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2024.05.10

元気の秘訣は、「時々自分を省みて、今の状態は居心地がいいのかを問うこと」【養老孟司×和田秀樹④】

『80歳の壁』著者・63歳和田秀樹が、“長生きの真意”に迫る対談連載企画「医者ではなく、大先輩に聞け!」。初回ゲストは解剖学者・86歳養老孟司。『バカの壁』『80歳の壁』。記録的な大ヒット本を生んだ二人に共通する人生哲学とは。話の随所から、楽に生きるためのヒントが飛び出てきます。その第4回。【連載の過去記事はコチラ

養老孟司/Takeshi Yoro
1937年鎌倉市生まれ。東京大学医学部を卒業後、解剖学教室に入る。東京大学大学院医学系研究科基礎医学専攻博士課程を修了。東京大学医学部教授、北里大学教授を歴任。東京大学名誉教授。『ものがわかるということ』など著書多数。

みんなが居心地のいいところにいれば、社会は自然に安定する

和田 最近は虫を捕りにどちらに行かれたんですか?

養老 屋久島です。

和田 会いたい虫がそこに?

養老 ちょっとマニアックな話になるけど、ヒゲボソゾウムシっていうのがいるんですよ。

和田 ゾウムシ?

養老 そう。ヒゲボソっていう北の虫で南に行くといなくなる。屋久島はその南限に近いんです。そこに1種類いるからその写真を撮りに行ったんです。

和田 会えたんですか?

養老 会えなかった。いるのはわかるんですよ。でもトラップを仕掛けて捕るのは嫌なんだよね。それだと普段どういう所で暮らしてるかわからないから。

和田 生息してる場で捕りたい。

養老 そうそう。昨年ゾウムシの専門家が生け捕りに成功して、食ってる木がわかった。イソノキという常緑樹。だから今回はイソノキばかり見て歩いてました。イソノキの葉を食べるんだけど、背が高い木なので葉も高い所にある。18mの虫網で捕るんだけど見たことないでしょ? バズーカ砲みたいなもん(笑)。僕はそんな長竿を持つ体力がないから若い人に一緒に行ってもらうんです。

和田 でも捕れなかった?

養老 残念ながらダメ。だけどなんでもないですよ。また屋久島に行く理由ができた(笑)。

和田 コロナの間は虫捕りには出なかったんですか?

養老 出ませんでしたね。僕はクルマを運転しないからドライバーがいないとダメなんで。でも若い人が「こんな時に年寄りを連れて出歩くわけにはいかない」と遠慮しちゃう。僕は構わず行きたかったんだけど(笑)。

和田 なるほど。養老先生がコロナを怖がって虫を捕らなくなるとは思えなかったので。理由を聞いて納得しました(笑)。

養老 コロナを怖がり大人しくしていたわけじゃない(笑)。

和田 虫捕りは体力的にきつくないですか。やはり好奇心が?

養老 そうです。やる気ですね。

和田 年を取っても、やる気は保ち続けられるものですか。

養老 そうですね。人のことはわかりませんけどね。

和田 やる気の波は?

養老 ありますよ、それは。ただ、本当に虫は多様だから対象はその時々で違うんです。その時に追いたいものを追いかける。選択肢の幅が広いんです。

和田 そういえば宮崎駿さんがアカデミー賞を受賞されました。引退を宣言したけど2年くらいで「どうしても映画を撮りたくなった」と戻ってこられた。やっぱり心から好きなんですね。名誉のためじゃないから、受賞しても一切顔を出さない。情熱が人を動かす。宮崎さんをご存じですか?

養老 はい。何度か対談もしています。

和田 相通じるところは?

養老 似たようなもんですよ。

和田秀樹/Hideki Wada
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。立命館大学生命科学部特任教授を経て、「和田秀樹こころと体のクリニック」院長に。老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。

「好きなことをしたらいい」と言われ戸惑う人へ

和田 周囲に合わせ我慢するのが当たり前になっている人がいます。そうやって50〜60年、生きてきた人に「好きなことをしたら?」とアドバイスしても、「どうしていいかわからない」と言う。そういう人はどうしたらいいですか?

養老 それは僕にはどうしようもないですね(笑)。

和田 まず何をしたら?

養老 時々反省するといいと思います。今の状態は自分にとって居心地がいいのかを問うてみることです。居心地が悪いならそこから離れる。

和田 仰る通りです。

養老 坂口恭平という知り合いも『躁鬱大学』という本の中で、鬱にならないためには「居心地の悪い所から立ち去れ」とアドバイスをしています。僕はそれに近いことを身近な存在から学びました。猫ですよ。猫ってね、家の中の居心地のいい所にしかいないの。だけど現代の人は、自分の居心地のいい場所がわからなくなっている。みんなが居心地のいい場所に収まっていれば、社会なんてひとりでに安定するんじゃないの?

和田 それはそうでしょうね。半分愚痴になるのですが、僕はうかつにも日大常務理事なる役目を引き受けたんです。林真理子先生の推薦で。でも学部長会議で喧嘩して、林先生もその学部長たちから脅されて「辞めてくれない?」と言われ、結局、辞任しました。辞めてからよくよく考えたら、僕としては物凄い居心地が悪かったんですよ。周囲は「やっとまともな職に就いたのにもったいない」とか「我慢しろ」とか言うけど、「やっぱり合わなかったんだ」と気が付く勉強になりました。

養老 居心地のいい・悪いは自分で決めなきゃならないですからね。それは非常に大事だと思います。それが決められなくなった人がいたとしたらアドバイスのしようがないです。

和田 運よく出世した人とかは周囲が持ち上げるから、居心地が悪いことに気付きにくい。得た場所を自ら捨てるのはもったいないと思っちゃうんですね。世俗のルールや価値観も居心地の悪さに気付く邪魔をしているような気がします。

養老 だから時々自分を省みる。嫌だなと感じたらさーっと居なくなる。猫みたいにね。

※5回目に続く

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和田秀樹の「医者ではなく、大先輩に聞け!」

TEXT=大城稔

PHOTOGRAPH=杉田裕一

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