PERSON

2025.08.01

西野亮廣が指摘する、創作の現場にある“根深い問題”。アートとエンタメの境界が分からない人は失敗する!

24万部のロングセラー『夢と金』の著者であり、今、ビジネスパーソンが追うべき人物の筆頭である西野亮廣さんの人気連載。アートもエンタテイメントも、それぞれの魅力を知り、それぞれの作品で高い評価をされている西野さんが、両者の境界線を解説しながら「本質」を語る。エンタメ以外でも、自分の仕事で「あえて、これをした」という変化球に満足したことがないか? そこにある大間違いとは? サービス関係の人なら誰もがドキッとする話を、今回も、音声メディア「voicy」で配信中の「#西野さんの朝礼」から編集してお届けする。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ

今日は【お客さんにとっては「特別な一回」だ。それを忘れるな】というテーマでお話ししたいと思います。

第207回
エンターテインメントの本質は“期待を裏切ること”ではなく、“期待を大きく超えること”。「ここは、あえて」と言い出す「あえて族」に警告

西野亮廣

エンターテインメントは「受け手」が主語

映画制作や舞台制作など、あらゆるエンターテインメントの現場において、僕が常に注意を促している(というか、時に強く指摘している)のは、「お客さんは、それを待っていない」という点です。

これは創作現場における根深い問題のひとつで多くのクリエイターは「自分が表現したいこと」を大切にしています。

それ自体は素晴らしい姿勢なのですが、一方で、取り組んでいるプロジェクトが「アート」なのか「エンターテインメント」なのかを明確にすることは、非常に重要だと僕は考えています。

たとえば、僕たちのプロジェクトでいえば、『ボトルジョージ』はアートであり『えんとつ町のプペル』はエンターテインメントに属します。

この2つの領域を分ける基準は、「主語の違い」にあります。

アートは「作り手」が主語であり、自己表現や問いかけが目的となります。

一方で、エンターテインメントは「受け手」が主語であり、観客の体験や満足が最優先されます。

問題が起こるのは、「エンターテインメントを作る」という前提で集まった場において、一部のクリエイターが無意識に「アートのスイッチ」を入れてしまう時です。

そうした場合、僕は「ここは、その表現を試みる場ではありません」と明確に伝えるようにしています。

「予想を裏切ってみませんか?」これは誰一人として望んでない

たとえば、ミュージカル『えんとつ町のプペル』の終盤で、「主題歌をあえて歌わないことで、観客の予想を裏切ってみませんか?」といった提案が持ち上がったとします。
#たとえばね

これは観客の誰一人として望んでないですよね。

「期待を裏切ること」は、エンターテインメントにおいて決して肯定されるべきものではありません。

でも、いるんです。「ここは、あえて」を言い出す「あえて族」が。

好きなアーティストのコンサートで、代表曲がアコースティックバージョンで演奏された時の微妙な空気を想像してみてください。

制作側は「新しい表現」として提示しているつもりでも、観客にとっては一生に一度の時間であり、求めていたものが届かない失望感の方が強く残ります。

「こちとら兵庫県川西市から、なけなしのお金を払って、家族分のチケットを購入して、家族で新幹線に乗って来て、高いホテル代も払って、次にこんなことができるのは数年後なのに、なんで、よりによって『あえてアコーステックバージョン』なんだよ」と。

エンターテインメントの本質は、「期待を裏切ること」ではなく、「期待を大きく超えること」にあります。

だからこそ、「お客様の期待を裏切る表現」は、この文脈では必要とされていないと、僕ははっきり伝えます。

ただその際、一部のクリエイターが反発することもあります。

「それなら自分でなくてもいいのでは?」とか、「創造するなということか」といった不満タラタラの顔をされることもあるのです。

しかし、これはクリエイターの表現や創造を否定しているのではありません。

「ステーキ屋を名乗る以上は、美味しい肉の焼き方を極めるべきであって、お寿司を握るのはやめない?」という、ごく当たり前の話をしているに過ぎません。

端的に言えば、「お客様との約束を守りましょう」という話です。

最も重要なのは「主語と目的を取り違えないこと」

もちろんその逆もあります。

「アート」という前提で作品を作るのであれば、作り手が主語であって然るべきであり、観客は多少置いていかれるぐらいでちょうどいい。

僕自身がアートを観る時も、「この作家は何を伝えたかったのか?」と考えたいです。

アートを観に行く時に望んでいるのは「答え」ではなくて、「問い」です。

それぞれの表現において最も重要なのは「主語と目的を取り違えないこと」

そのズレこそが、作品の不全感や観客の失望を生むのだと、僕は考えています。

僕は、スタジオ4℃さんとずっとアニメーションを作っているのですが、僕がスタジオ4℃さんの好きなところは、あの「アート集団」みたいな人達が、『えんとつ町のプペル』を作る時にはエンタメに全振りするところで、そこに、お客さんとの約束を守ろうとするプロの矜持を見ています。

これは、エンタメに限った話ではなくて、あらゆる業界で見られる事故だと思うのですが、エンタメ屋はもちろんのこと、レストランやケーキ屋さんやお花屋さん、その他あらゆるサービス業の方に、自戒を込めてお伝えしておきたいのは、サービスを続けている僕らにとってはたくさんあるうちの1日だけれど、お客さんにとってはその日は「年に一度の特別な日で、明日はない」ということを忘れずにいましょう。

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西野亮廣

お知らせ! 1日限りの「キンコン西野のギター発表会(えんとつ町のプペル)」開催!

西野亮廣
開催日:2025年8月12日(火)
時間:14:00 開演 ( 13:30 開場 )
会場:KAAT 神奈川芸術劇場 ホール 
出演:西野亮廣
詳細はこちら
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2025年8月12日に、ミュージカル会場(KAAT 神奈川芸術劇場)で、『西野亮廣講演会inえんとつ町』を開催! ここで話したことが、1冊のビジネス書に!? 詳細はこちら。オンライン配信チケットも!

2026年春、『映画 えんとつ町のプペル 〜約束の時計台〜』 が公開決定!

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西野亮廣

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お知らせ! 2025年8月9日〜30日、ファミリーミュージカル「えんとつ町のプペル」が大劇場・オーケストラ版での上映決定!

開催日:2025年8月9日(土)〜 30日(土)
会場:KAAT 神奈川芸術劇場(神奈川県横浜市中区山下町281) 

お知らせ! ミュージカル「えんとつ町のプペル」密着ドキュメンタリー【BackStory】を毎週金曜日に配信

西野亮廣

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毎週金曜日20時にミュージカル『えんとつ町のプペル』制作の裏側ドキュメンタリーを配信しています!
【これまでのBackStory】

最新回は【キンコン西野ガチギレ】「お金をナメるな!」

ショート動画はこちら【YouTube】【TikTok】

ミュージカル「えんとつ町のプペル 」VIP席 発売中!

映画のお知らせ

■NEWS! コマ撮り短編映画『ボトルジョージ』が、海外の映画祭で続々受賞!

【 フォトフィルム国際短編映画祭(トルコ)】
・ 最優秀作品賞(Best of Best Festival Film)
・ ストップモーション部門最優秀賞(Best Stop Motion)

【オーフス映画祭(デンマーク)】
・最優秀短編アニメーション賞(Best Animated Short)

【デザートスケープ国際映画祭(アメリカ・ユタ州)】
・最優秀アニメーション短編映画賞(Best Animated Short)

【ハリウッド短編映画祭(HOLLYWOOD SHORTSFEST 2025)】
・最優秀アニメーション短編映画賞(Best Animated Short)

【札幌国際短編映画祭(日本)】
・最優秀作曲賞(Best Original Score)
・アニメーション特別表彰(Special Award for Animation)

【ニューポートビーチ映画祭(アメリカ)】
・ アニメーション短編部門審査員賞(Jury Award for Best Animated Short)

【グローバルステージ・ハリウッド映画祭(アメリカ)】
・最優秀短編映画賞(Best Short 2024)

NEWS! 第97回アカデミー賞(米)の短編アニメーション部門のショートリストに選出されました!

監督:堤大介(トンコハウス) 脚本:堤大介氏と西野亮廣の共同制作 プロデューサー:松本紀子(ドワーフ)

西野さんの『ボトルジョージ』に対する想いとは? こちらをチェック!

ボトルジョージ

■コマ撮り短編映画『ボトルジョージ』の専用劇場、『ボトルジョージ・シアター』がグランドオープン!

発売中&予約受付中

■CHIMNEY TOWNが運営するクラウドファンディング【PICTURE BOOK】

「挑戦する人」と「応援したい人」が集まる オンラインサロン『西野亮廣エンタメ研究所』を運営しているCHIMNEY TOWNが作った、クラウドファンディングのプラットフォームです!

イベントのお知らせ

『西野亮廣講演会』全国各地で続々開催決定!

『西野亮廣講演会』のお知らせです。
下記の都道府県で開催が決まっています。

  • 8月12日(火)に神奈川
  • 9月4日(木)に三重
  • 9月9日(火)に徳島
  • 9月11日(木)に東京
  • 9月15日(月)に愛知
  • 9月17日(水)に滋賀
  • 9月22日(月)に青森
  • 9月30日(火)に鹿児島
  • 10月01日(水)に福岡
  • 10月06日(月)に群馬
  • 10月9日(木)に新潟
  • 10月14日(火)に東京

私、西野亮廣がマイク一本で1時間半ほど喋る変なイベントです。チケットをお求めの方は、『西野亮廣全国講演会』で検索してみてください。サロンメンバーさんが作ってくださったイイ感じのホームページに飛びますので、そちらから。会場によっては、まだ、チケットを発売してなかったりしますが、そのへんはご容赦ください。

書籍のお知らせ

  • 最新絵本『みにくいマルコ~えんとつ町に咲いた花~』のご購入はこちら
  • 73万部の絵本『えんとつ町のプペル』のご購入はこちら

NFTのお知らせ

子供たちに絵本を贈るプロジェクト「『CHIMNEY TOWN GIFT』のNFT」が話題に!

バンドザウルスのお知らせ

オンラインサロン・SNS・Note・Voicy


TEXT=西野亮廣

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