英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者のお話、第248回。連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは
雪の結晶世代!?とは
最近仕事で20代の方と一緒になることが多々あります。
現在40代の私は、お昼休みや移動中などの隙間時間に彼らと何を話していいかわからなくなることもしょっちゅうです。
「彼氏いるの? とか当然聞いちゃダメだろうしな」
「その髪型いいね、ってもしかしてセクハラになるのか」
「じゃあ、その洋服かわいいね、と声をかけるのも不適切なんだろうか」
などなど悶々と考えた結果、「いや〜最近やたらと目がかすんでさ、眼科行ったら老眼だって」と、つまらない自分語りをするか、「あ、あの猫、かわい〜」など目に入ったものについてコメントするしかなくなっています。自分も20代の頃、先輩の話はなんてつまらないんだろうと思ったことがありますが、それは先輩の気遣いによるものだったのだと、今やっと理解することができました。
「というわけで、下の世代の人と話す時、それなりに気を使ってしまうんだ」
と、オンライン英会話レッスンで同じく40代のイギリス人女性英語教師に話したところ。
「Snowflake generationだね」
英語教師はそう深く頷きました。
Snowflakeとは、雪の結晶のことです。「雪の結晶世代」とはどういうことでしょうか。
辞書を引いてみたところ、コリンズ英語辞典にこう書かれていました。
the generation of people who became adults in or after the 2010s, viewed as being less resilient and more prone to taking offence than previous generations
(2010年以降に大人になった世代で、前の世代に比べて適応力がなく、怒りやすい傾向があると見られている世代)
つまりは、傷つきやすい若い人たちのことを揶揄するスラングだそうです。
雪の結晶はすぐに溶けてしまい、壊れやすいので、センシティブな若い人の心をイメージしてそう呼んでいるのかもしれません。
「イギリスでも同じだ。若い人はSnowflakeだから、話す際にはかなり気を使う」
と英語教師は言っていました。
Snowflake、日本語で言うなら「ガラスのハート」みたいなことでしょうか。
他にも政治的な揶揄としてもSnowflakeは使われるということ、とにかく「あまりに簡単に気分を害す人」と揶揄するスラングの言い方なので、英語力0.5の私はめったやたらに使うべき言葉ではありません。それでもこの言葉から「世界中どこもそれなりに若い人に対して気を使っている」とわかってちょっと安心しました。
20代は誰だって“Snowflake”だ
けれど、そもそも若い人の心というのは、いつの時代も壊れやすいものです。なにも辞書がいうように「2010年以降に大人になった人」に限らないでしょう。誰だって20代の時にはそれなりにガラスのハートでしたし、Snowflakeだったと思います。私だって20代の時は、仕事がつらくて毎日お昼休みに泣きながらオムライスを食べていたことを覚えています。
「恋人の有無なんて絶対聞くな。服装や髪型についても言及NG。仕事については褒める以外はなにも言うな。そうしないとお前の立場も危ういぞ」
英語教師はそう続けました。かなり強い口調で言うので、若い人に不適切なことを言って、上層部から怒られた経験があるのかもしれません。
その英語教師の言葉を胸に刻みつつ、Snowflakeだった自分の20代の頃を思い出しつつ。私はこれからも、つまらなくも無難な話だけをしていこうと新たに決意を固めた次第です。
連載【英語力0.5レッスン「人のEnglishを笑うな」】とは……
英語力ゼロのまま渡英、行けばなんとかなると思いつつなんともならなかった2年間のイギリス生活。帰国後はせっかく覚えたいくつかの英単語も忘れ去り、それでも時々は英語と格闘してみる現在、40歳。
「その英語でよく外国に行ったね」「めちゃくちゃカタカナ英語だね」と、なぜか日本人に笑われながらも、覚えたフレーズの数々。いつかはうまくなりたいから、恥を忍んで今日もブロークンイングリッシュ。下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。人のイングリッシュを笑うな。