39歳で5大会連続ワールドカップ出場を果たしたDF長友佑都(FC東京)。8年以上共闘した、森保一監督のことを中心にインタビューを行った。1回目。

スタメンから招集外、選出されてもベンチ外…
長友佑都は森保一監督に凄みを覚えると言う。
「とにかくピンチのときに動じない。そう見せているだけかもしれませんが、どんなときも何も態度が変わらない。選手に対する態度もそうです。どんな場面になっても森保さんは変わりませんでした」
国際大会では、一瞬のミスが命取りとなり、予期せぬアクシデントが次々と襲いかかる。結果が出ずメディアから厳しい批判の矢面に立たされることも日常茶飯事。しかし、森保監督はどんなピンチでも、激しいバッシングを受けても、揺るがなかったという。その森保監督に長友は「すごみ」を感じていた。
では森保監督の長友に対する態度はどうだったか。
2018年から2022年カタールワールドカップまでの間、森保監督は判で押したように長友を先発させた。当時はサイドバックの長友の攻撃参加が戦術の一つだったが、攻め上がった背後をしばしば相手に狙われ、長友への非難が度々起きた。
そのとき、もっとも熱心に長友を擁護していたのは森保監督だった。そして2022年カタールワールドカップでも全試合でスターティングメンバーに長友の名前を書き込んでいた。
ところが、カタールから帰国すると森保監督は長友を招集しなくなった。2024年3月に約1年3カ月ぶりに招集したもののベンチ外。長友はスタンドからチームメイトを鼓舞するしかなかった。その後も招集はされるもののベンチ外が続く。
長友がやっと出場機会を得たのは2025年7月。約2年7カ月ぶりだった。ただしポジションはサイドバックではなく、センターバック。国内でプレーする選手だけで構成された日本代表で、相手は実力差のある中国と、長友の実績からすれば「役不足」ともいえる起用だった。
その後も2026年北中米ワールドカップのメンバー発表までに長友がピッチに立てたのは1試合だけ。ワールドカップ4大会連続で全試合の先発だった名手に対して、屈辱的ではないかという扱いだった。
なぜ、日本代表に不満分子が出てこなかったのか
それでも森保監督は2026年北中米ワールドカップのメンバーリストに長友を加えた。見方によっては、「森保監督がベテラン選手に自分の権力を見せつけて、反抗させないようにしてからチームに入れた」ということになるかもしれない。
チームの「闇」はしばしばそういう屈辱的な扱いを受けた選手から明かされる。起用されない選手が不満を溜め込み、チーム内に不協和音を生じさせることはある種「常識」とさえ言える。ましてや、各クラブで主役を張るエゴの強い選手たちが集う代表チームにおいて、全員のモチベーションを束ねることは至難の業だ。
ここ数年の長友はそうなってもおかしくない状況だった。だが長友は、森保監督の率いるチームにおいて、その「常識」は通用しないと断言する。
「普通だったら起用されない選手には不満があります。試合に出ていない選手の心の中には『自分を使えよ』と、基本的に監督のことをあまりよく思わないというか、悔しさがあります。ところが、僕が知っている限り、森保監督を悪く言うような選手はいなかったですね。それは本当にすごいことだと思いますよ。なかなかないことです」
長友が強調するのは、森保監督の「すべての選手のことを常にしっかりと考えてくれる。愛がある」という態度だった。選ばれなかった者にも「自分は見られている、必要とされている」という実感を与え続ける細やかな対話が積み重なり、選手たちの間に深い信頼が醸成されていった。
「日本代表に不満分子が出てこなかったのは、やはり森保さんの人柄のおかげでした。招集されなかったとしても、それで森保さんを恨んだり、尊敬の念がなくなったりということは、他の選手と話していても全く聞かなかったですね」
その愛情の深さを最も象徴するシーンとして、長友はワールドカップのメンバー発表時の出来事を挙げる。苦楽を共にしながらも外さざるを得なかった選手の心境を思い、森保監督は言葉を詰まらせ、目を潤ませた。
「ワールドカップのメンバー発表のときに、外した選手のことを思って目を潤ませた場面は、本当に人間味があるというか、選手に対しての愛がある人だというのが現れていました。あれは意図的に出る涙ではありません。本当に苦しんで、選び抜いて、そうして外してしまった選手たちに対する思いがやっぱり出ていると素直に思いました」
選手は動じない態度に驚かされ、数々の試練を与えられながらも温かい視線を感じられる。「敬畏」だけなら萎縮し、「愛情」だけなら惰弱に流れる。長友はその両面を森保監督から感じていた。
※取材日は2026年9月3日。

