英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第303回。

bumper to bumper=大渋滞
先日、あるイタリアのブランドのパーティに取材で入ることになりました。
港から船を出してパーティするというたいそうゴージャスなもので、出席者はアジアの顧客と、イタリア本国の偉い方たち。アジア各国の人たちがいるので、船上での会話は共通語である英語であろうと覚悟していました。
出航予定時間になったころ、スタッフさんたちが焦り始めます。どうやら招待していたVIPのひとりがまだ到着しないということ。VIPを置いて船を出すことはできないけれど、出航時間も遅らせられない。どうなるのかとハラハラしていたところ、ギリギリの時間に1台のリムジンが到着しました。
I’m so sorry! The traffic was bumper to bumper!
リムジンから降りた、アジアのどこかの富豪の方が、こう流暢な英語で言いながらスタッフさんたちに日本風に頭を下げています。
「バンパー トゥ バンパー? バンパーからバンパーへってこと?」
その日の取材は1日英語で行われることはわかっていましたが、英語ネイティブでない人たちが多いため、「今日のイベント楽しんでいますか?」くらいの取材ならできるだろうとたかをくくっていました。しかし、いきなり何を言っているのかわりません。
こっそりスマホで意味を調べてみたらこういうことでした。
bumper to bumper=大渋滞
つまり、富豪の方は「クルマが大渋滞していた」と、遅れそうになった理由を言っていたようです。
ケンブリッジの英英辞書にはこう説明されています。
with so many cars that are so close that they are almost touching each other.
(ほとんど触れてしまいそうなくらい近くにたくさんのクルマがある)
クルマのバンパーが前のクルマに触れてしまいそうなくらい、たくさんのクルマが連なっている、そんな大渋滞でしょうか。車間距離を取らなさすぎている気もしますが、それくらい「びっちり車があって動けなかった」と言いたい時に使うのでしょう。
別に富豪でなくても、渋滞でバスや自家用車が遅れた時にもさらっと“I’m so sorry! The traffic was bumper to bumper!”と言えたらカッコいいかもしれません。
ちなみに、その日はドレスコードがあり、取材スタッフの我々もドレスコードからそれすぎないよう言われていました。
しかしながら、事前に配られた資料には “Dress code: touch of pink”としか書かれていません。
“touch of pink”を直訳してみれば「ピンクのタッチで」となります。なんとなくどこかにピンクが入っていればいいのでしょうか。少し調べてみると“a touch of〜”で「少しの〜」ともなるので、やっぱり「どこか少しピンクを入れる」ということでいいのかなと解釈しました。
念の為クローゼットを引っ掻き回しましたが、ピンクの服はどこにもなく、「ならピンクのリップにしよう」と思い立ちましたが、下膨れの顔におちょぼ口の私は、ピンクのおてもやんになるだけ。必死で考えて、なんとかピンクのマニキュアだけつけて参加しました。
会場には、スカーフだけピンクという人もいれば、がっつりピンクのドレスを着ている人もいました。「少しの」というよりは「ピンクのタッチで」という方が解釈的には正しかったのかもしれません。こういう場合の正解を知っている方がいたら教えてほしいです。