ケイン・コスギは、単なる肉体派アクション俳優ではない。筋金入りのゲーマーとしての顔も持ち、6歳になる一人娘のパパでもある。長年活躍を見せる『SASUKE』では決して垣間見ることのできない、その意外すぎる魅力に迫った。#前編 【特集 魅せるカラダ2025】

ゲームではハイテンションで喋り倒す“素の自分”が出る
ケインには、人気ゲーム配信者としての側面もある。
あるとき、友人から紹介されたPCゲーム『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』にどハマりし、配信をしながら腕を磨こうと2018年にゲーム配信を開始。「あの肉体派のケインがゲーム?」と話題を集め、初配信で視聴者数1万6000人を突破し、世界一を記録する。仕事の予定がない日は、1日8時間以上ゲームを楽しむこともある。
「ゲームを始めたのは4〜5歳の頃。『ATARI』(アメリカ・アタリ社の家庭用ゲーム機)用の『スペースインベーダー』や『パックマン』が好きでした。2歳年下の弟シェインもゲームが大好き。家族でハワイへ行ったのに、2人でホテルの部屋にこもってゲームばかりしてしまい、ビーチに1回も行かなかったこともあります(笑)。18歳で日本に来た当初は日本語ができず、友達もまだいなかったので、仕事とトレーニング以外はずっとゲームをしていました。家でもゲーセンでも『ストリートファイターⅡ』ばかりやっていたのを覚えています」
寡黙で求道者のイメージが強いケインだが、ゲーム配信中はハイテンションで喋り倒し、ジョークも飛ばす。一体どちらが本当の姿なのか。
「間違いなくゲーム配信中の僕です(笑)。トレーニングでストイックに追い込んだ日こそ、ゲームでひと息つきたくなる。配信中の僕はリラックスしていますから、素の自分が出せるんですよね」
アクション俳優にはゲーム好きが多い
ケインがゲームを好むのは、スポーツや武道に通じる面もあるから。
「勝ち負けがあり、腕が上がれば結果が出る。とくに僕は負けず嫌いだから、勝つためにもっともっと努力したくなる。映画撮影などで海外のアクション俳優と同じ現場になることもありますが、ほとんど全員ゲーム好きですね。撮影のオフ日には、それぞれホテルの部屋でずっとゲームをしている(笑)。僕だけではなく、アクション俳優はスポーツや武道をやっているから、通じるものを感じているのだと思います」
格闘技ゲームから、アクションのヒントをもらうこともある。
「格闘技ゲームのキャラクターは、人間ができないような技を出します。それをそっくり真似すると身体を壊しますが、技のコンビネーションなどを取り入れることはある。『バーチャファイター』にブレイクダンスのような動きをするキャラがいたので、『ダンスをしながらアクションをやるのもアリだなぁ』と思い、2年くらいブレイクダンスを習ったこともあります。その後、海外の作品でダンスっぽい技をちょこっと入れてみました」
子供のゲームタイムは週末に1時間
大人はともかく、子供がゲームに没頭しすぎると、学習の機会を失うことになるのではないか。そんな心配をする保護者は多い。6歳になる娘がいるケイン家では、どう対処しているのだろう。
「ゲームは週末に1時間まで、タブレットでの動画視聴は1日15分までというのがルール。最初に娘と決めたルールでずっとやっているので、『もっとやらせて』と言われることもありません。娘は少し前まで『マリオカート』にハマっていましたが、いま夢中なのは『マインクラフト』。映画版(『マインクラフト/ザ・ムービー』)も一緒に観に行きました。映画に彼女が名前を知らないキャラが出てきて、『パパ、早くChatGPTで調べて!』とねだられました(笑)」
自宅で父親が何時間もひたすらゲームしている姿を見ても、娘が「なぜ私だけ週末に1時間だけなの?」と疑問に持つことはないのか。
「それはないですね。なぜなら、僕が仕事でゲームをしていると知っているから。先日も学校で『あなたのパパは何をしている人なの?』と友達に聞かれて、娘は『ずっとゲームをする人!』と答えたらしいです(笑)。僕が出ているテレビや映画は基本的に見せていないので、そう思うのかな。ゲームは立派なスポーツであり、ゲーマーも立派な仕事。海外のeスポーツのトッププレーヤーには年間20億円以上稼ぐ人もいますからね。この先彼女がもっとゲーム好きになり、『本気でプロのゲーマーを目指したい』と言い出したら、もちろん応援するつもりです」
5歳〜12歳は運動能力を培うゴールデンエイジ
柔道、古武道、中国武術、テコンドーと武芸百般のケインが武道を始めたのは、何と1歳半のとき。
「僕は、ハイハイをすっ飛ばし、生後9ヵ月でもう歩いていたらしいんです。そこで空手道場をやっていた父(ショー・コスギ)が、『息子は足腰が強いから、見込みがありそうだ』と思い、空手を習わせたのが最初だったそうです」
父から英才教育を受けたケインだが、娘に同じことをするつもりはない。
「本人が『やりたい!』と言い出したことだけを体験させています。今習っているのは、日本語(娘の学校はインターナショナルスクールで、ケイン家の公用語は英語)、中国語、水泳、そろばん、チェス、ピアノなどなど。『テコンドーとか空手とか、パパとやってみる?』と一応聞いてみたけれど、娘は興味なさそうでしたね」
それでも、ジャグリングや平均台でバランスを取るといった身体を動かす基礎的なトレーニングは、時間を見つけて遊び感覚で二人仲良く取り組む。
「子供の頃にさまざまな動きをしておくことが大事。5歳から12歳まではゴールデンエイジといって、この時期にさまざまな動きを経験しておくと、運動神経が良くなると言われています。僕自身、それくらいの時期に器械体操をやっていた経験が役立っていますね。娘が将来運動をしたくなっても困らないように、運動神経は養っておきたいと思っています」
娘には自身で夢を見つけてほしい。それが父親としての切なる願いだ。
「僕は6歳のときに『アクション俳優になる』という夢が見つかったから、ここまで歩んで来られた。父親としての願いは、彼女が自分で『好き』を見つけて、夢を叶え、ハッピーな人生を歩むこと。そのためにできることは何でもしたいと思っています」
ケイン・コスギ/Kane Kosugi
1974年アメリカ・ロサンゼルス生まれ。高校卒業後に来日。ハリウッド映画に出演するなどアクション俳優として活躍。スポーツバラエティ番組で魅せる身体能力の高さも評判。
衣装協力:D-VEC〈グローブライド〉