ミシュランガイドが認めた屋台を目指し、台湾の夜市を巡る弾丸ツアー、台北24時間食いだおれ旅の記事をまとめてお届け。 ※2024年4月号掲載記事を再編。
1.ミシュランが認めた屋台街「士林夜市」
旅行会社が実施する「海外で行きたい場所」のアンケート調査では、ハワイやヨーロッパを抜き上位にランクイン。これまでに仕事やプライベートで何度も訪台してきたが、今回は、台湾の文化そのものでもある“夜市”にフォーカスした弾丸ツアーを決行。それだけでは物足りないので、ミシュランガイドが認めた屋台を巡ることに。
編集部からの“お題”は、東京からの移動を含め24時間以内で、行くべき夜市の屋台をできるだけ多く回ること。台北在住歴10年、案内人兼カメラマンを買って出てくれた榊原有一さんによれば「台湾の人はほぼ自宅で料理を作らないので家族や友人、恋人と夜市で食事をすることが日常」と言う。
夜市のほとんどは夕方からの営業だが“台北最大規模”の士林夜市には、早くから開く店も。春節を間近に控えた台北松山空港に16時前に到着し、その足でタクシーに乗りこみ、まずは薬膳スープが有名な「海友十全排骨(ハイヨースーチェンパイグー)」へ。
店先の寸胴を覗きこむと、黒いスープがぐつぐつと煮えたぎっている。「イチオシはとんこつ薬膳だそうです」と榊原さんに言われるままに110元を払うと紙製カップに黒いスープがなみなみと注がれる。漢方特有の甘い香りに包まれながら、ひと口すすると思ったよりもクセが少なく、飲むほどに身体の芯から温まるような感覚に。
2.台湾グルメの見本図鑑「寧夏夜市」
コンビニでビールを買いたい欲求を抑えながら、次の目的地である寧夏夜市へ。スープと炭水化物のWコンボで、すでに腹5分目。
士林夜市から寧夏夜市は混雑具合にもよるが、タクシーで約15分程度。士林よりも規模は小さいが、平日の夜でも多くの人で賑わっており、祭り好きであれば血が騒がずにいられない。
「台湾グルメの見本図鑑のようにいろいろな店がありますが、ミシュラン掲載店ならばまずはここです」と榊原さんに連れられ、人混みをかき分けるように「方家鷄肉飯(フンジァジーローファン)」へ。日本語メニューはあるものの、ぼんやり待っていても注文を取ってくれるわけではないので、列に並ぶ前に席を確保する。
注文して待つこと5分で運ばれてきた鷄肉飯は、ボイルした鶏肉を割き、白米にたっぷりとのせて特製醤油ダレをかけたもの。胸肉はしっとり、香ばしいタレにご飯がすすむ。別に注文した冬瓜と骨つき豚肉、ハマグリの塩味スープとの相性も抜群で、毎日食べても飽きない料理とはこういうものなのだとしみじみ。
3.ローカルでディープな穴場「南機場夜市」
「南機場はもともと飛行場があった場所で、夜市のなかでもディープな穴場」という前情報どおり、南機場夜市周辺はまるで映画のセットのような街並み。’60年代に建てられたという公営住宅を眺めていると、タイムスリップしたような気分になる。ローカルしか行きにくい場所にあるためか、寧夏夜市(ニンシャーイェスー)ほどの熱気はないものの情緒的な雰囲気に包まれ、台湾の原風景ここにありといった感じだ。
ミシュラン選定店以外にも餃子や胡椒の人気店があるが、今回は“しばり”があるため、21時半閉店の「臭老闆(チョウラオバン)」へと急行。ここで人気の臭豆腐は、台湾で愛される発酵食で、その独特な匂いから外国人には苦手といわれることの多い“鼻つまみもの”だ。店の前まで重い腹と足を引きずりながら行ってみると、意外なことにあの刺激臭があまり感じられない。
席に着き、小辛の臭豆腐を注文。ここでは普通から激辛まで6段階の辛さを選ぶことができるのだ。一般的な臭豆腐より匂いがマイルドな理由を尋ねると「美味しいのは臭わない!」という非科学的な回答だったが、よくよく聞けば、ここでは豆腐を揚げるのではなく蒸しているため、食べやすいのだそう。
4.必食の人気夜市「饒河街夜市」
そしてラストは南機場夜市から10kmほど離れた饒河街観光夜市へ。生活雑貨や衣料品店、ゲームセンターまで密集する大人気の夜市だ。
道が大渋滞していたため、到着したのは22時近かったが、ゲート近くの「福州世祖胡椒餅(フージョースーズーフージャオピン)」は長蛇の列。オレンジ色の揃いのユニフォームを着たスタッフがみな忙しそうに、胡椒餅の皮を練ったり、餡を包んだり、銅鍋に貼りつけて焼いたりしている。
胡椒餅といえば、基隆(台北からクルマで30〜40分)の夜市で食べたのが夢に出てくる美味しさだったのを思いだす。ミシュランも推す、こちらの味はいかに!? 手渡された熱々の胡椒餅を頬張ると、パリパリと香ばしい生地の中から肉の旨みと胡椒の香りがじゅわーっと溢れだす。