何度言っても部下が自分で考えて動いてくれない。きちんと説明したはずなのに、同じことを何回も聞かれる。褒めても響かない、任せても考えない。そんな「上司の悩み」をアドラー心理学で根本から解決。著書『「アドラー」だから自分で動ける部下が育つ 上司の教え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部抜粋。短期連載5回目。

組織にとっての最善を常に意識する
丁寧に仕事を教えたあとに、「このアプリ使えば一瞬なのに、なんで使わないんですか?」などと言われて、「生意気だ!」とカチンときた経験がある人もいるのではないでしょうか。
研修で最近よく聞くのが、「教わる側」にいる若い世代のほうが知識が豊富、というケースです。
誰もがAIを使える時代となり、ITツールのスキルなどは若い世代のほうが長けていることも珍しくないでしょう。
「このアプリ、なんで使わないんですか?」と言われても、こちらとしては、「とにかく会社のやり方に合わせてほしい」とつっぱねたくなるところです。
ただ、大事なのは組織全体にとってのメリットです。
そもそもチームや組織の成長を阻むのは、「今までと同じやり方をひたすら守る」ことであり、自分の仕事のしやすさばかりを優先していては、現状維持からなかなか抜け出せません。
それに、「生意気」と感じる怒りは、「自分のほうが上だ」という意識から湧いてくるのです。
いったん感情を脇におき、「組織にとっての最善は何か」という視点であらためて冷静に考えてみましょう。
そのアプリを導入することで本当に効率化が実現するのなら、組織にとっても自分にとっても都合がいいはずで、相手の意見を活かすことがみんなをハッピーにする決断になります。
場合によっては、逆に使い方を教えてもらう場面も出てくるでしょう。そのように柔軟に新しいことを積極的に学ぶ姿勢は、「教わる側」にとってのロールモデルにもなるはずです。
もちろん、なんでもかんでも採用すればいいというわけではありません。
先ほどのアプリの話にしても、会社のルールやセキュリティ、過去のデータの蓄積、 顧客への影響など、個人レベルの効率化とは別の判断軸が存在するからです。
それらを踏まえた総合的な判断をするのが、「教える側」の役割なのです。
当然、相手の意見を却下する場面が出てくることもあるでしょう。
そんなときも、「あなたは間違っている」とただ否定したり、「黙って従え」のような態度では、「何を言っても無駄だ」という諦めを生み、職場の生産性の低さを相手に印象づけてしまいます。
そうならないために、このように言ってみるのはどうでしょうか。
「たしかにアプリを使ったほうが効率的かもしれないけれど、会社としては今、こういう理由でこのやり方をとっているんですよね。だから、まずはこの方法で進めてみてもらえないですか?」
このような「受け止め+具体的な説明」があってこそ、納得感や信頼感につながるのです。

