何度言っても部下が自分で考えて動いてくれない。きちんと説明したはずなのに、同じことを何回も聞かれる。褒めても響かない、任せても考えない。そんな「上司の悩み」をアドラー心理学で根本から解決。著書『「アドラー」だから自分で動ける部下が育つ 上司の教え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部抜粋。短期連載2回目。

チームマネジメントに「ソリューションフォーカス」を活かす
一対一で「教える」場面のみならず、チームマネジメントにおいても、「ソリューションフォーカス(解決思考)」は活かすことができます。
たとえば、チーム全体の営業目標を達成できなかったときに、それについての振り返るミーティングをするとします。
「プロブレムフォーカス(問題思考)」のアプローチの場合、「なぜダメだったのか」「どこが問題だったのか」という方向に話が向かいます。
すると、「プレゼン資料の出来が悪かった」とか「訪問件数が少なかった」といった原因はたしかに見えてくるでしょう。
ただしこれは、「このチームのメンバーには能力がなくて魅力的なプレゼン資料をつくることができなかった」「やる気がなくて訪問件数が少なかった」という結論と同じです。
しかも場合によっては、「能力がなかったのは誰なのか?」「やる気がなかったのは誰なのか?」という犯人捜しに発展することもあります。
こうなると、せっかくのミーティングが「すみません」「申し訳ありません」という謝罪の言葉が飛び交うだけの後ろ向きな場になりかねません。
こういうミーティングは多くの人が憂鬱になりますし、生産性も極めて低いものになってしまいます。
また、いつ自分が「犯人」にされるかと不安になり、萎縮するばかりです。
さらに、「来期こそ目標をクリアするために、具体的に何をすれば良いか」という話になるとします。
すると視点が「過去」にとどまっているため、「新たな一手」のアイデアがなかなか出てきません。
これは「プロブレムフォーカス」の大きな弱点です。
もちろん、「もっといいプレゼン資料をつくろう」「もっと訪問件数を増やそう」というような声は上がるでしょう。しかしこれは、要するに「今回できなかったことを次はやろう」というだけで、単に「頑張れ」と言っているのと変わらず、次の具体的な行動にもつながりにくいのです。
一方、「ソリューションフォーカス」のアプローチならどうでしょう。
「今期は何がどこまでできたのか?」「じゃあ、次はどこに到達したいのか?」「そのために何をするのか」という方向に議論が向きます。
「70 %までは達成できた。あと、◯◯万円積み上げれば100%にできる」「そのためにこういうキャンペーンを張ってはどうか」「以前のキャンペーンのとき、告知のコピーが好評だったから、また◯◯さんやってくれる?」といったプラス面が引き出され、次の一手となるアイデアも出やすくなります。
そんな前向きなやり取りができる場こそが、アドラー心理学で言うところの「共同体感覚」が感じられる場所であり、メンバーそれぞれが自主性を発揮できる環境なのです。
「自分たちはいま何ができていて、次の一歩はどこにあるのか」というアプローチができれば、チームは次の具体策を自分たちの力で生み出すことができます。

