フロイト、ユングと並ぶ「心理学三大巨頭」の一人、アルフレッド・アドラー。「すべての悩みは、対人関係の悩みである」と断言し、その悩みを解決するシンプルかつ具体的な方策を提示するアドラーの心理学は、ビジネスをはじめ幅広い分野に活用されている。人と社会について本質を鋭く突くアドラーの言葉こそ、混迷の時代を生きる私たちの生きる道標になるはずだ。『超訳 アドラーの言葉』より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】
人間は劣等だからこそ発達した
自然界にあまたいる生物のなかで、人間は「劣等な」生き物だ。体も大きくなければ、鋭い角も牙もない。圧倒的に速く走れるわけでもない。そして「劣等」であるがゆえに、「不足している」「安全ではない」という意識を人間は常にもっている。
その意識が常にあるからこそ、環境に適応し、安全に生きる状況を作り出すために、外敵に備えておくことや対策をしておく方法を考えだしたのだ。
この人間を環境に適応させ、安全な場所をつくる能力をもちえたのは、人間の「精神」という器官が発達したからである。
劣等感は健康の証
劣等感があることは、病気ではない。あなたが今日あるのは、劣等感のおかげだといってもいい。
むしろ劣等感をもつのは健康で健全であることの証でもある。あなたが努力を重ねて今日まで成長できた刺激になっていたことに気づいてほしい。
劣等感があるから向上心をもつ
劣等感を抱き、「不完全である」「弱い」「安全ではない」からこそ、人は目標を設定するものだ。
生まれてすぐの頃であっても、主張し、親の注目を自分に向けようとし、親からのケアを強いる傾向がある。赤ん坊のこの行為は、人の「認められようと努力する」という行為の最初の兆候ともいえる。
人は、劣等感に刺激されて向上心をもつ。成長したいと願い、そしてそのために努力しようとする。
「優れていたい」が強すぎると病的になる
劣等感があまりに強いと、不安が過剰に大きくなり、劣った部分をただ補おうとするだけでなく、行きすぎることがある。結果、力や「優れていたい」という欲求は極端なものになり、病的なものになってしまう。
目が悪くても画家になれる
身体的に悪いところは、精神にも大きな影響を与える。
例えば、目が悪い子どもたちは、見えるものに対する関心が普通の人よりもずっと強い。かるかに注意深く色や影、風合や遠近法を気にして見る。こうした子どもが画家になったりする。むしろ画家は視力が十分ではないことも多い。遠視であったり、色覚異常の傾向があったりする。
これは、障害があることで、想像力が子どもに困難を超えていくように強いるからだと理解できる。