英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第305回。

うどんを啜ったアメリカ人に言った“You are good at slurping.”
You are good at slurping.
日本に住むイギリス人YouTuberのチャンネルを見ていたら、そんなフレーズを見つけました。
英語力0.5の私にはほとんどそのYouTuberの英語は聞き取れませんので、英語字幕を毎回出していて、そこで発見したものです(その字幕さえ早すぎてほとんど追いつけませんし、そもそもゆっくり読んでも意味がわからないことが多いのですが)。
直訳すると「あなたはスラーピングがうまいね」となります。
スラーピングってなんだかわからなかったのですが、映像を見ていたらすぐその意味が想像できました。
Slurping=啜る
そのイギリス人は、日本を訪れたアメリカ人YouTuberをアテンドしていて、居酒屋で2人でうどんを食べていました。
You Know in Japan it’s OK to slurp.
(日本ではスラープしていいんだよ)
と、イギリス人は言ってアメリカ人男性にジェスチャーとともにうどんを啜ることをうながします。
おそらく麺を生まれて初めて啜ったのでしょう、「ズゾズゾ」というぎこちない音とともにうどんはアメリカ人の口の中に吸い込まれていきました。そして、先ほどの“You are good at slurping(スラーピングうまいじゃん!)”というフレーズが出てきたのです。
Slurpとは、「音を立てて何かを飲んだり食べたりする」という動詞だそうです。調べてみたら高校で習うレベルの単語だったので、知っている人にとっては当たり前かもしれません。しかし私はまったくこの単語にピンとこず、一緒にこのチャンネルを見ていた帰国子女も最初は「?」という顔をしていました。
「そもそも西洋の人って啜らないし、あんまり会話に出てくる動詞じゃないんじゃ?」
私とその帰国子女は、そう自分たちの物覚えの悪さを正当化してその場を収めました。
欧米でもラーメンを啜ってよくなる日は来るのか
しかしその後調べてみると、以下のように使われることが多く、よく耳をそばだてていれば日常的に聞かれるフレーズみたいでした。
Don’t slurp your soup.
(スープを音を立てて食べないで)
子供に注意する時なんかに使われるのでしょうか。また欧米のレストランによってはこんなふうにアジア人に注意することもあるんだそうです。
When you eat noodles, be careful not to slurp.
(麺を食べるとき、啜らないように気をつけてね)
郷にいれば郷に従えなので、確かに欧米ではラーメンも啜らない方がいいのでしょう。私もその帰国子女も、ヨーロッパにいた際はラーメンをレンゲにとってから飲み込むという屈辱的な食べ方をしていました。
レンゲには少ししか麺がのらないし、のせている間に冷める……その時の悲しみが込み上げてきて、後日私はひとりYouTube上で「欧米人がラーメンを啜る動画」を検索。そこで「啜った方が風味を感じられるんだね」といって、頑張って啜っている外国人の方を見て、気分を落ち着かせました。
ちなみに、欧米にあるラーメン屋のラーメンはなんだかちょっとぬるかった気がします。これも調べてみると、以前はぬるいラーメンが好まれていたということ、けれど最近はより日本っぽさを求めて熱々のラーメンを出す店が増えているそうです。あともう数年たてば欧米でもラーメンを啜ってよくなる日が来るのかもしれません。