89歳の今も現役で活躍するホリスティック医学の第一人者・帯津良一氏と、幸齢者の強い味方・和田秀樹氏の対談記事をまとめてお届け! ※2025年9月掲載記事を再編。

1.89歳医師の免疫力が高い理由「60年以上、毎日ビールを飲んでいます」

和田 お久しぶりです。
帯津 半年ぶりくらいですか。
和田 ですね。帯津先生はいつお会いしてもニコニコされていて、今日もお顔は艶々です。
帯津 実はさっき診察を終えたあと、缶ビールをね。和田先生なら怒られないだろうと(笑)。
和田 (笑)。お酒は今も毎日?
帯津 はい。365日。60年以上続けています。私は今日が最後の日だと思って生きているんでね。毎日が最後の晩酌だと思って飲んでいます。
和田 元気の秘訣ですね。お仕事は今もふたつの病院で?
帯津 はい。この池袋のクリニックで週2回。本拠地の川越の病院で週3回。
和田 平日5日、全部?
帯津 はい。土日は自由。そこで講演に行ったりしてます。
和田 年を取っても働いたほうが確実に若返りますが、すごい!
帯津 働くのは大好きでね。何もない日が嫌いなんです。
和田 それは素晴らしい。
帯津 正月休みは一番嫌い。だから元旦には私が病棟回診をします。全部回るんですよ(笑)。
和田 帯津先生の話はもう、ユニークなものばかりで(笑)。
2.89歳医師、PCR陽性でもいつも無症状だった理由とは

和田 先ほどクリニックに美人の女性が2人訪ねてきました。
帯津 患者さんです。もう1人は彼女のお友だちかな。
和田 笑顔で手を振り合って。医師と患者さんというよりは親しい友人みたいに見えました。
帯津 私はね、患者さんと心を通わせることが一番大事だと思っていましてね。だから白衣も着ません。診察の妨げになると思ってるんですよ。医者の権威をまとうより、普段着にサンダル履きのほうが親しみやすい。
和田 素晴らしいですね。
帯津 医者と患者は同じ病に向き合う仲間という意識でね。そのほうが自然治癒力も上がると私は思っているんですよ。
和田 私も精神科医なので、それはよくわかります。
帯津 そう言えば、和田先生、選挙に出たそうですね。
和田 いえ、選挙に出たわけではないんですけど。「幸齢党」という政党をつくりましてね。選挙に出るつもりだったんですけど、立候補者の人数が足りなかったので、今回は東京で一人、応援させていただくのに留まりました。まあでも、1回目は惨敗でした。高齢者の幸せを目指すので「幸齢党」と名付けました。
帯津 そうでしたか。高齢者の幸せを目指すってのはいいですね。医者の私が言うのも変ですが、病院へ行ったからといって病気が治るわけではないですからね。病気を治すのはやはり、もともと人間が持っている自然治癒力です。そして自然治癒力を高める最大の原動力はときめきです。ときめいている患者さんは、ほぼ例外なく症状がよくなっていきますからね。
和田 全く同感です。それなのに現実は免許の返納を促したり、働く意欲と能力のあるお年寄りを悪い労働環境で雇ったりする。高齢者の割合が増えているんだから本当は現役世代との「共生社会」を目指すべきなのに、逆をいっているんです。マスコミも高齢者に対してはネガティブな扱いをすることが多いと、僕は感じています。
帯津 お年寄りはこれまでの人生を、人のため、家族のため、社会のために生きてきたんだから、今後は自分のために時間を使う。もっと楽しんで、自分を慈しんでほしいですね。
3.89歳医者、元気に長生きの秘訣は晩酌と太極拳

帯津 がんの患者さんで「あそこの病院に行けば酒が飲めそうだ」ってうちの病院に移ってくる人がいるんですよ。
和田 いいですね。
帯津 ある作家の方でね、食道がんがかなり進行して、移ってきた方がいました。「先生、お願いします」って言われて、この人飲みたいんだなとピンときた。で、焼酎を1本持っていったんですよ。そしたら嬉しそうに布団の中に隠してね(笑)。
和田 いいですね(笑)。
帯津 何日かしたら「先生、もう飲んじゃったよ」って言うので、今度は「百年の孤独」という焼酎を持って行ったの。
和田 いい焼酎ですね。
帯津 喜んでね。だけど、全部飲み終わらないうちに亡くなったんですね。そしたらなんと、葬儀のときに、お焼香台に、その飲みかけの「百年の孤独」が立っていたそうです。
和田 いい話ですね。
帯津 ね、いいですよね。
4.コレステロールが高いほど、がんや認知症になりにくい

帯津 そう言えば、和田先生は血糖値を下げないって言ってましたね。
和田 下げないというか、一応朝測って、300を超えたら薬を飲むようにしていまして。
帯津 なるほど。
和田 今の医学は「血糖値が高いのはよくない」と言いますが、「数値がいくつになったら、どの臓器に悪さをする」ということはわかってないんです。それなのに普通の医者は「ここまで下げろ」とギャンギャン言う。
帯津 人間より数値重視なんです。
和田 だけどその数値も本当は怪しい。例えば「HbA1cは6まで下げろ」と言うんですが、アメリカの大規模調査では、この数値が7~8の人のほうが長生きするとわかっています。そもそも人間には個人差がありますからね。全員一律に「ここまで下げろ」って言うのはどうなんだろう。本当にそんな必要あるのかなって思いますけどね。
帯津 本当にね。コレステロールなんかも、神経質に下げる先生がいますよね。私は300を超えても「まあいいじゃないか」って言ってるんですけどね。
和田 コレステロールに関しては「高ければ高いほどいい」という説もある。少なくとも、高いほどがんになりにくいということはわかっています。また高いほど認知症になりにくいということも、わかってきています。そもそもコレステロールは免疫細胞の材料だし、グリアという神経細胞の材料でもある。体に必要なものなんですよ。
帯津 だけどコレステロールがすべての病気の元凶みたいな言われ方をしていますね。
和田 確かに高すぎるせいで病気が起こることもあるとは思うんです。でも悪い面だけを取り上げて「コレステロールは害悪だ」「下げろ」と一辺倒で言う今の医学には納得できません。
帯津 いやあ、先生と話すと安心しますね。いろいろといい話してくれますからね。
5.糖尿病なのに、好き放題食べても元気な理由

和田 患者さんたちは、食事はわりと、好きなものが食べれるんですか?
帯津 そうですね。それはもうずっとやってきています。
和田 僕自身、糖尿病なのでよくわかるんですけどね。糖尿病っておしっこも近くなるし、喉も渇くし、イヤな症状がいっぱいあって気分が重くなるんです。そのうえ食べるものまで我慢させられたら、これはもう免疫力が落ちるなと思って。それで僕は糖尿病なのに、好き放題食べてるわけです(笑)。
帯津 のびのびとやる時間が多いほうがいいですよね。
和田 本当にそう思います。お酒は飲めるんですか。病院の中でも。
帯津 私は飲みますよ(笑)。患者さんにも、以前は「この人、お酒が好きだろうな」と思うと、私は日本酒の1合瓶か2合瓶をポケットに入れてたんです。回診の後に、ひょいと渡すとニコーッと嬉しそうな顔してね。
和田 そりゃそうですよね。
帯津 だから私、言うんです。「あんたね、飲み終わった瓶をその辺りに置いて看護師に見つかったらダメだよ」って。すると「わかってます」なんて言って、うまくやってくれますよ。
和田 (笑)。
帯津 ところがね、最近は変わりました。
和田 ああ、やっぱりね。
帯津 看護師さんの前で私が酒を出してもね、看護師さんは何も言わなくなった。だいぶ進歩しましたよ(笑)。
和田 いやー、そっちですか。愉快ですね(笑)。患者さんが元気になっていく姿を見るうちに、看護師さんもだんだん変わってきたんでしょうね。帯津先生の姿に感化された。
6.「アルコールによる肝障害数値は、正常値の5倍。でも、私は健康なの」89歳医師の元気の秘訣

和田 僕は高齢者医療が専門で、長いこと患者さんと向き合っているうちに、だんだんと「長生きすること」より「残りの人生をどう充実させて生きるか」のほうが大事だと思うようになってきまして。
帯津 同感ですね。
和田 しかも帯津先生がおっしゃるように「死を怖がりすぎないで受け入れる」ほうが、たぶん幸せになれるとも思っているんです。それと「その人らしく病気の中でも生きていく」っていうね、それを周りでちゃんと整えてやるっていうのが医療だろうと思うんですよね。
帯津 その通りだと思います。
和田 なのに普通の医師は、患者さんの幸せより「検査データを正常にする」とか「病気を治す」ということにばかり意識が向いています。もちろんそれも大事なんですよ。だけど「それがこの人にとって本当にいいことなのか」とは、あんまり考えてあげていない気がして。
帯津 本当ですね。ちなみに私は、アルコールによる肝障害の指標となる数値は、正常値の5倍です(笑)。つまり私の体は、数値上は健康ではありません。ところが私は健康なのです。毎日好きなものを食べ、朝5時から仕事をして、太極拳を舞い、自由に話し、晩酌を楽しんでいる。女性にもときめく。これを健康と言わず、なんと言うんでしょうか(笑)。だから私は、健康診断の結果は気にしません。あれは余計なお世話だと思っているんですよ。
和田 (笑)。帯津先生は、元々は外科医だったんですよね?
帯津 そうです。東京都が駒込病院をがんセンターにして、私は食道がんのスタッフの1人として呼ばれました。私は大学に残るような人間じゃないし、そもそもなんでも診れる開業医になりたいと思っていたんですけどね。でも東京都のがんセンターで7年間働きました。これは私にとってはいい勉強になりました。ただし、そこで西洋医学の限界を感じましてね。
和田 なるほど。

