カラダは究極の資本であり、投資先である。そう断言する堀江貴文氏が、最先端の医療と美容情報を惜しげもなく伝授する本連載。第40回は、最新のコロナウイルスワクチン「レプリコンワクチン」について。2024年10月から接種が可能になった待望の国産承認ワクチンだが、医療情報より先に危険性を煽る投稿がSNS界隈で増加したために、不安を感じた人も多いはず。米国内科専門医でワクチンにも詳しい山田悠史先生からエビデンスに基づいた正しい情報を得よう。

mRNAを増やすところまでコーディングし実用化したのは、ものすごい技術だと思う
堀江貴文(以下堀江) レプリコンワクチンは新型コロナウイルス感染症に対する次世代mRNAワクチンです。米国内科専門医の山田悠史先生に特徴や効果をお聞きします。先生は現在、ニューヨークのマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事されています。アメリカの高齢者医療では、予防医療も行うそうですね。
山田悠史(以下山田) はい。予防接種の管理、がん検診なども実施します。他に、米国老年医学会のワクチン部門の委員もしています。
堀江 2024年から話題だったレプリコンワクチンは、日本のMeiji Seika ファルマが製造販売の承認を世界で初めて取得して、2024年10月から国内で接種が始まっています。新型コロナのパンデミックの時は、ワクチンの国内製造ができなかったため、輸入に頼らざるを得ませんでした。国家安全保障の観点からするとそれはマズいということで、国がワクチン開発の支援を始めたことで、いち早く承認されたという背景があります。
ちなみに、レプリコンとは「レプリカ(複製)」という言葉から派生した分子生物学用語で「連続的にコピーされたDNA、もしくはRNA」を意味します。パンデミックの時は「ワクチンの輸入が遅い、数は足りるのか?」って国中で騒いでいたのに、世界に先駆けて国産のレプリコンワクチンができたら、「他国は使ってないのに大丈夫なのか」とか「危険だ」とか言って不安がるのが不思議だし、陰謀論も流行ったりしましたね。まずは、レプリコンワクチンの基本を教えてください。
山田 レプリコンワクチンを含めて、コロナウイルス感染症で使われてきたのがmRNAワクチンです。接種すると“タンパク質のレシピ”であるm(メッセンジャー)RNAが細胞の中に入り、そのレシピをもとに細胞内で「抗原(コロナウイルスの場合はスパイクタンパク質。以下同)」を作ります。この「抗原」に免疫システムが働いてトレーニングができるので、本物のウイルスが体内に侵入した時に免疫が働きやすくなってウイルスを迅速に駆除する、という仕組みで身体を守るのです。
レプリコンワクチンには体内でmRNAそのものを増やせる機能があるので、体内で十分な抗原が作られます。そのため、少量のワクチンで今までと同等の効果を得られるといわれていて、副反応もマイルドになると考えられています。mRNAが体内で増幅するなら効果が長く続きワクチンの接種回数が減らせる、または間隔を長くできる可能性があるということです。
堀江 予防効果はどうですか?
山田 18歳以上の成人1万6000人を対象に行った試験では、COVID19に対して56.6%の発症予防効果が、95.3%の重症化予防効果がありました(※)。初回接種後の副反応はファイザーのワクチン(コミナティ)と同等か、やや頻度が低いかもしれないと報告されています。また、追加接種に関しても、免疫反応がどの程度起きているかの値は、ファイザーのワクチンに劣っていないと示されていますし、接種後90日時点で抗体の値が高いまま維持されていると報告されています。
堀江 接種量が少なく済んで副反応が軽く、効果の持続が長いならいいことずくめですね。懸念があるとすれば、どんなことが考えられますか。
山田 今後、10万人、20万人と接種数が増えるなかで、ごくまれな副反応が見つかる可能性があります。ただし、コロナウイルスのスパイクタンパク質ができるのは他のmRNAワクチンと同じなので、副反応は想像の範囲内になると思います。他には免疫が働かない、免疫抑制剤などを服用している方については免疫の働き方が違うので、さらにデータを蓄積していく必要はあると思います。
そして、これも理論上の懸念ですが、妊婦さんへの接種において胎児への影響はないのかということ。今までの研究からそれほどの懸念はないかもしれませんが、しっかり確認するプロセスは大事だと思います。
懸念があるとすればこのあたりですが、レプリコンワクチンは臨床試験で有効性と安全性が確認されているものです。一時期話題になった、シェディング(体内で作られたタンパク質が呼気や汗を通じて体外へ放出されるという説)や遺伝子への影響(DNAを変化させるという説)の懸念には根拠がなく、実際にそうした心配があるわけではありません。レプリコンワクチンは感染症だけでなく、今後はがん治療など、別の医学分野にも応用される期待が持たれている技術なのです。
堀江 短期間で新しい機能を持ったmRNAワクチンを開発できたのはすごいですよね。mRNAを細胞内に取りこみやすくするための遺伝子の改変などは、かなりプログラミングに似ていて驚きました。
山田 パンデミック前から期待されていた技術ながら、mRNA自体が壊れやすいのでなかなか効果を発揮できず、モノにならなかったんです。
堀江 その障壁を越えてきたわけじゃないですか。スパイクタンパク質になった時も、本物のウイルスよりも強い構造体になるように遺伝子改変もしていますし、いやあ、よく工夫されてるなって思いました。細胞内で自己増殖っていうか、mRNAを増やすところまでちゃんとコーディングしてレプリコンワクチンを実用化したっていうのは、ものすごい技術ですよね。
山田 ウイルスが使っている“ワザ”を盗んで、活用したような技術ですね。
堀江 パンデミックも悪いことばっかりじゃなかったなって思います。
山田 本当にそうですね。開発の技術が一気に着火して、加速したような感覚です。パンデミックによる、怪我の功名だと思います。
堀江 レプリコンワクチンはいい技術なのに、日本では陰謀論やデマ情報のほうが目立ってしまいましたよね。このあたりの話については、次号でさらに詳しく山田先生と議論していきたいと思います。
※Nat Commun・2024 May 14;15(1):4081.

山田悠史/Yuji Yamada
1983年岐阜県生まれ。慶應義塾大学医学部を卒業後、全国各地の病院の総合診療科に勤務。2015年より、ニューヨークのマウントサイナイ大学関連病院の内科に勤務、米国内科専門医を取得。現在はマウントサイナイ医科大学老年医学科で高齢者診療に従事する。医療関連の著書も手がけ、今年6月に新刊が発売予定。
堀江貴文/Takafumi Horie
1972年福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジン開発や、会員制オンラインサロン運営など、さまざまな分野で活動する。予防医療普及協会理事。著書も多数。本連載をまとめた書籍『金を使うならカラダに使え。』が好評発売中。
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