英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第241回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
どうしても思い出せない「カニカマ」の英語
先月にでかけた2週間のアメリカ出張中、夕食を買いに何度もスーパーへ行きました。日本ではあまり見かけない商品が並んでいて、「これはなんだろう」といちいち立ち止まってしまって買い物には毎回かなり時間がかかっていました。
ある日もホテル近くのスーパーで物色していたところ、同行の会社の先輩にこう言われました。
「ねぇこれ、カニだと思う? カニカマだと思う?」
先輩は、カニの身のようなものがパンパンに詰められたパックを持っていました。かなりの量なので、カニだとしたら相当な金額がするはずですが、値段を見るとそこまで高くもありません。
「この値段ならカニカマかな」と思いましたが、一応聞いてみようと店員さんに声をかけました。
「これはカニカマですか?」
そう言おうとして、「カニカマ」を英語でなんと言えばいいのか思い出せないことに気がつきました。
これまで海外に行った際もレストランで「カニか、カニカマか」という問題には実は何度も直面してきていたのですが、英語の勉強を長くサボってきたからか「カニカマ」、全然思い出せません。
なら「これは本物のカニですか?」と聞けばいいのですが“Is it real crab?”という、“r”がたくさん入ったフレーズが、私の発音で通じる気もしません。
結局、自分から声をかけておきながら「ああ、なんでもないです」というふうな仕草をして、店員さんのそばから去るしかできませんでした。
「で、カニなの? カニカマなの?」
と引き続き聞いてくる先輩には「この値段ならカニカマでしょう。当たり前じゃないですか」とちょっと強めに言って会話を無理やり終わらせ、そそくさとレジに逃げ込みました。
「カニカマ」の英語のバリエーション
imitation crab
会計をしている時に、ふとこの単語を思い出しました。
「ああ、『カニカマ』ってイミテーションクラブじゃん。なんで言えなかったんだろう……」
大袈裟ですが、その場にしゃがみ込みそうになりました。必要な時に必要な単語を思い出せず、どうでもいい時にぽっと出てくる。よくあることですが、その都度、やっぱり悔しいものです。
あまりの悔しさに、ホテルに帰って調べてみたら他にも「カニカマ」の言い方がいくつか見つけました。
crab sticks
krab sticks
「カニ」は“crab”なので2番目の“krab”はスペルミスのように見えます。ただ「カニカマはカニに似ているけれど、偽物なので、スペルもちょっと違う」ということで、スラング的に「K」にする人たちがいるそうです。
ほかには“seafood sticks”という言い方もありました。魚のすり身を棒状にしたものがカニカマですから、「シーフードスティック」とは納得の表現です。
さらに「カニカマ」はそもそも日本の食べ物ですから、“kanikama” とそのまま言っても通じる場合もあるということ。ならあの時、一か八か店員さんの前で“Is it Kanikama?”と聞いてしまえばよかったかもしれません。
とはいえ、一度覚えたはずの“imitation crab”が言えなかったのが、その後もずっと悔しくて帰国した現在は、スーパーに行くたびに「イミテーションクラブを買おう。イミテーションクラブはどこかな」と独り言を言っています。おかげで現在冷蔵庫にはこのイミテーションクラブがたくさん入っていますが、新玉ねぎや菜の花といった春の食材と和えるととても美味しいので、まぁいいかなと思っています。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。