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2024.03.20

「好かれようと思わなくていい」メンタルの鬼・岡本太郎が断言する人間関係の本質とは

「芸術は爆発だ」の言葉で知られる芸術家・岡本太郎。芸術によって社会の課題に挑み、生涯を通じてあらゆるものと闘い続けた岡本太郎の残した言葉は、今を生きる人々の胸に突き刺さり、前へと進むパワーを与えてくれる。『ありのままに、自分らしく生きる 岡本太郎の言葉』(リベラル社)より、一部を抜粋・再編集して紹介する。【その他の記事はコチラ】

チェス版
louis-hansel/ unsplash ※写真はイメージ

友達に好かれようなどと思わず、友達から孤立してもいいと腹をきめて、自分を貫いていけば、ほんとうの意味でみんなによろこばれる人間になれる

大リーグで活躍したイチローや大谷翔平は日本のプロ野球でも大活躍しましたが、選手同士でつるむとか、仲良く遊び歩くタイプではありませんでした。むしろマイペースで、我が道を行く選手でしたが、結果的にみんなから愛され尊敬される存在となっています。

周りの人と仲良くするためには、愉快な人と思われたいし、サービス精神旺盛な、周りに合わせる人間でなければならないと考えがちですが、岡本は「なぜそう思われる必要があるんだろう」と問いかけ、「他人のためというより、自分の立場をよくしたい、自分を楽なポジションに置いておきたいからだということをもっと突き詰めて考えた方がいい」と話しています。

そのうえで、「好かれなくていいと決心して、自分を投げ出してしまう」方がいいとアドバイスしています。内向的な性格なら、自分な内向的だと平気でいればいいし、気が弱いなら、そういう人間だと腹をくくればいいのです。無理をして友達に愉快な奴と思われる必要もありません。

「友達から孤立してもいいと腹を決めて、自分を貫いていけば、本当の意味でみんなに喜ばれる人間になれる」というのが岡本の考え方です。

親友とは、闘う相手のことだ

親友というと、親兄弟や学友、会社の同僚などに言えないようなことを話し合える相手、と考える人がいますが、岡本太郎にとっての親友は「自分が考えていること、疑問に思っていること、自分のほんとうのことをぶちまけて、ぶつかりあって、いい意味での闘いをする相手」のことでした。

岡本の親友の一人に作家で評論家の花田清輝がいました。戦後、花田の『錯乱の論理』を読んだ岡本は、「日本にもこんな人物がいたのか」と嬉しく思い、その後、知人の紹介で会うことができ、以来、意気投合します。

1948年、2人は総合芸術運動を掲げて「夜の会」という研究会を発足させますが、そこには野間宏や椎名麟三、埴谷雄高、安倍公房といった錚々たるメンバーが集まっていました。

なかでも花田は岡本にとって「純粋に闘い合う相手」でした。闘うと言っても、もちろん殴り合うとか、喧嘩をするという意味ではありません。

自分の考えを相手にぶつけると、相手もそれに応えて、反論し、さらに自分も意見をぶつけるという、まさに「知のボクシング」ができる、そんなかけがえのない「親友」でした。

徹底的な対決こそほんとうの協力なのだ。同調・妥協はなにも生み出さないし、不潔である

岡本太郎と聞いて多くの人が思い浮かべるのが、1970年に大阪で開催された万博博覧会のシンボルとしてつくられた太陽の塔ではないでしょうか。

同博覧会でテーマ展示プロデューサーに任命された岡本はメインゲートの正面に、シンボルゾーン全体を覆う高さ40mの巨大な大屋根をかけるという建設部門のアイデアを聞いて、その屋根を突き破って伸びる塔のイメージが、瞬間的に閃きます。

しかし、岡本のプランに最初は建築部門を構成する丹下健三以下、最前線の建築家たちは難色を示しました。岡本のアイデアは西洋的なかっこよさとは相いれないものだったのです。

それは岡本にとって覚悟のうえでした。本当にすごいものをつくるためには、悪口も結構、非難も結構、一方で賞賛や絶賛もあるという、相反する意見や評価が渦巻くものこそ本当であり、徹底した対決を経て生み出される協力こそが本当の協力であるというのが岡本の考え方でした。

初めからみんなが賛同する、「結構でございますで済んでしまうようなもの」は意味がありません。凄いものをつくり上げるためには、侃侃諤諤(かんかんがくがく)、みんなが自由にものを言い、しかしお互いを尊重するような組織が必要なのです。

大切なのは、他に対してプライドを持つことでなく、自分自身に対してプライドを持つことなんだ

「プライド」というのは、自分の才能や個性、やってきたことなどに自信を持つことですが、プライドの高い人というのは、それを他の人によって正当に評価されることを求める傾向があります。そしてもしそれがかなわず、他の人にきついことを言われると、プライドが大いに傷つくなど、他人の評価に左右されるところがあります。

こうした考え方に対し、岡本太郎は「プライドというのは絶対感だ」と言い切っています。

たとえ自分がバカであろうと、非力であろうと、それがオレだ、と全責任を持って、堂々と押し出すことこそ本当のプライドであり、「他人は自分をどう評価しているのか」ばかりを気にするからコンプレックスを抱くことになるというのが岡本の考え方です。

岡本は小学生時代、たった一人でガキ大将集団にタテついたことで陰湿ないじめにあったことがありますが、それができたのはケンカに強かったからではなく、強い人間にすり寄って頭を下げるような生き方はしないというプライドがあったからでした。

他人にバカにされようが、けなされようが、自分に手ごたえを覚えて、自分らしく生きていくこと、それが岡本の考えるプライドでした。

TEXT=桑原晃弥

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