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2024.11.06

「無理しないで、逃げる」養老孟司から学ぶ、人生を楽に生きるためのヒント【和田秀樹対談まとめ】

『バカの壁』著者・養老孟司氏と『80歳の壁』著者・和田秀樹氏。記録的な大ヒット本を生んだふたりに共通する人生哲学をまとめてお届け! ※2024年5月掲載記事を再編。

和田×養老対談まとめ

1.養老孟司「人間のことに一生懸命にならない」。『80歳の壁』著者・和田秀樹が唸った“不良患者のススメ”

養老孟司×和田秀樹

和田 僕は養老先生には、一生頭が上がらないんです。僕本当に出来の悪い学生で、臓器とか神経の名前が覚えられない(笑)。でも養老先生は試験の前に「ここを出すぞ」って教えてくださったんですよ。おかげで解剖学の単位が取れて進級もできた。

養老 (笑)。落とすともう1回試験しなきゃいけないでしょ。それはとても面倒くさい。だから教えるんです(笑)。

和田 おかげでスタート地点を生き延びて医者になれました。ところで、今回のテーマが「長生きをより楽しく」なんですが、真っ先に思い浮かんだのが養老先生でした。失礼ながら「老後の見本」みたいな方ですから。

養老 (笑)。

和田 世の中がどんどん窮屈になるなかで、養老先生は今でもタバコを堂々と吸う。そして虫を捕りに世界各地に出かける。とても自由で素敵に見えます。

養老 タバコを吸うのも大変です。ホテルでも決まった場所に閉じこめられる。だけどタバコって「今から吸います」というんじゃない。なんとなく吸うものなんですよ(笑)。

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2.上手に老いるには「嫌な人と付き合わなきゃいい。負担になることは避けたらいい」

和田 養老先生はお母様もお医者さんですか?

養老 そうです。父が戦争中の昭和17年(1942)に亡くなり、母が開業しました。

和田 当時としては珍しいというか先進的で自立されてます。

養老 誰もが生きるのに必死でしたから。先ほど日本の同調圧力の話が出ましたが、僕は無理もないんじゃないかと思うんです。つまり物理的な問題だと。人が住める「可住面積」で人口密度を測ると、鳥取や島根がヨーロッパの平均なんです。

和田 いわゆる過疎地ですね。

養老 はい。日本では過疎と言われる所が、ヨーロッパなら普通なんです。それだけ人が寄り集まっているってことです。こうなると、お互いの顔を見ながら調整しなきゃならないでしょ。誰か一人が違うことしてると迷惑になるからね。そうやって長い間に同調圧力みたいなものになっていったのだと思うんです。

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3.元気に長生きするには、「無理しない。逃げる!」

和田 編集者さんは「養老先生は解剖学の先生だった40代くらいも今もずっと変わらない」って言うけど、それは違うな。若々しかったんですよ。

養老 僕は発育不全なんですよ。発達障害。

和田 解剖学とか基礎医学の先生って変な人が多かったんだけど、養老先生はダントツにおしゃれでした。

養老 僕は現役で大学に入って仲間は年上ばかりでした。卒業してもそういう環境が多くて、若く見られる。東大の教員時代もよく学生と間違われました。教室でプリントを配り始めたら「お前どこからそれ持ってきた」と教授から叱られたりね。

和田 (笑)。

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4.元気の秘訣は、「時々自分を省みて、今の状態は居心地がいいのかを問うこと」

和田 最近は虫を捕りにどちらに行かれたんですか?

養老 屋久島です。

和田 会いたい虫がそこに?

養老 ちょっとマニアックな話になるけど、ヒゲボソゾウムシっていうのがいるんですよ。

和田 ゾウムシ?

養老 そう。ヒゲボソっていう北の虫で南に行くといなくなる。屋久島はその南限に近いんです。そこに1種類いるからその写真を撮りに行ったんです。

和田 会えたんですか?

養老 会えなかった。いるのはわかるんですよ。でもトラップを仕掛けて捕るのは嫌なんだよね。それだと普段どういう所で暮らしてるかわからないから。

和田 生息してる場で捕りたい。

養老 そうそう。昨年ゾウムシの専門家が生け捕りに成功して、食ってる木がわかった。イソノキという常緑樹。だから今回はイソノキばかり見て歩いてました。イソノキの葉を食べるんだけど、背が高い木なので葉も高い所にある。18mの虫網で捕るんだけど見たことないでしょ? バズーカ砲みたいなもん(笑)。僕はそんな長竿を持つ体力がないから若い人に一緒に行ってもらうんです。

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5.「努力したから成果が得られた」ではなく、「いつのまにかうまくいった」がいい 

和田 養老先生は虫捕り。僕が一番楽しいのは映画を撮っている時です。でもこればかりはお金を集めないとできない。それとワインを集めるのも楽しい。欲しいワインを見つけて、購入するのは最高です。だけどこれもお金がかかる。『80歳の壁』がヒットして印税もかなりいただいたのに通帳に残額がない(笑)。

養老 似たようなもんです(笑)。

和田 養老先生はお金に関してはどんな考えですか?

養老 若い時は給料を貰ってたでしょ。僕の口座にお金が入っている。するとね、心配になるんですよ。世の中の誰かがその分、困ってるんじゃないかって。だってお金というのは、政府が日本全体に必要なだけ配っているものでしょ。誰かの所に貯まってたら、誰かの所には行ってない。困ってる人がいるってことですよ。

和田 (笑)。面白い考えです。

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6.「楽に生きる」のが健康なのに、数値に合わせるのが健康だと思わされている

和田 たしかに努力の時代は終わりかもしれません。象徴的なのはAIです。少なくとも勉強では人間がどれだけ頑張ってもAIには勝てない。閃きとかアホなことを思いつくとかなら、AIと違う答えが出せるかもしれませんが。

養老 人工知能という言葉が使われ出した頃に思ったのだけど。「世界には70億も人がいて、70億の脳みそがあるのに、なぜわざわざ人工で作らなくちゃいけないんだ。今あるものをもっと上手に使えばいいのに」と。

和田 確かにそうですね。だけどこうなった以上、後戻りもできないし、歯止めも効かない。養老先生が仰るように、努力が意味をなさない世の中になってくる気がします。

養老 そうでしょうね。

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TEXT=ゲーテ編集部

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