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2026.01.15

日ハム移籍で覚醒・郡司裕也。才能を開花させた理由

FA移籍、現役ドラフト、トレードと選手の流動化が進むプロ野球界。なかでも移籍を機に才能を開花させた好例が、日本ハムの郡司裕也だ。中日からのトレード移籍後、打撃を武器に一軍に定着。アマチュア時代から見続けてきた視点で、その飛躍の背景をひもとく。

日本ハム移籍で覚醒した男・郡司裕也。トレードが才能を開花させた理由とは

トレードがキャリアを変えた。日本ハムで花開いた郡司裕也

このオフもFAによる移籍、現役ドラフト、トレードなどさまざまな動きがあったプロ野球。過去を振り返ってみても、移籍をきっかけに大きく才能が開花するケースは少なくない。そのなかで、近年の成功例として真っ先に挙げたいのが、日本ハムの郡司裕也だ。

2023年のシーズン途中に交換トレードで中日から移籍すると、打力を買われて一軍に定着。翌2024年には規定打席に到達して打率.256、12本塁打、49打点を記録。

2025年はわずかに規定打席には届かなかったものの、打率.297、10本塁打、42打点をマークし、オフの契約更改では推定年俸1億1000万円まで評価を高めている。

中日時代は4シーズンで一軍でわずか24安打。最高年俸も1080万円だったことを考えると、この移籍がいかに大きな転機となったかがよくわかるだろう。

仙台育英から慶應義塾大へ。アマチュア時代に見せていた片鱗

そんな郡司は千葉県の出身で、中学時代は千葉市リトルシニアで3年春に全国優勝を経験。高校は東北を代表する強豪の仙台育英に進学している。

初めてプレーを見たのは2年秋に出場した東北大会の対一関学院戦だった。4番、キャッチャーで出場した郡司は3打数1安打1打点の活躍でチームの大勝に貢献している(10対1で7回コールド勝ち)。

ただ、7回を投げて1失点と好投したエースの佐藤世那(元・オリックス)や、ショートで出場していた平沢大河(現・西武)に比べると、そこまで強い印象は残っていない。

その理由としてはスローイングにそこまで強さを感じなかったことが大きい。一関学院戦でのイニング間のセカンド送球の最速は2.01秒と、ドラフト候補としては少し物足りないものだった。

その後、チームは明治神宮大会で優勝、翌年夏の甲子園でも準優勝と結果を残した。郡司も4番、キャッチャーとして出場し続けていたが、高校からプロ入りするようなタイプには見えず、実際卒業後には慶應義塾大に進んでいる。

大学野球で完成度を高めた打撃と捕手としての成長

大学でもその打力を生かして1年秋から正捕手に定着すると、2年春には打率.345、3本塁打、12打点の活躍でベストナインを受賞。この頃から東京六大学を代表する捕手と言われるようになっていった。

2年春、2017年5月15日に行われた明治大との試合でも森下暢仁(現・広島)を相手に先制のソロホームランを含む2安打の活躍を見せているが、この試合を記録したノートには以下のようなメモが残っている。

「打撃は年々力強くなっている印象。ゆったりとした動きでトップの形を作り、ボールを長く見てとらえることができる。

森下の内角の141キロを完璧にとらえてレフトスタンドへ。その後も、少し差し込まれたように見えてもインパクトが強く、ヒットにできる。

スローイングもイニング間の送球は相変わらずそこまでの速さはないが、実戦で落ち着いた送球で1回にいきなり盗塁阻止。左右にコントロールがぶれない。

配球面も上手くあらゆるボールを左右に散らして相手打線に的を絞らせない。攻守ともに落ち着きが出てきた」

打撃はもちろん、守備についてもレベルアップしていることがよくわかるだろう。

2年秋こそ打率1割台と低迷したものの、3年春には打率.365をマークして2度目のベストナインを受賞。そしてさらに凄みを増したのが、大学最後のシーズンとなった4年秋だ。

勝てば優勝の決まる早稲田大との第1戦で2本のホームランを含む4安打の大活躍でチームの勝利に大きく貢献。最終的にこのシーズンで三冠王に輝くことになったのだ。

「機会」が才能を引き出す——日本ハムでの現在地と期待

アマチュア時代、最後に郡司のプレーを見たのは、4年秋に出場した明治神宮大会の対東海大札幌キャンパス戦だった。この試合でも郡司は3回の第3打席で満塁の走者一掃となる3点タイムリーツーベースを放つなど3打数2安打3打点の活躍でチームの勝利に貢献している。

この試合を記録したメモにもそのプレーぶりを称賛するメモが残っている。

「相手の厳しいマークにもしっかりボールを見極めることができている。トップの姿勢での力感も申し分なく、常に長打が出そうな雰囲気が十分。

特にステップする左足の踏み出し方が慎重で、変化球に対しても全く崩されることなく、甘いボールは一振りで仕留める。

(中略)

守備も異なるタイプの投手の持ち味を上手く引き出しており、スローイングも強さが出てきた」

ちなみにこの明治神宮大会はドラフト会議後に行われたものだったが、この試合での郡司の活躍を見て、他球団のスカウトが悔しそうな顔をしていたのを覚えている。

中日ではチーム事情もあって、なかなか一軍定着を果たすことができなかったものの、機会を与えられれば力を発揮できるというのは冒頭で触れた活躍のとおりである。

日本ハムは実績のある捕手の伏見寅威がこのオフにトレードで阪神に移籍しただけに、キャッチャーもこなせる郡司は2025年以上に貴重な存在となることは間違いない。

移籍4年目はさらに成績を伸ばして、チームを牽引する活躍を見せてくれることに期待したい。

■著者・西尾典文/Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

TEXT=西尾典文

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