充実した人生を送るには、時にはノリと勢いも必要。財布とパスポートと旺盛な食欲(と屈強な胃袋)だけ持っていざ、ディープ感満載の美食のアジア弾丸ツアーへ。今回は台北往復24時間食いだおれ旅、1エリア目の「士林夜市(スーリンイェスー)」を紹介。【特集 エクストリーム旅】
往復24時間で台北夜市の屋台を巡る
旅行会社が実施する「海外で行きたい場所」のアンケート調査では、ハワイやヨーロッパを抜き上位にランクイン。これまでに仕事やプライベートで何度も訪台してきたが、今回は、台湾の文化そのものでもある“夜市”にフォーカスした弾丸ツアーを決行。それだけでは物足りないので、ミシュランガイドが認めた屋台を巡ることに。
編集部からの“お題”は、東京からの移動を含め24時間以内で、行くべき夜市の屋台をできるだけ多く回ること。台北在住歴10年、案内人兼カメラマンを買って出てくれた榊原有一さんによれば「台湾の人はほぼ自宅で料理を作らないので家族や友人、恋人と夜市で食事をすることが日常」と言う。
台北最大の夜市から弾丸旅はスタート!
夜市のほとんどは夕方からの営業だが“台北最大規模”の士林夜市には、早くから開く店も。春節を間近に控えた台北松山空港に16時前に到着し、その足でタクシーに乗りこみ、まずは薬膳スープが有名な「海友十全排骨(ハイヨースーチェンパイグー)」へ。
店先の寸胴を覗きこむと、黒いスープがぐつぐつと煮えたぎっている。「イチオシはとんこつ薬膳だそうです」と榊原さんに言われるままに110元を払うと紙製カップに黒いスープがなみなみと注がれる。漢方特有の甘い香りに包まれながら、ひと口すすると思ったよりもクセが少なく、飲むほどに身体の芯から温まるような感覚に。
老板(ラオパン)[台湾で店主のこと]が「うちのスープは精がつくので、デートの前にぴったりだよ」と嬉しそうに囁く。
ミシュラン認定の味にひたすら納得
活力が湧いたところで、次は土地の護り神を祀る“廟(ミャオ)”の横でほわほわと湯気を立てている「阿輝麺線(アーホイミェンシェン)」へ。麺線とは、鰹ベースの出汁で煮こんだ素麺のことで、とろみのあるスープは辛さの調整も可能だそう。
歩いて2分弱の場所に座って食べることができる支店もあるので、腰を落ち着けて味わいたい場合はぜひ、そちらへ。
ミシュランキャラクターのビバンダムをプリントしたユニフォームを着たスタッフの女性に見送られ、空を見上げると建設中の高層ビルが目に入る。士林地区は現在、再開発の真っ只中だそうで台北の人の暮らしが垣間見える風景がいつまでも残ることを祈らずにはいられない。
「のんびりしていたら今日中に他の夜市を回れないですよ」と榊原さんに急かされ、彼も好きだという「好朋友麻辣涼麺(ハオポンヨーマーラーリャンメン)」へ。ここは、レモン汁やにんにくなどを合わせたまろやかなゴマだれと中華麺を混ぜて食べる涼麺の店。
バイクで颯爽と店前に乗りつけた客が「ここのはすごく美味しいの」と教えてくれる。聞けば、1日に100㎏の麺を使うことも珍しくない人気ぶりで、ピリッとした辛さが後を引く美味しさ。ミシュラン認定も納得。
【1エリア目】17:00|士林夜市
住所:台北市士林區基河路101號
営業時間・定休日:15:30~24:00(店によって異なる)
旅人・小寺慶子
肉と酒を糧に生きる肉食系ライター。強靭な胃袋とフットワークの軽さを武器に国内外を食べ歩く。旅先では「郷に入れば郷に従う」のがモットー。
この記事はGOETHE 2024年4月号「総力特集:エクストリーム旅」に掲載。▶︎▶︎購入はこちら