HEALTH

2025.09.14

「血糖値スパイク」はなぜ危険? 知られざる血糖値の“波”が招く健康リスク【堀江貴文】

カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第46回は「血糖値スパイク」。血糖値スパイクとは、血糖値が乱高下する状態をさす言葉。前回登場していただいた綾部市立病院の大坂貴史先生と血糖値スパイクの仕組み、歴史、血糖の“波”を測定する最新事情まで、身体のサインと予防のヒントを探る。

堀江貴文連載第46回

血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」に注目が集まるが、その有害性はいまだ検証段階にあり。

堀江貴文(以下堀江) 前回の対談後、血糖値をリアルタイムで測れるデバイスを20日間試したんですよ。

大坂貴史先生(以下大坂) CGM(Continuous Glucose Monitoring)ですね。24時間連続で血糖値を測ることができるため、自分の血糖値の変化をリアルに“見える化”できるデバイスです。いかがでしたか?

堀江 お米を食べたら、めっちゃ上がりました。

大坂 どれくらい上がりましたか?

堀江 普段は100(㎎/dL)から110ぐらいを行ったりきたりしているんですけれど、お昼に牛丼とかを食べると190とかまで上がるんですよ。下手したら200いっちゃうくらい。

大坂 結構上がりましたね。

堀江 実際に糖尿病になる過程において、「血糖値スパイク」がそれを引き起こすんじゃないかみたいに言われていますよね?

大坂 はい。血糖値スパイクとは食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する「数値の乱高下」の状態をさします。この血糖値スパイクを繰り返すと、血管が傷つきやすくなり、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中などの合併症を引き起こすリスクが高くなると言われています。実は血糖値に関する研究って、ここ20〜30年で進んだ、比較的新しい話なんです。

堀江 新しいですね。

大坂 もともと血糖値が高いのがよくないことはわかっていたのですが、1998年に論文で「血糖値を下げると合併症が抑えられる」ことが発表され、それから血糖値を下げる研究が本格的にスタートしました。

堀江 なるほど。

大坂 ですが、その後研究が進むなかで、「血糖値を下げすぎると逆に心筋梗塞、脳梗塞が起きやすくなる」ということもわかってきました。その当時、糖尿病の治療薬というのはインスリンしかなかったのですが、インスリンを使うことで低血糖状態になるケースが増え、血糖値の変動も大きくなり、「この“変動”が悪いのではないか」という話が始まったのです。これが、血糖値スパイクの最初の起こりだと言われています。

堀江 血糖値は高すぎも低すぎもよくなく、“正常に近い値をなるべく上下させないで保つ”のが、現状としては理想ということになるんですか?

大坂 実は血糖値の変動自体が悪いのか、体質など、変動するような背景が悪いのかについては、まだわかっていません。例えば血糖値の変動を抑える薬を使ったり、低糖質の食事で変動を少なくしたら合併症を防げるか? と問われると、その臨床的な意義についてはまだはっきりと証明されていないのです。

今回、堀江さんが試した血糖の“波”が可視化できるデバイスは、ここ10年ほどで誕生した新しいツールです。血糖の変動と、それがどこまで影響を及ぼすのかを探る貴重なツールであり、今、その関係性を見極めようとデータを収集している最中なのです。

堀江 ところで糖尿病に移行するプロセスとして、インスリンが出にくくなることが関係しているんですよね?

大坂 最初にやってくるのは、インスリンの分泌が“遅れる”ことです。食事をすると胃や腸が反応し、膵臓が「インスリンを出すぞ」と準備を始めるのですが、糖尿病患者は膵臓にスイッチが入ってインスリンが出るまでのスピードが遅れる。つまり、血糖値が上がるタイミングとインスリンが出るスピードのズレが生じているため、その間に血糖値がドンと上がってしまう。“血糖の抑えこみ”が間に合っていない状態なのです。

堀江 となると、食後すぐと、時間が経過して測った血糖値では誤差が出ますね。

大坂 食後1〜2時間経過しても血糖値が高いままの状態というのがポイントですね。さらに、インスリンの“効きが悪い”と血糖値は下がりません。でも、下げようとよりパワーを使うという悪循環になっているのです。

堀江 身体の中ではどうなっているんですか?

大坂 糖尿病初期の方って、血糖値が高く、インスリンの量もすごく多いんです。膵臓が頑張っている状態ですね。血糖値が上がる分、インスリンもたくさん出るのですが、ある一線を超えると「もう、ちょっと無理」という感じで、出が悪くなってしまう。

堀江 インスリンが効かなくなるということですね。

大坂 いろいろなパターンがあるのですが、著しい高血糖の場合は、「糖毒性」といって、血糖値が高いことそのものがインスリンの効きを悪くしたり、インスリンの分泌を落としたりすると言われています。ですから、血糖値が上がる前の段階で、ある程度対処しておくことが必要になるわけです。

堀江 最初に出てくる兆候は「食後高血糖」になりますか。

大坂 はい。それを見つけた段階で予防するというのは、すごく大事ですね。

堀江 前回、血糖値を下げるホルモンはインスリンしかなくて、逆に上げるホルモンは何種類かあるという話をしました。

大坂 糖尿病患者は血糖値が高いため「血糖値を上げるホルモン=悪者」にされがちなのですが、本来、身体にとって血糖値を上げるホルモンも重要な役割を持っています。ただし、2型糖尿病の人は、血糖値を上げるホルモンが異常に増えている。つまり、過剰に出てしまっているという状態です。

堀江 ちなみに食後高血糖を抑える薬は何ですか?

大坂 薬では「α-グルコシダーゼ阻害薬」になります。この薬は糖を分解する酵素をブロックするので、糖の吸収が悪くなり、結果、血糖値の上がりを緩やかにすることができます。糖尿病患者および糖尿病予備群、正確には「境界型糖尿病」の人にも使える薬となります。

堀江 予備群の人が使うことで糖尿病になるのを防ぐと。

大坂 ただ、朝昼晩の3回、食事の前に飲まなければならないので面倒ですが(笑)。

堀江 血糖値を知るって大事。次回は数字を見ながら、詳しくお話をさせてください。

大坂貴史氏

大坂貴史/Takafumi Osaka
1984年大阪府生まれ。綾部市立病院内分泌・糖尿病内科部長。京都府立医科大学卒業後、京都第二赤十字病院に勤務。その後、京都府立医科大学大学院博士課程で医学博士を取得し現職に。糖尿病と筋肉、糖尿病運動療法が専門。綾部市立病院のYouTubeチャンネル、「筋肉博士」としてXでも医療情報を発信する。

堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。

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