カラーからは“迷わずパター”が基本。今回は寄せるための考え方と打ち方を紹介する。

寄せるための考え方と打ち方
ツアープロの試合では、グリーンのすぐ外側、いわゆる「カラー」からパターで打ち、見事に寄せるシーンをよく目にする。傾斜はもちろん、カラーの芝の状態を瞬時に見極め、難なくカップに寄せる技術はさすがとしか言いようがない。
この「カラー」とは、グリーンの周囲に設けられた芝の刈り高が異なるエリアのこと。グリーンよりも芝がやや長いのが特徴だ。芝の種類や管理状態によって転がり具合は大きく変わるため、プレーヤーにとっては判断力が問われるエリアでもある。
一方、アマチュアゴルファーの場合、カラーに止まったことで「ラフに行かずに済んだ」「パターで打てそうだ」と安堵するものの、いざ打ってみるとカラーの芝に負けてショートしたり、逆に強く打ちすぎてオーバーした経験がある人も多いだろう。
プロゴルファーはカラーの状況に応じて、パターで転がしたりウェッジで打ったりと複数の選択肢を用意している。これは、パターでは芝の抵抗に負けて思うように転がらないことがあるからだ。
しかし、アマチュアゴルファーは上級者でない限り、パターを最善の選択肢と考えたほうがいい。
カラーの芝はグリーンより長く、ボールは転がりにくいが、ウェッジで打つには高い技術が必要だ。ダフればボールは飛ばず、トップすれば飛びすぎてスコアを崩す恐れがある。
そのため、アマチュアがカラーから打つときは、決して入れようとせず、まずは近くに寄せることを目標にし、「入れば儲けもの」という気持ちで迷わずパターを選ぶのが賢明だろう。
カラーの芝の状態を見て仮想カップを設定する
安全第一でパターを選ぶとはいえ、カラーからのパッティングは決してやさしくない。
漫然と打てば、カップにまったく寄らないケースもあるため、グリーン上のパッティング以上に高度な状況判断が求められる。
まず確認すべきは、カラーの芝の状態だ。カラーの芝は「グリーンより少し長い程度」と思われがちだが、実際にはゴルフ場や季節によって刈り高が異なる。
特に芝の生育が盛んな時期には、芝丈が長くなりやすく、それに伴いボールの転がりに対する抵抗も強まる。芝が元気に伸びている分、思ったほどボールが転がらず、想定よりも手前で止まりやすくなるため、強めに打つ必要があるのだ。
次に確認すべきは、グリーンの速さ(グリーンスピード)と傾斜。
傾斜はパッティングのラインや距離感に大きく影響する。わずかな下り傾斜でもボールは予想以上に転がり、上り傾斜では距離が出にくい。また、横方向の傾斜による曲がりも考慮し、狙いどころを調整しなければならない。
カラーからのパッティングでは、転がりが悪くなるため、通常よりも強めに打つ意識が必要だ。加えて、実際のカップより先に「仮想カップ」を設定し、そこに向かってタッチを合わせるのが効果的だ。
アマチュアゴルファーはつい実際のカップをそのまま狙いがちだが、芝の抵抗や傾斜を考慮し、仮想カップに向かってタッチを合わせることを心がけてほしい。
仮想カップの位置を決める際は、芝の抵抗に加えて傾斜の影響も踏まえなければならない。
たとえば、下り傾斜が強い状況では、芝の抵抗があってもボールが転がりすぎる可能性がある。その場合は、仮想カップを実際のカップと同じ位置か、やや手前に設定してタッチを合わせる。
一方、上り傾斜では、芝の抵抗と傾斜の両方が転がりを弱めるため、仮想カップは実際のカップより先に設定し、強めに打つ必要がある。
このように、芝の状態と傾斜を総合的に読み取り、「どこに仮想カップを設定するか」を判断することが、カラーから寄せる際の重要なポイントである。
仮想カップの位置を正確に設定するためには、距離感や傾斜、芝の抵抗を見極める感覚が必要であり、この感覚は日々の練習によって養われる。練習グリーンでカラーの芝にボールを置き、さまざまな傾斜や芝の長さを想定して打つことで、実戦でも迷わず対応できるようになるだろう。
カラーからのパッティングでカップインさせることは決して不可能ではないが、それには状況を正確に見極める判断力と繊細なタッチの技術が求められる。
まずは「入ればラッキー」くらいの気持ちで、確実にカップの近くへ寄せることを最優先に考えたい。
カラーから寄せるための考え方と打ち方の動画解説はコチラ
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。