世界ゴルフランキングの急変動は、選手の「現在地」を映し出す。2025年、驚異的なジャンプアップを果たした新星と、怪我や迷いに苦しんだ実力者たち。その明暗を分けた要因をランキングの数字から読み解く。飛ばし屋のように、スムーズにバックスイングを上げるための動画解説も合わせて紹介。吉田洋一郎コーチによる最新ゴルフレッスン番外編。

PGAツアー2025総括。世界ゴルフランキングは「強さ」以上に何を物語るのか
男子ゴルフの世界ランキング「ワールドゴルフランキング」から読み取れるのは、単なる強さの序列だけではない。年初順位と現在順位を比較したときに生じる大きな変動幅は、選手がいまキャリアのどの局面に立っているのかを、如実に映し出している。2025年に、そのコントラストが最も鮮明に表れたのが、急上昇組と下降組の顔ぶれだ。(記事中の世界ゴルフランキングは2025年12月22日時点)
男子ゴルフの世界ランキング「ワールドゴルフランキング」から読み取れるのは、単なる強さの序列だけではない。年初順位と現在順位を比較したときに表れる“変動幅”は、選手がキャリアのどの局面に立っているのかを、如実に映し出している。
2025年、そのコントラストが最も鮮明に表れたのが、急上昇組と下降組の顔ぶれだった。(世界ランキングは2025年12月22日時点)
647ランクアップの衝撃。マイケル・ブレナンという新星
最大の上昇を果たしたのが、マイケル・ブレナンだ。年初世界ランキング681位から34位へ。実に647ランクのジャンプアップである。
米国バージニア州出身のブレナンは、名門ウェイクフォレスト大学時代で大学史上3位タイとなる8つの個人タイトルを獲得し、平均スコア71.46で同校歴代4位の成績を記録した。
名門ウェイクフォレスト大学時代には、大学史上3位タイとなる8つの個人タイトルを獲得し、平均スコア71.46は歴代4位。
プロ転向後は、PGAツアー・ユニバーシティランキング12位の資格により、3部ツアー相当のPGAツアー・アメリカズを主戦場とし、キャリアを積み上げてきた。
2025年シーズンはPGAツアー・アメリカズで16試合3勝、トップ10入り12回という圧倒的な成績を残し、翌年のPGAツアー2部・コーンフェリーツアーへの昇格を決めた。
その勢いのまま、10月にユタ州ブラックデザートリゾートGCで行われたバンク・オブ・ユタ選手権にスポンサー推薦で出場。PGAツアー初出場初優勝を果たした(アマチュアとしては2度出場)。
標高約1,900mの高地ということもあるが、平均351.1ヤードのドライビングディスタンスを記録し、フェアウェイキープ率89.29%、パーオン率79.17%と正確性も際立っていた。飛距離でねじ伏せるだけでなく、大きなミスを引きずらない修正力と、攻めどころを見極める冷静な判断力も併せ持つ「崩れないゴルフ」が、この異例のランクアップを生んだ。
DPワールドツアーから世界トップ30へ。マルコ・ペンジの完成度
もう一人の急成長株が、イングランド出身のマルコ・ペンジだ。年初世界ランキング416位から29位へ。1シーズンで387ランクアップという劇的な躍進を遂げた。
2025年はDPワールドツアーで4月の海南クラシックで初優勝を飾ると、8月のデンマークゴルフ選手権でも勝利。さらに10月のスペイン・オープンでも勝ち、今季ツアー3勝を達成。
トップ10は8回と安定した成績を残し、ポイントランキングは年間王者のローリー・マキロイに次ぐ2位となり、有資格者を除く10位までに与えられる2026年のPGAツアーのシード権を獲得した。
ペンジの最大の武器は平均319.26ヤード(5位)の飛距離だ。加えてパーオン率72.16%(11位)、平均パット1.73(8位)と穴がない。その攻撃力は数字にも表れており、2025シーズンは20イーグル以上を記録。チャンスを確実にスコアへと結びつける鋭い攻めを披露した。
ブレナンとペンジに共通するのは、平均320ヤードに迫るドライバーショットに加え、ショットの正確性やパッティングを含めた総合力を備えている点だ。
2026年のPGAツアーは、こうした若手が主役となる可能性を感じさせる。
怪我と迷いが奪った時間──失速した実力者たちの現在地
一方で、順位を下げた選手たちには、それぞれ明確な理由がある。
怪我の影響が最も色濃く表れたのが、2021年にPGAツアー・ルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、22年にはフェデックス・セントジュード選手権でツアー初優勝を挙げたウィル・ザラトリスだ。
年初世界ランキング63位から212位へ。149ランクの大幅下落。2025年は、腰の怪我との闘いに終始したシーズンとなった。
年明けから「何かがおかしい」という違和感を抱えながらプレーを続け、春先にはスイングのたびに背中の不安定さと痛みが増していった。それでもマスターズ、全米プロとメジャーに出場したが、結果は予選落ちが続いた。
決定的だったのは、5月の全米プロ後に検査を受けた結果、過去に手術した部位を含む椎間板ヘルニアの再発が判明したことだ。2023年の手術後、スイング改造や筋力強化に取り組んできたものの、蓄積した負担を完全に取り除くことはできなかった。
シーズン続行を断念し、2度目の手術を決断。長期離脱を余儀なくされた。その後は体幹と下半身の強化を中心に再構築を進め、12月のDPワールドツアーでの復帰戦では「3年間続いた腰痛の悪夢は終わった」と語るまでに回復し、再起を誓っている。
技術的な迷いという観点で象徴的なのが、韓国出身の23歳、トム・キムだ。
PGAツアーでは、21歳になるまでに2勝を挙げた最年少記録をタイガー・ウッズが長く保持していたが、トム・キムはそれを約6ヵ月早く達成。若くしてPGAツアー3勝の実績を築いてきた。
しかし2025年シーズンはトップ10入りがわずか1度にとどまり、フェデックスカップランキングは108位。100位までに与えられるシード権を逃し、世界ランキングも年初21位から105位へと84ランク下落した。
背景にあるのは、さらなる進化を求めた肉体改造と技術調整のミスマッチだ。ボール初速は向上した一方で、代名詞だったショットの精度は低下した。ティーショットでどれだけスコアを稼いだかを示す指標であるストロークス・ゲインド:オフ・ザ・ティーは、2勝を挙げた2023年の75位から2025年は142位へと後退。
さらに、主にアイアンショットの精度を表すアプローチ・ザ・グリーンも、10位から70位まで順位を落とした。現在は特定のコーチをつけず、「今の体」に合う感覚を探りながら、スイングの再構築に取り組む段階にある。
上昇組は、これまで積み上げてきた努力が結果として表れた一方、下降組は怪我や技術面で歯車が噛み合わない壁の只中にいる。
世界ランキングに映し出されているのは、キャリアの「現在地」そのものだ。この先、このランキングがどのように動き、どんなドラマが生まれるのか。引き続き注目していきたい。
マイケル・ブレナンのように速いバックスイングで飛ばす
フェデックスカップ・フォールで鮮烈な勝利を飾ったマイケル・ブレナン。その飛距離を支える最大の技術的ポイントが、速く止まらないバックスイングだ。
バックスイングを素早く行うことで、トップでクラブの反動とシャフトのしなりを活用し、効率よくヘッドスピードを高めている。
アマチュアが同様の動きを身につけるには、下半身の使い方が重要となる。始動の際に右足で地面を押し、その後、半歩後ろに引くような意識で地面反力を使ってクラブを上げてみよう。
バックスイングで地面反力をつかうことができれば、クラブは速く、滑らかにトップへ到達する。この「足を使って勢いを生む」感覚が、飛距離と再現性を同時に高めてくれる。
動画で解説|スムーズにバックスイングを上げる
◼️吉田洋一郎/Hiroichiro Yoshida
1978年北海道生まれ。ゴルフスイングコンサルタント。世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベター氏を2度にわたって日本へ招聘し、一流のレッスンメソッドを直接学ぶ。『PGAツアー 超一流たちのティーチング革命』など著書多数。

