3年春のノースアジア大戦ではリーグ史上2人目となる完全試合も達成し、全国的にもその名前が知られるようになった。

12球団が注目する成績を残しながらもフォームを安定させる

大学時代、最後にピッチングを現地で見たのは4年秋のリーグ戦、2022年8月20日に行われた青森中央学院大との試合だ。

スタンドには多くのスカウト陣がドラフト会議前の最終チェックに訪れていたが、その前で金村は被安打2、12奪三振で無四球完封という圧巻の投球を見せた。

当時のノートのメモには金村のさらなる成長ぶりを感じさせる記載が残っている。

「相手打者を見ながら上手く力をコントロールして投げているように見える。ストレートはアベレージで140キロ台中盤で、どんな場面でもスピードが落ちない。

両コーナーいっぱいに投げ分けるコントロールも見事。制球力は大学生ではナンバーワンか。緩急をつけるカーブも上手く操り、ストレートを速く見せるのも上手い。

スライダー、カットボールの投げ分けも見事で、変化球同士で緩急をつけられるのも素晴らしい。フォークは少し引っかかるボールも目立ったが、チェンジアップも使えるようになった。

(中略)

フォームは見る度に下半身の粘り強さがアップしており、ステップした左足の着地も安定した。圧倒的なすごみはないが、プロでも先発として勝負できるタイプ」

ドラフト会議では1位指名こそ逃したものの、2位の最初に名前が呼ばれており、そのことからも金村の評価が高かったことがうかがえる。

また大学時代は140キロ台中盤が多かったストレートが現在では140キロ台後半をマークすることも珍しくなくなっており、出力が上がったことも活躍につながっていると言えそうだ。

開幕投手を早々に公表されたことからもチームとしての期待の高さがうかがえる。今後も開幕戦で見せたような投球を続けることができれば、投手タイトル争いに絡んでくる可能性もありそうだ。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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