絶品韓国焼肉を食べ尽くす、ソウル1泊2日食いだおれ旅の記事をまとめてお届け。 ※2024年4月号掲載記事を再編。
1.ごま油ダレで食べるドラム缶焼肉「明洞ソソカルビ」
“沼る”とは、物事に夢中になることを指す新語だが、韓国は沼る要素が実に多い。韓ドラ沼にK-POP沼、美容沼、カジノ沼など一度ハマったが最後、なかなかそこから抜けだすことは難しい。
そして、食いしん坊にとっては魅惑的なグルメ沼であり、とりわけ肉好きにとっては地上のパラダイス。毎月、渡韓をしたとしても到底コンプリートすることはできないと思っていたところに「週末の1泊2日で6軒以上の韓国の焼肉を食べ尽くす」という人生のご褒美のような企画が。
韓国出身で、ソウルの焼肉事情にも精通し、現在は京都を拠点に全国を食べ歩くキム・アヨンさんを口説き落とし、いざ、ディープな店限定の弾丸焼肉ツアーへ。
金浦国際空港に降り立ったこの日の気温はマイナス9度と、さすがに身にこたえる寒さだ。さっそく向かったのは「明洞(ミョンドン)ソソカルビ」。
ドラム缶の焼き台でオモニに牛カルビを焼いてもらい暖を取る。焼きあがった肉はごま油をたっぷりつけて。
2.聖水洞カルビ通りの人気店「大成カルビ」
1軒目の「明洞ソソカルビ」からクルマで移動すること20分。ソウルにはさまざまなエリアにタッカンマリやユッケなどの店が密集する“うまいもの横丁”が点在しているが「大成カルビ」がある周辺は、聖水洞(ソンスドン)カルビ通りとして知られているという。
最近はお洒落なカフェやアパレルショップが続々とオープンしている聖水洞は、昔は多くの工場が集まる工業地帯で、’70年代には靴産業で栄えた場所。
店は土曜日は通しで営業しているとあり、忙しそう。
3.韓国女優も虜、骨つきスペアリブの店「シンガネワンコ トゥンカルビ」
センチメンタルな気分と胃袋がふくらむ気配をかき消すように3軒目の「シンガネワンコ トゥンカルビ」へ。ここは案内人のキムさんも学生時代によく通っていたという骨つきスペアリブの店。
「遅くまで営業しているので、散々飲んだあとに友達と来ていました。トゥンカルビとは豚肉の部位の名前で、網の上で一気に焼いてから歯で刮(そ)ぐようにして食べるんです」。
韓国の焼肉店では、自動的にパンチャンという惣菜が出てくることが多い。それをつまみながらビールや焼酎を飲み、肉を焼く幸せ。
4.絶品豚ハラミ焼肉「味カルメギサル専門」
「まだまだ行きますよ」とクルマに押しこめられ、向かったのは、1987年に創業したという「味カルメギサル専門」。細い路地には、カルメギサルという豚ハラミが売りの店がずらりと並ぶが、そのなかでも肉質と味つけがいいと評判。
中央に向かって傾斜がついた網で焼かれる豚ハラミはむっちり軟らかくサービスの豚皮も弾力があって美味。
5.ソウルで一番人気の豚焼肉店「山清炭火ガーデン」
1日目の最後にやってきたのは、明洞に近い乙支路(ウルチロ)に2023年9月に2号店を出した「山清炭火ガーデン」。実は、今回の弾丸焼肉ツアーで一番楽しみにしていた店だ。
到着した20時には空席待ちの行列ができていたが、キムさんが事前に取材のアポイントを取っておいてくれたおかげで、スムーズに入店。役得万歳!
今ソウルでもっとも人気がある焼肉店のひとつと聞いていたが、広々とした店内は大賑わいで、テーブルのあちこちから「コンペ(乾杯)」と楽しそうな声が聞こえる。4軒回って山ほど肉を食べたはずなのに、期待と食欲がむくむく湧いてくる。
日本の囲炉裏のように四角にくり抜いたテーブルに炭がくべられると、パンチャンがどんどん運ばれてきて、皿に盛られた迫力満点の皮つきサムギョプサルが登場。たっぷりのワケギと一緒に網の上に載せられたのは、タチウオとコハダの内臓でつくった自家製の塩辛ソース。肉につけて食べるとヤミツキになると聞き、いてもたってもいられない気持ちになる。
6.熟成豚肉ブームの火付け役「高度食 麻浦店」
韓国弾丸焼肉ツアー2日目。二日酔い気味の頭を抱え、南大門で朝カルグクス。それにしても韓国のオモニは働きものだなと思いながら、クルマで麻浦エリアの「高度食」へ。
ソウルでは今、熟成豚肉ブームだというが、その火つけ役となったのがこの店。済州(チェジュ)島の高山地で育った豚を店内の熟成庫でエイジングし、旨みが凝縮された食べごろの肉を提供している。
7.メディア初登場、優しさ溢れる“オモニの味”「プイルカルビ」
ソウルの弾丸焼肉ツアーもいよいよラスト。最後は、これまでメディア取材をすべて断ってきたという「プイルカルビ」で胃袋と時間が許す限り“肉欲”に溺れることに。
やさしい笑顔で迎えてくれたオモニが店名の意味は「富と仕事」と教えてくれる。6人きょうだいの長女として家計を支えるために寝る間も惜しんで働き、33年前に豚焼肉の店をオープン。客席に座り、肉を焼きながら「人生の悩みや恋愛相談にものるわよ」と微笑む。
釡山の醤油をベースにキウイや梨、パイナップルといった果物を使ったもみだれを絡め、肉を焼きながら「商売は嘘をついたらダメ。初心を忘れず、手を抜かず。いつでもやさしい気持ちでお客さんと向き合うことが大切」というオモニの言葉に耳を傾けながら韓国の人情に触れた思いに。