英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第275回。
親の介護、相続問題、仕事…この5年で色々あった
5年前、ロンドンの語学学校に通っていた時のグループチャットにひとりの同級生が久しぶりにメッセージを送ってきました。その冒頭にはこう書かれていました。
How is your life?
直訳すると「人生はどうだい?」となります。
人生は、どうだい? ……この質問に対して一体どう答えるべきなのでしょうか。
そのグループのメンバーは卒業してすぐそれぞれの国に帰り、その後5年間、一度も会っていません。SNSでなんとなくみんながアップする写真は見ているものの、久しぶりにメッセージをするなら、卒業してからのそれぞれの人生を一度報告した方がいいのかも? そう思いました。
この5年、私の人生はどうだったか……。
ロンドンから帰国したのち、パンデミックのなか親の介護が始まりました。仕事はフリーランスになり、収入は不安定に。最近は相続の問題で親族と揉めています。自宅での仕事が多くなり、体力が落ちました。新規の取引先では相手が何を考えているかわからずうまくいかない仕事が多くあります。果たしていつまで仕事があるのか、物価の上昇はどこまでいくのか、親族との問題はどう解決するのか、実家を畳む準備はどうするのか……。
ちょっと、なかなか一言では言えません。
みんなの返事で気づいた“How is your life?”の意味
私が悶々としていると、他のメンバーが返事をし始めました。
Pretty good, can’t complain!
(かなりいいよ、文句なし!)
「人生はどうだい?」と聞かれてこんなふうに即答できるなんて、よっぽど幸せに暮らしているに違いありません。宝くじでもあたったか? そう訝しんでいたら、次々と他のメンバーから返事が来ました。
I'm fine, thanks. How about you?
(うん元気。君は?)
Not bad. How are you?
(悪くないよ、元気にしていた?)
Good, thanks. And you?
(どうも、元気だよ。君は?)
あ、“How is your life?”って別に本気で人生について聞いているのではなく、“How are you?”とほぼ同じ意味、「やぁ、元気?」くらいのことなんだ、とみんなの返事を見て気がつきました。
メッセージを最初に送ってきた同級生は、来年もう一度ロンドンに行って1週間ほど語学学校に通おうと思っているということ。もしまだロンドンにいる人、あるいはその時期にロンドンを旅している人がいたら会おう、ということを言っていました。
ちなみに、“How is your life?”とか“How are you?”にはだいたいみんな「うん、元気」くらいで返すそうですが、調べてみるとどうしても「元気」と答えられる状況ではない時は、こんなふうに返すのがいいそうです。
It's been challenging lately, but I'm managing.
(最近は大変だけど、なんとかやっているよ)
It's a bit hectic right now, but I'm hanging in there.
(今はちょっと忙しいかな。でも頑張ってるよ)
正直、私は“Pretty good, can’t complain!”といえる状況ではないため、これくらいがいいかもしれません。でも「やぁ元気?」くらいの挨拶なのでいちいち深く考えないで、健康な限りはGoodとかfineでいいのかもしれません。
なんにせよ、「やぁ元気? 今度ロンドン行くけどいる人〜?」というメッセージに対して、5年分の人生レポートを送りつけないでよかったなと、心から思いました。