何度言っても部下が自分で考えて動いてくれない。きちんと説明したはずなのに、同じことを何回も聞かれる。褒めても響かない、任せても考えない。そんな「上司の悩み」をアドラー心理学で根本から解決。著書『「アドラー」だから自分で動ける部下が育つ 上司の教え方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部抜粋。短期連載4回目。

「でも」を「たしかに」で受け止めて、「そのうえで」と続きを促す
「それはわかります。でも......」
「でも、まだ私には早いのかなと思って」
「でも、こういうリスクもありますよね」
このように「でも」を言いがちな人がいます。
「やらない理由ばかり言う」「言い訳が多い」と感じて、ついイライラしてしまうかもしれませんが、「教える側」の姿勢として大切なのは、「言い訳が多い=やる気がないネガティブな人」と決めつけないことです。
ネガティブに見えるその言動も、見方を変えれば、
- リスクに気づける
- 先回りして問題点を考えられる
- 失敗を避けようとする慎重さがある
という強みの表れでもあります。
問題は、その強みが「前に進むため」ではなく、「止まるため」に使われていることにあるのです。
そこで、有効なのが、「イエス・バット(Yes・but)」を「イエス・アンド(Yes・and)」に切り替える関わり方です。
たとえば、何かを任せようとしたときに、
「でも、こういうリスクがありますよね......」
と返ってきたら、まずはこう受け止めます。
「たしかに、それは大事な視点です」
頭ごなしに否定するのではなく、「その視点には価値がある」と認め、次の問いを投げかけます。
「そのうえで、前に進めるメリットってどんなことが考えられますか?」
つまり、相手と同じく「でも(but)」で返すのではなく、「そのうえで、それに加えて(and)」で続きを考えてもらうのです。
すると、最初は渋々でも、
「うまくいけば業務効率は上がりますよね」
「この経験があれば、次の仕事に活かせるかもしれません」
と、前向きな視点が出てきて、「やらない理由」から「やる理由」へと視点が切り替わっていきます。
言い訳が多い人に対して必要なのは、「いいから、言い訳せずにやってください」と 命じることでも、「もっと前向きに捉えて」と感情論で迫ることでもありません。
相手の「but」を価値ある視点としていったん受け止め、「前に進む思考」へと視点の切り替えを促すことです。
教える側としては、「イエス・バット」から「イエス・アンド」の関わり方を身につけておくのが建設的といえるでしょう。

