放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「野球の話ばかりしてくる上司がウザいです。それに乗っかる同僚も多いのですが、私はうまくついていけません。どのように対処して、関係を築いていくべきなんでしょうか?」という女性からの相談をいただきました。
顔を合わせればプロ野球の話、やっと終わったと思ったら、こんどは大谷翔平選手……。そんな上司や職場は多いですよね。
あるデータによると、男女集団(職場)の会話は、女性25%に対し、男性は75%も支配するそうなので、話題についていけない、ウザいと感じている女性社員もたくさんいるでしょう。
そこで今回は、「職場の話題についていけない人の思考法」、「上司が気をつけるべき職場の会話」の2つを、ゆっくりほぐしていきたいと思います。
ウザい話は「オレはこれに弱いよ独演会」
まず、お決まりの話ばかりしてくる、僕らミドル世代の生態を明かしましょう。
一説によると、男性が1日に発する言葉は女性の3分の1なんだそう。
あなたの目の前にいる上司は、常にウザい「お喋りさん」ではなく、職場では饒舌に見えるけど、家庭では無口になっちゃう愛すべきキャラクターなんです。
そして彼らが、ついていけない話題を口にしているのは、“職場にいながら職場から離れるため”です。
よく映画で宇宙飛行士や戦闘機のパイロットが、機内でメジャーリーグや、ハイスクール時代の話をしていますよね?
これは、眼前のハードワークの成功確率を上げるために、あえて無関係なトピックを口にして、自分をほぐしているから。
あなたの上司も同じで、ムダ話という「次の仕事の助走」をしているだけなので、けして悪意はないのです。
だけどウザい、ついていけないという感情は分かります。僕も若手時代に経験してきました。
そういったときに有用なのは、上司が差し向けてくる話題を、別視点でとらえ、解釈していく思考法です。
例えば僕は、年上が振ってくる話題を「オレはこれに弱いよ独演会」と名づけて拝聴していました。
人は、誰もが自分を語りたいし、話を聞いてもらえることで自尊心が満たされ、心を開いていきます。
いわば、野球、ゴルフ、ロック、地元話などは、そっくり「その人のくすぐり所」になり、うまく話を合わせていくと“キャリアアップのテコになる”ということ。
ウザいと切り捨てるのではなく、「この人は、自分のくすぐり所を教えてくれているんだな」「次の独演会も楽しみだな」といった、別視点で思考していくこともワークハックになるんですね。
リーダー世代は「認定」と「単調」を手放せ
上司が気をつけるべき職場の会話のポイントはたくさんありますが、今回は大切な2点をシェアしてみましょう。
1つ目は「認定」。私たちリーダー世代は、自分が振った話題に対する部下の反応を気にしがちです。
そこで起こりやすいのは“仕事とは無関係の認定”です。
例えば、あなたが野球の雑談をはじめたとき、自分の推しチームや選手データで、話に乗ってくる部下は「仲間」と見なし、話題に入れない、入らない部下は「合わない」に認定してしまう。これは無意識におこなわれていることがあるので注意が必要です。
雑談はあくまで雑事。部下をはかる評価軸ではないので、早めに手放していきましょう。
2つ目は「単調」。私たちは、新社会人時代に嫌というほど上司のついていけない話を聞いてきたのに、いつの間にか、その当事者になってしまっていることがあります。
いつも同じトークを振っていないか? 話題にする分野が狭くなっていないか? そういった「単調」に気づいていく時期に差し掛かっています。
ちなみに、僕が吉本NSC生に伝えている、話題が豊富になるためのコツは「NG式トーク法」です。
例えば、誰かに告白をするとき、「好き」や「愛してる」を使わずに伝えると、表現力も増すし、かえって刺さったりします。
これと同様に、プロレス好きな芸人はプロレストーク禁止、下ネタ好きの芸人は下ネタ禁止など、あえて十八番をNGにしてトークさせていくのです。
あなたも、今日は「野球禁止」でいきませんか?
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。