放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム連載記事から、2024年のベスト5をまとめてお届け! ※2024年2月〜11月掲載記事を再編。
1.心が弱ったときは「原因」や「自分」と向き合わないこと! では、何に向き合うべきか?
「心が弱ったときは、何をするべきでしょうか?」
そんな質問をいただきました。
仕事で失敗したり、心身の調子が悪かったり、大事な人やモノを失ったりして、「何もやる気が起こらない……」と、心が弱った状態になることは誰にでもありますよね。
そこで今週は、「心が弱ったときに、何をすべきか? 何を考えるべきか?」
このテーマを一緒に押さえつつ、ほぐしていきましょう。
まずは考え方です。
いま心が弱っている皆さんのなかに、「弱っている自分」=「弱い人間」だと思っている方はいませんか?
いえいえ、あなたはいたって正常です。
今日も世界では、たくさんのモノが生産されていますが、もっとも多く生産されるのは、自動車でも半導体でも鶏卵でもなく、「人の失敗」「不安」「悩み」です。
職場の同僚、公園のママ、コンビニの店員、派出所の警察官……みんな快活に見えますが、失敗を悔やんでいたり、身体のどこかが悪かったり、愛犬を亡くしていたり、それでも頬の肉を上げて笑っている。世間とはそんなもの。
2.中間管理職がすぐに手放すべき2つのものは、「完璧」と「関心を引く」
「吉本NO.1講師」なんて謳っていただいているが、大した人間ではない。仕事をクビになったこともあるし、離婚経験者だし、(20年前には)パワハラをしたこともあります。
「成功の鍵」がどんなモノかは知らないが、たくさん持っていた「失敗の鍵」の一つが、たまたま現在地につながっていたので、どんどんミスや失敗はしていいと思っています。
しかし、クビ宣告や離婚は大量のエネルギーを消費するし精神が滅入るので、できれば皆さんには経験してほしくない。
そこで今回は、自戒を込め「40歳までにやめるべきこと」をシェアしていきます。
完璧の「璧」を、3人に1人が「玉」でなく「土」と書き間違えたことがあるそうです。
漢字さえ“あやふや”なのだから、私たちは「完璧」という言葉をもっと“ゆるく捉えていい”と思っています。
30代になると、主要ポストを任される機会が増え、部下や後輩が増えるリーダーになり、「期待に応えよう」「結果を出そう」が発露し“完璧主義者”が増えていきます。
しかし、完璧を追い求める人は、完璧にいかなかったとき、うまくできなかった自分を責めるか、成果を出せない部下を責めるか、チームを組織した会社を責める。
そう“何かを責める人”になっていくんです。
3.「怒っている人」に怒り返さず、向き合う3つの方法を教えます【吉本NSC人気NO.1講師】
あなたの近くに「怒ってる人」はいますか?
部下にキレている上司、なぜかPCに八つ当たりしてる同僚、店員に怒鳴ってるクレーマー、見えない敵にパンチしてる酔っ払い……。そう、今日も地球の半分は「怒り」でできています。
そこで今週は、怒れる人たちへの対処法、心のライフハックを伝えてみたいと思います。
まず、「怒っている人」に対処するには、“怒っている人とは何者か?”を知る必要があります。
先に答えを言います。怒る人は“さみしい人”です。
過去に大声を出して有利になった成功体験があり、自分が怒れば、人は従う、屈服させられると思っています。
そして、よく怒る人は、あなたがミスしたり、プロジェクトが不振だったりという、“現在のできごと”だけが原因で怒っているわけではありません。「あのとき無礼だった」「あのとき遅刻した」など、現在のできごとに“過去のできごと”をトッピングして怒ったりします。
では、なぜトッピングするのでしょう?
それは“まわりの状況”が問題ではなく、虫の居所が悪かったり、家庭の不和だったり、金欠だったりと、“自分の状況”が良くないから。
そう、「よく怒る人」とは「ゆとりがなく、さみしい人」と言えますし、彼らの怒りの原因は“あなただけではない”ということも分かってくるのです。
4.令和ロマンに学ぶ、大人を「ホメとムチ(無知)」で手なずける技術【吉本NSCの人気授業】
苦手な目上の人はいますか?
避けたいけど、同じ職場なので距離を置けない。苦手意識があると、絡めば絡むほどイヤな気持ちが増幅する。そんな方も多いことでしょう。
今週は、M-1グランプリ王者になった令和ロマンを“芸人1日目”から知り、問題児の生徒だったのに、いつの間にか彼らに心奪われ、大ファンになっていた僕が、2人とのエピソードを挿話しつつ“苦手な目上の人の手なずけかた”や“心の持ちかた”を伝えていきたいと思います。
「苦手な先輩とうまく付き合う方法は?」
芸人学校でも、よくこんな質問をされます。
そんなとき、僕は生徒たちに「大人はアメとムチで手なずけようとしてくるから、君らは“ホメ(褒め)とムチ(無知)”で大人を手なずけよう」と言っています。
一体どういうことなのか? 着想のきっかけになった令和ロマンとの思い出とともに紐解いていきましょう。
まず芸人学校の講師は、生徒らの漫才やコントに「ダメ出し(良くない点を指摘すること)」をする立場なので“苦手な目上の人”になります。きっと令和ロマンも僕のことがイヤだったはずです。
ところが6年前、まだデビュー数ヵ月の2人から、突然こんなLINEが届いたのです。
「この度、初めて単独ライブをやらせていただくことになりました。桝本さんにライブタイトルを命名していただくことは可能でしょうか? 命名していただけると、一生の思い出になるのでご検討宜しくお願い致します」
僕が「一生の思い出になる」というワードに胸を撃ち抜かれ、すぐに承諾したことは言うまでもありません。
私たちは、幼いころはたくさんホメてもらえますが、大人になるにつれてホメられる回数は減ります。さらに在宅ワークが進んで対面する機会も減り、江戸時代の“コメ不足”ならぬ“ホメ不足”の世の中です。
特に、立派なポジションに就いている人ほど、たくさんゴマを擦ってきた世代なのに、下からはあまりホメてもらえないし、お願いごともされない。さらにコンプライアンスの壁があり、実は孤独を感じているリーダーも多いのです。
5.もし部下の企画が、あなたが“すべて理解できるもの”になったら要注意です
買い物で貯まるポイント、飛行機のマイルなど、私たちの日々は“獲得していく”ことを目指すように設計され、獲得したSNSフォロワーを競うようにゲーム化されています。
ビジネスシーンでも、数字、評価、ポジションなど“いかに獲得できるか?”がデキる人の指標になっています。
しかし、長年、若手育成を任されてきた僕の知見は、リーダー世代は“獲得していく”だけでなく“手放していく”ことも大切なポジションだということ。
一体どういうことか? 今回はそのあたりをほぐしていきましょう。
劇場の下働き作家だったころ、先輩に誘われ「次世代のテレビを創る若手集団」なるチームに入ったことがあります。
リーダーの作家さんは、台本や企画づくりなど、いろはを丁寧に教えてくださる人でしたが、ちらほら僕にテレビの仕事が入りだすと様子が変わりました。
「君はまだテレビを主戦場にしないほうがいいよ」
「まだ君の企画力では太刀打ちできないと思うよ」
そう、表面上はいつもと変わらないが“無言のブロック”が始まったんです。
これは会社や組織でもあること。
リーダーは、若手や部下に仕事の手ほどきを教え、有望株を育てることを目指します。
が、彼らのスキルやパフォーマンスが向上していくと“自分を超えないように仕向けてしまう”。
そういったリーダーも生まれやすくなるんです。
後輩に追いこされる、上下関係が逆転するというのは、耐えがたく、ストレスを感じるものですが、顔には出さない無言の妨害“サイレントマウント”の存在に気づき、手放していくことがリーダー世代には必要です。