フロイト、ユングと並ぶ「心理学三大巨頭」の一人、アルフレッド・アドラー。「すべての悩みは、対人関係の悩みである」と断言し、その悩みを解決するシンプルかつ具体的な方策を提示するアドラーの心理学は、ビジネスをはじめ幅広い分野に活用されている。人と社会について本質を鋭く突くアドラーの言葉こそ、混迷の時代を生きる私たちの生きる道標になるはずだ。『超訳 アドラーの言葉』より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】
実践してこそ習得できる
「人間を深く知ること」は、本や教科書から得られる知ではなく、実践してこそ習得できる知だ。
経験し、自分の実体験として身につけることで人々の喜びも不安も共有していくべきなのだ。
それは、優れた画家が人物画を描く際に、その人を写真のように写しとるのではなく、その人から感じとった印象や雰囲気を描くことができるのと同じようなものだ。
不幸は自分が選びとっている
あたかも、自分だけに不幸の神様がとり憑いているかのように行動する人(例えば、嵐の日に、自分だけに雷が落ちてくるかのように感じたり、泥棒は必ず自分の家を狙って押し入ってくると恐れて悩んだりする人)がいる。
そういう人は、人生でひどいめに遭うと、いつも不幸が自分を選びとっているかのように思うものである。そうではない。自分のほうが不幸を選びとっているのだ。
勇気と訓練で成長する
「遺伝」の論理は、教育や心理学の理論と実践においては、強調すべきではない。
「誰だって、なんだって達成できる」と仮定すべきなのだ。もちろんこれは、人間に「遺伝的な要素」に違いがあることを否定しているわけではない。
重要なのは、「もって生まれたもの(遺伝的な要素)をどう使うのか」ということだ。
だからこそ、教育が非常に重要なものになるのだ。
よい教育とは、能力があるかないかにかかわらず、人を成長させることだ。能力がない人であっても、勇気と訓練によって偉大な能力といわれるまでに成長することもできる。
適切な教育がなされていれば、「能力がない」という自覚は、大きな業績を残すほどの刺激を人に与えるものだ。
目標に向かって道を歩め
一本の線を引こうと思ったとき、目標となる最終ポイントを見ていないと、最後まで線を引くことはできない。
それを同じように、欲求があるだけでは、どんな線も引くことはできない。
つまり。「目標」を設定しなければ、何もできないということであり、未来に目標を設定して初めて、それに向かって道を歩むことができるのだ。
運命に逃げるな。運命を切り拓け
「運命を信じる」という考え方は、一人の人生にとって大きな影響を与える。のみならず、しばしば国家や民族、文明全体にも影響を与える。
しかしながらアドラー心理学の仕事は、思考や感情、ライフスタイルに与える影響を明らかにすることだけだ。
「運命を信じる」といえば聞こえはいいかもしれないが、たいていは単なる逃避にすぎない。建設的な方向に向かって努力することから逃げているのだ。
運命は信じるものでなく切り拓くものだ。「運命を信じる」ことは、間違った心の支えといえる。