友人宅に急にお呼ばれした場合やちょっとしたプレゼント、自宅でのカジュアルなランチ会などの際に、近所のスーパーやデパートなどで5,000〜1万円で買える“ちょっといいワイン”を知っておくと大変便利なもの。おいしいのは絶対条件で、ちょっと蘊蓄も語れると最高ですよね。そんな「街中で買える、1万円以下の“お宝ワイン”」を、年間1000種類近いワインをテイスティングし、つねにおいしいワインを探し求めているワインブロガー・ヒマワイン氏がご紹介。

南アフリカの“あり得ない”ワイン
この記事を読んでくださる方の多くはビジネスパーソンかと思います。上司でも社長でもいいのですが、「企画を通すべき人」をイメージしてください。
彼または彼女に新商品の企画をプレゼンする際、「新商品の企画案です! 原材料の調達は年内。製品化は来年。販売は5年後です!」と言ったらどうなるでしょうか。あまりにもありえなさすぎて怒られるを通り越して呆れるも通過し、むしろ心配されそうですが、今回紹介するのは“そんなワイン”です。
南アフリカの生産者、ドメーヌ デ・デューの「クラウディア・ブリュット MCC 2018」は、一次発酵後のワインをボトルに移して瓶内で二次発酵させたあと、そのまま60ヵ月熟成。その後、ボトル内の澱を取り除いたあと、さらに最大12か月熟成させてからリリースさせるというワイン。「入金は早く、出金は遅く」はキャッシュフローの鉄則であります。しかるに「クラウディア・ブリュット MCC 2018」の場合、ぶどうの世話をして収穫し、ワインにし、熟成させ……とやってる間、入金はゼロ。一方、人件費だの保管費だの資材費だのといった出金は続きます(普通は続くと思います)。
「入金は早く、出金は遅く」どころか、「入金は限りなく遅く、出金は普通」状態。入金は5年後、6年後なのに、支払いだけは月末締めの翌月末払い状態(正確なところはわかりませんが)。
それでも長期熟成を経ないとリリースさせないのは、それだけワインの質に妥協がないからでしょう。それ以外に理由が考えられないんです。だって価格も4,250円だし。同じくらいの期間熟成させたシャンパンだったら、その3倍の価格でも買えない気がします。5年寝かせて価格は限りなくリーズナブル。品質と価格に対するある種の狂気に近いこだわりを感じます。
このワインを輸入しているのが、東京・水天宮駅近くにショップを構えるアフリカワイン専門店・アフリカーの運営会社(ここのオンラインストアで今回のワインは購入しました)。小さいショップながら、独自の目利きでこういう“あり得ない”ワインを見つけて来たという事実が、またお宝感を増します。
ちなみに、ワイン名にある「MCC」とはメソッド・キャップクラシックの略称で、南アフリカにおいてシャンパンと同じ造りをしているワインのこと。この「クラウディア・ブリュット」も、シャンパンの代表的な品種であるシャルドネとピノ・ノワールを、80:20の割合で使用しています。
2018年に収穫したそれらのぶどうを使い、2026年の今ようやく日本で売られているこのワイン、果たしてどんな味わいなのでしょうか。いざ、飲んでみましょう。
グラスに注ぐと、長い熟成を経ていることを証明するように、りんごの蜜を思わせる濃いイエロー。グラスの底からは細かい泡がこんこんと湧き出しています。
そしてなにしろ香りがいい。熟成由来のトーストのような香ばしい香り、ハーブのような爽やかさ、ハチミツみたいな甘やかさも感じられます。この香りで香水作ってくれませんかねという香り。嗅ぎたいを通り越して身にまといたい。
味わいもやはりリンゴ感があります。リンゴというかアップルパイ。熱々のそれのようなニュアンスと、冷たいレモンのような酸味が違和感なく同居しています。60ヵ月+熟成させた甲斐がある。価格に対して異様にうまいです。
ちなみに、ドメーヌ・デ・デューには「ロゼ・オブ・シャロン」という92ヵ月熟成というさらにぶっ飛んだ熟成期間を経たワインもあるのですが、こちらは現在売り切れ。「クラウディア・ブリュット MCC 2018」は販売中。
夏の終わりにキリリと本格スパークリングワインを楽しみたい方に、強くおすすめの1本です。
ヒマワイン
年間約1000種類のワインを飲み、「ヒマだしワインのむ。」というブログを運営するワインブロガー。高いワインも安いワインも、地球上で造られるすべてのワインが好き。

