PERSON

2024.12.02

「自分は正当に評価されていない」と悩む人が手放すべき2つのこと

放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「客席はウケていたのに審査員に評価してもらえなかった」

お笑いの賞レースが増えるこの時期は、そんな芸人の愚痴を聞くことも増える季節です。

この「評価してもらえないジレンマ」は、お笑い界だけでなく、どこの業界でも同じですよね。

  • 頑張っているのに評価してくれない
  • 会社の評価基準に疑問がある
  • 同期やライバルばかりが出世していく
  • 自己評価と他己評価の差に悩んでいる

……など、みなさんも一度は感じたことがあるでしょうし、そもそも“評価に不満のない職場はない”とも言えるでしょう。

そこで今回は、吉本のNSCで約1万人の人材を査定し、行動変容を促してきた僕の知見を、「今、評価されていない人が手放すべきこと」という視点でシェアしていきます。

1.「デキる人になってから評価されたい」を手放す

吉本NSCには、全国各地から約700名が入学してきますが、芸人の卵とはいえ、みんなが快活ではないし、積極性があるわけではありません。

評価者の僕の目には、「この子、面白そうだな」「光るものがあるな」と映っていても、入学から半年が経っても、ネタを披露しない生徒や、トークコーナーで発言しない生徒が毎年のようにいます。

彼らに共通しているのは、“もっとデキる人になってから評価されたい”というマインド。

現時点の自分の力量に満足していないので、「今は真っ当に評価されないだろう」→「ヘタに目立つのはやめておこう」→「もっとデキるようになってから評価されたい」というフローチャートができあがるのです。

しかし、僕ら評価者も人間なので、いざ評価するときに補助線になるのは、「その人から受けとってきた印象」です。

“もっとデキるようになってから”というマインドに居ついている人は、おのずと印象が薄くなり、ありきたりな「積極性がない」「協調性がない」などのラベルを貼られてしまうんです。

僕の知見では、真っ当な評価を得ていない方は、存在感が薄いのではなく、自ら存在感を消していることもあるので、この“もっとデキる人になってから評価されたい”という思考は手放していきたいですよね。

2.「お天道さまが見ている」を手放す

吉本興業では、毎年1000名以上の新人芸人が誕生し、新ネタ作りやバイトに汗水を流しながら生きていきます。

しかし、ご承知のように、彼らの陰の努力がすべて実を結ぶわけではありません。

なので、僕はこんなふうに生徒に伝えています。

「努力はいつか報われるや、お天道さまがきっと見ているみたいな世界だと美しいけど、現実はそうじゃないよね? 君らを評価する人は、天からすべてを見ているわけじゃないから、こっちから上へ、評価につながるコトを上げていくことが大切だよ」と。

僕の周囲には、一般企業のリーダーポジションの人たちもたくさんいますが、一様に「部下の仕事や成果は、すべて把握できていない」と口を揃えます。

吉本でも、約1000名の新人の活動や成果を、すべて把握している社員さんはいないですし、「M-1の●回戦に進みました」と伝えると、対応がコロッと変わったなんて話もよく耳にします。

このようなことから分かるのは“評価は「時価」であり、一日や一瞬でガラリと変わる”ということ。

それを可能にするには、「私の努力は、お天道さまが見てくれている」というマインドを手放し、「私の努力は、私から伝えてみよう」という思考を採用すること。

もちろん、自分の有能さを自分で伝えるなんて、ちょっと気が引ける、おこがましく感じる、という人もいらっしゃるでしょう。

そんな方は、自分の「成果」は伝えなくていいので、自分の「近況」を伝えていきましょう。

同じ人やモノに対して、単純な接触を繰り返していくと、その対象を好意的に感じていく「ザイアンスの法則」というものがありますが、これは「評価する側」と「評価される側」との関係でも同じ。

シンプルな挨拶やスモールトークを繰り返していくことで、その人に対して好意的な感情が形成されていくのでおススメです。

ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

桝本 壮志/Soushi Masumoto
1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出。

COMPOSITION=古澤誠一郎

TEXT=桝本壮志

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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