『北極星 僕たちはどう働くか』の著者である西野亮廣さんは、ビジネス界きっての注目人物であり、新しい提案をするたびに「“黒船”扱い」されてきた人物でもある。昨今、河口湖の美術館の事業承継&事業再生に取り組み始めているが、やはり「警戒心」を向けられることがあるらしい。しかし、その本意は、先輩方に最大の敬意を持ちつつ、「人と、文化と、歴史を守ること」だ。一見過激に見える行動の向こうにあるものを、“正確に”見極めよう。今回も、音声メディア「voicy」で配信中の「#西野さんの朝礼」から編集してお届けする。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ)
今回は【「競争に参加しない」という強さ】というテーマでお話ししたいと思います。
第258回
「競争」の先には「競争」しかない! 最も大切にすべき「サービス」への投資を守りたいなら、「再生回数」「インプレッション」「AI」「バズ」という言葉に縛られない世界にも目を向けろ!
「競争」の先には「競争」しかない! 最も大切にすべき「サービス」への投資を守りたいなら、「再生回数」「インプレッション」「AI」「バズ」という言葉に縛られない世界にも目を向けろ!

僕らが目指すのは「別の場所に作り替えること」ではない
「競争に参加しないのって強いよね」みたいな話をしたいと思います。
ここ最近は、ビックリするぐらい毎日『河口湖 音楽と森の美術館』の事業承継&事業再生と向き合っております。
この件に対する想いを、Xの方にポストさせていただいたのですが、ご覧になられていない方もいらっしゃると思うので、途中割愛しつつ載せますね。
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『河口湖 音楽と森の美術館』の運営のバトンを、少しずつ引き継いでおります。
最初に取り組んだのは、財務管理や経理体制の見直しでした。
人件費を含めたコスト構造や資金の流れには改善の余地が多く残されていたため、この最初の2ヶ月は、派手な変化を演出するのではなく、事業の土台を整えることに時間と労力を注いできました。
CHIMNEY TOWNが運営に関わり始めたにもかかわらず、展示やショーといった「目に見える変化」が少なかったのは、そのためです。
まずは「止血」を優先する必要がありました。
もちろん、これは決して「これまで」を否定するものではありません。
この美術館は、多くの方々が長い年月をかけて守り、育て、今日までバトンをつないできてくださったからこそ、今があります。
そして何より、この場所には、世界に誇るべき貴重な美術品や建築、庭園、オルゴールなど、かけがえのない財産が数多く息づいています。
その価値は、これからも変わることなく、この美術館の核であり続けます。
だからこそ、僕らが目指すのは「別の場所に作り替えること」ではありません。
先輩方が築いてこられた価値に最大限の敬意を払いながら、その魅力がこれまで以上に多くの方に伝わるよう、演出や体験の設計を磨き上げていくことです。
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…まぁ、要するに、「ここまでは、経理体制の見直しをひたすらしてました。ここからはウワモノ(演出)に着手しますが、『内容を一新する』ということはせず、美術館にすでにある価値にキチンと光が当たるようにしていきます」といったところです。
これまで僕は、絵本業界、映画業界、ミュージカル業界……と、いろんな業界を渡り歩いてきました。
そのたびに、その業界に長く携わってこられた方々からは、「黒船」のような扱いを受け、「この業界をグチャグチャにする気なんだろ?」という目を向けられることは、一度や二度ではありません。
でも、この記事の読者さんならご存知のとおり、僕が毎回やっていることは「破壊」ではありません。
たとえばミュージカル業界では、「キャストへの稽古場代は支払われなくて当たり前」という慣習に対して、「創作に費やした時間に、きちんと対価が支払われる労働体制の見直し」を提案してきました。
絵本業界では、「いい作品を作れば売れる」という精神論だけではなく、クリエイターが命懸けで生み出した作品がキチンと世の中に届くようなマーケティングの選択肢を提示してきました。
クラウドファンディングも、オンラインサロンも、無料公開なども。
言い続けてきたのは、ただ一つです。
「やるかどうかは別として、万が一に備えて選択肢として持っておいた方がいい」です。
毎回、最初は警戒されるんです。
でも、実際に僕が誰よりも時間を使い、頭を使い、走り回っているのは、その業界で働く人を守ること、その文化を守ること、そして、その歴史を次の世代へ残すことです。
今回、河口湖の美術館もそう。
倉庫や廊下の片隅に、歴史的価値のあるオルゴールが放置されていたので、「この放置されている歴史こそが、この美術館にしかない最大の価値じゃないか」と言って、もっと人目につく場所に移動させ、きちんとメンテナンスをして、きちんと照明を当てるように提案させていただきました。
まさか、「オルゴールなんて古臭いから全部捨てましょう」なんて言うはずがありません。
繰り返しますが、僕はペリーでも、マッカーサーでも、曹操でも、織田信長でも、チンギス・ハンでもなく、エンターテインメントを守りたくて、そこで働く人を守りたくて、その場所に積み重ねられてきた歴史を守りたいヤツです。
そして、そのために四六時中走り回っているヤツです。
毎回、最初に誤解されるので、先にお伝えしておきます。
競争を始めた時点で負けが始まる
さて。
そんな毎日を送っていると、SNSのタイムラインに流れてくる話題と、今、CHIMNEY TOWNで交わされている会話との間に、驚くほど大きな隔たりがあることに気づきます。
美術館の運営に携わっているスタッフの口から、「再生回数」や「インプレッション」という言葉はほとんど出てきません。
「AI」や「バズ」が議題の中心になることもありません。
代わりに毎日のように話しているのは、「IPの力を使って、観光地の価値をどう高めるか」や、それこそ今、お話ししていたような内容です。
インバウンド比率はどう推移しているか。
オフシーズンの来館者数をどう底上げするか。
地域全体の滞在時間をどう伸ばすか。
夜にも人が集まる理由をどう作るか。
そんな話ばかりしています。
もう、お気づきだと思いますが、このような議論はSNSにはほとんど流れてきません。
考えてみれば当然です。
僕らが相手にしているのはSNSのアルゴリズムではなく、観光地の現実だからです。
今回、美術館の運営に関わってみて、あらためて確信したことがあります。
それは、「競争を始めた時点で負けが始まる」ということです。
「サービスを良くするために使うコスト」と、「競争に勝つために使うコスト」は、全然違っていて、競争を意識すると、他者に勝つための広告や価格競争や話題作りにリソースを割かざるを得なくなる。
その結果、本来いちばん大切にすべきサービスそのものへの投資が削られてしまう。
やっぱり、どこかで「競争がないポジション」を獲りにいく必要があると思います。
競争の先には競争しかありません。
再生回数の獲得に勝てば、今度は再生回数を維持する競争が始まる。
なので、「競争がないポジション」は競争の先にはなく、「たまたま獲得できるもの」でもなくて、最初から狙わないといけない。
「どこかビジネスの蛇口なのか?」「どこがビジネスの関所なのか?」を探し続けることが大切だと思います。
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『西野亮廣講演会』全国各地で続々開催決定!
『西野亮廣講演会』のお知らせです。
下記の都道府県で開催が決まっています。
- 8月6日(木)に広島
- 9月30日(水)に千葉
- 10月15日(木)に広島
- 10月28日(水)に大阪
私、西野亮廣がマイク一本で1時間半ほど喋る変なイベントです。チケットをお求めの方は、『西野亮廣全国講演会』で検索してみてください。サロンメンバーさんが作ってくださったイイ感じのホームページに飛びますので、そちらから。会場によっては、まだ、チケットを発売してなかったりしますが、そのへんはご容赦ください。

