福岡ソフトバンクホークスの野球の歴史と精神を次世代へ継承していく「FUKUOKA OH SADAHARU LEGACY PROJECT(フクオカ・オウ・サダハル・レガシー・プロジェクト)」(略称:王レガシープロジェクト)」の発起人・城島健司氏の記事をまとめてお届け! ※2026年8月掲載記事を再編。

1.ホークスの精神を次世代へ。城島健司が伝えたい、王貞治という存在

2026年5月24日、みずほPayPayドームで行われたソフトバンクと日本ハムの試合。この日は福岡ソフトバンクホークスにとって特別なものとなった。1995年から2008年まで監督としてチームを指揮し、現在は球団の会長である王貞治の歩みと精神を、ファン、地域とともに共有する象徴的な一日として、「OH SADAHARU LEGACY DAY(オウ・サダハル・レガシー・デー)」が開催されたのだ。
ホークスの選手、監督、コーチは全員が王会長の監督時代の背番号である「89」の特別ユニフォームを着用。球場には秋山幸二、井口資仁、内川聖一、工藤公康、小久保裕紀(現・監督)、城島健司(現・CBO)、攝津正、デニス・サファテ、藤本博史、和田毅(現・球団統括本部付アドバイザー)という球団のレジェンドと言えるOBが来場。現役選手では柳田悠岐もここに名を連ねた。
このイベントは今年初めに発表された「王レガシープロジェクト」の一つ。企画、立案したのはレジェンドの一人でもある城島健司CBO(チーフ・ベースボール・オフィサー)だ。城島はプロジェクトを思い立った経緯、その狙いについてこう話す。
「プロ野球の世界は毎年のように選手だけでなく監督、コーチ、スタッフ、フロントの人間も入れ替わります。ただそのなかでホークスにおける王会長は監督に就任した1995年から30年以上球団の中心であり続けてきました。
一人の人物がここまで長きにわたって球団を牽引してきたというのは、日本はもちろんアメリカにもないことだと思います。その王会長が築いてきたものを次に世代に繋いでいくためにも、このようなイベントは何としても行いたいと思い、やっと実現することができました」
2.城島健司CBOが明かす“王イズム”、常勝ホークスを築いた王貞治の教えとは

「長崎県の佐世保で生まれ育ちましたので、当時のテレビ中継は巨人戦だけでした。私は1976年生まれなので1980年に引退した王会長の現役時代の記憶はほとんどありませんが、それでも巨人、プロ野球の象徴的な存在で、野球を始めたころから王選手のようなホームランを打てるバッターになりたいという思いは持っていました。
中学2年の秋にたまたま私の地元で行われた野球教室に王さんが来られて、バッティングを褒めてもらったんですね。『将来は巨人に入って頑張りなさい』と言われたのを覚えています。城島少年にとっては夢のような出来事で、そこから巨人に行って王さんのようになりたいという気持ちがより強くなりました」
城島CBOはその後、大分県の別府大学付属高校(現・明豊)に進学。強肩を生かしてキャッチャーとなり、高校3年時には全国的にも注目の存在となった。当初は大学進学を希望していたが、1994年のドラフト会議でダイエーが1位指名。ここで再び王会長との縁が繋がることとなる。
「大学に行くつもりで準備していましたが、ダイエーがちょうど翌年から王監督になることが決まっており、そのこともあって入団を決めました。王監督になることが決まっていなかったらそのまま大学に進んでいたかもしれません。これも縁だと思いますね」
しかし当時のダイエーは長年Bクラスに低迷していた時期で、城島CBOが入団した1995年は5位、翌1996年も6位という成績に終わっている。ただそんな成績であっても、王監督のぶれない姿勢を感じたという。
3.王貞治、世界記録756本目のホームランの打ち方は納得していない【城島健司】

「王会長には、引退後も毎年食事をする機会を設けていただいていて、その度に『君はもう一度指導者としてユニフォームを着ないとダメだ』ということは言われ続けていました。ただ自分としては指導者には向いていないと思っていましたし、釣りに没頭していたこともあって『魚の気持ちもまだ分からないのに人間の気持ちは分かりません』と言って断っていました(笑)。
ただそうしていたら、会長付特別アドバイザーとして役職を作るから、戻ってくるように言われて。わざわざ自分のためにそこまでされたら断れないなと思い、指導者ではなくフロントという立場で戻ることを決めました。今もCBOという肩書はついていますが、会長付というのはそのまま残しています」
2005年のオフにメジャーに挑戦してから実に15年ぶりとなるホークス復帰で、王会長とは監督と選手ではなく、また新たな役割でタッグを組むこととなった。そしてそこで改めて感じたのは王会長の野球への想いの強さだという。
「自分も色んな方と関わってきましたが、王会長ほど野球のことを考えている人はいません。それこそ365日、常に野球のことを考えている。それはホークスという球団の単位ではなく、もっと広い範囲です。
例えば一緒に試合を見ていて、相手チームの選手がホームランを打った時に、ホークスとしてはすごく痛いことなのですが、そのバッティングについて褒めていることもよくあります。また去年(2025年)のことですが、小学生と中学生を教えるための指導者ライセンスも受講して取得していました。あれだけ選手としても監督としても経験があって、今年で86歳になっても野球について学び続けようとしている。そんな人は他にはいません。

