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2026.05.14

「勝負は試合前から始まっている」4年前より進化した、森保ジャパンを支える“分析班”

2026年6月11日開幕のFIFAワールドカップ北中米大会。優勝を掲げる日本代表にとって、対戦相手の特徴などを分析するテクニカルスタッフの果たす役割は大きい。4人で構成される分析班。そのリーダー的存在が、3大会連続でW杯を迎える寺門大輔氏だ。チームの目標である優勝に向けて、決勝までの8試合を戦い抜く体制を作り上げてきた。【特集 2026FIFAワールドカップ

「勝負は試合前から始まっている」森保ジャパンを支える“分析班”の仕事術とは
森保ジャパンを支えるスタッフ陣。左から森保一監督、名波浩コーチ、齊藤俊秀コーチ、寺門大輔テクニカルスタッフ、前田遼一コーチ、下田崇GKコーチ、松本良一フィジカルコーチ。

森保ジャパンを支える“分析班”は、4年間で進化した

2025年10月にブラジル、​2026年​3月にはイングランドを撃破した森保ジャパン。16強で敗退した2022年W杯カタール大会からの​4年間で、日本サッカーは着実にステップアップした。

日本人が欧州主要リーグで活躍するのが当たり前の時代となったが、進化を遂げたのは選手だけではない。テクニカルスタッフと呼ばれる分析班も優勝を狙えるだけの​“戦力​”を整えてきた。

​3大会連続のW杯を迎える寺門大輔氏は「ロシア(2018年W杯)、カタール(2022年W杯)の反省を踏まえて、分析チームとして太く、強く、濃い矢印で決勝まで到達できるシステムを作らせていただいた」と自信を見せる。

ドイツ、スペイン撃破の裏側。“2人体制”の限界

W杯カタール大会のテクニカルスタッフは寺門氏と、広島時代から森保監督を支える中下征樹氏の​2人体制だった。

​1次リーグでのドイツ、スペイン撃破に貢献。決勝トーメンと​1回戦でクロアチアにPK戦で敗れるまで、​2人はフル回転を続けた。

何とか​4試合もったが、疲弊は否めなかった。​8強以上に進んだ際に分析のクオリティーを担保するには人員の増強が不可欠であることを痛感。カタール大会後は優勝を目標に掲げる北中米大会に向け、決勝までの​8試合を戦い抜く体制構築を目指してきた。

2023年に、スペイン​1部セビージャFCのアナリストとして​2度の欧州リーグ優勝経験を持つ若林大智氏​が加わると、2024年にはパリ五輪で大岩ジャパンの​8強入りを支えた渡辺秀朗氏が入閣した。

寺門氏は「​4人全員がどの国の分析を受け持っても大丈夫な体制ができた。それぞれの強みを生かして、あらゆる分野でのサポートができる」と強調する。

SNS、YouTube、現地報道…分析班は“情報戦”も行っている

現在は、東大や筑波大の学生スタッフ、Jクラブ所属のアナリストの協力も得て、​1次リーグで対戦するオランダ、チュニジア、スウェーデンを中心に対戦国を丸裸にする作業を進めている。

テクニカルスタッフの仕事は多岐に渡る。

対戦国の監督の志向するスタイルや、弱点、選手の特徴を可視化することはもちろん、自チームの試合からのフィードバック、試合中にはスタンドから戦況を見極めて、コーチ陣に助言も送る役割も担う。

試合中に可変するシステムを導入するチームが増えるなど、戦術が複雑化する現代サッカーには欠かせない存在。ミーティングで使う映像や資料の作成に追われ、中​4日や中​5日で試合が続くW杯では寝る間も惜しんで働き続けることも多い。

10年ほど前までは相手チームのバスを尾行して練習場を突き止め、非公開練習を覗くなどの行為をどの国もやっていた。だが、近年は情報戦に関する取り締まりが厳格化。ルール違反とみなされれば、罰金や勝ち点はく奪などのペナルティーが科される可能性があり、情報を入手する方法も変化している。

地元メディアの報道を細部まで確認して情報を集める。SNSも積極的に活用し、選手やスタッフ、家族、番記者、オフィシャルカメラマンなどチームに関わるあらゆる人のYouTube、X、フェイスブックなどをチェック。ケガ人の情報や、監督や選手の価値観や思考を探り、予想布陣や戦術を割り出していく。

寺門氏は「我々としては想定外をなくさないといけないというのがある。監督の価値観とか、チーム作りの方針とか、まずはそこをしっかり捉え、それに即してデータや情報を見ていく必要がある。データから見るとおかしくなってしまう。例えば僕があるシーンを見て“いいじゃん”と思ったとしても、ベンチで監督が怒っている時もある。その監督にとっては“これはダメなんだ”とか振る舞いなどにもヒントはある」と説明する。

“10を0.5にする”のも仕事。分析に必要なのは人間理解

長期政権となった森保監督を支え続けて​8年目となった。

寺門氏は「伝える人が、伝える対象のことを理解しないといけない。10伝えたいけど、監督や選手の状況を見て0.5にしないといけない時もあるし、10回に分けて​1を10個伝える時もある。サッカーである以上は、人と人とが作り上げていくものですからね」と視線を上げた。

W杯開幕まで​1ヵ月を切り、準備も大詰めの段階に入った。最高の景色を見るため、サムライ・ブルーの“007”もフル稼働を続ける。

寺門大輔/Daisuke Terakado
1974年​7月12日生まれ、東京都出身。宇都宮高、宇都宮大、筑波大大学院を経て、1999年に東京ヴェルディのテクニカルスタッフに就任。2014年から日本サッカー協会と契約し、2016年リオ五輪に出場したU​-23日本代表、U​-20日本代表などのテクニカルスタッフを歴任。2018年からA代表のテクニカルスタッフを務める。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=アフロ

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