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2026.04.02

「焦りはなかった」――鈴木彩艶、5ヵ月のリハビリを経て日本代表復帰。W杯へ続く守護神の覚悟

サッカー日本代表のGK鈴木彩艶(パルマ)が、2026年3月の英国遠征で約5ヵ月ぶりに代表復帰した。3月29日のスコットランド戦、4月1日のイングランド戦に先発出場し、ともにブランクを感じさせないプレーで、1-0の完封勝利に貢献。2026年6月11日開幕のW杯北中米大会に弾みをつけた。骨折による長期離脱、批判にさらされたクラブ復帰戦――それでも守護神に焦りはなかった。

「焦りはなかった」――鈴木彩艶、5ヵ月のリハビリを経て日本代表復帰。W杯へ続く守護神の覚悟

鈴木彩艶、日本代表復帰戦でビッグセーブ。スコットランド戦で示した存在感

約5ヵ月ぶりの復帰戦で、GK鈴木彩艶がいきなりチームを救った。

歴史的初白星を手にした2025年10月のブラジル戦以来の国際Aマッチとなった2026年3月29日のスコットランド戦。日の丸にカムバックした感慨に浸る間もなく、前半8分に最大の見せ場がやってきた。

自陣左サイドからクロスを許し、至近距離から2024-2025年セリエA最優秀選手のMFマクトミネー(ナポリ)に打たれたシュートを驚異的な反応でストップ。痛みの残る左手ではじいたボールは左ポストに跳ね返り、窮地を脱した。

「本能的な反応。あそこで失点しなかったことが非常に大きなポイントだった」

後半10分にDFロバートソンの強烈なシュートを左に飛んで防ぐなどビッグセーブを連発。守備重視のサッカー文化が根付く“カテナチオ”の国イタリアのクラブで守護神として活躍する実力を示した。

「キーパーとして(失点)ゼロにこだわれたことは非常に大きい。今後にもつながると思う」

復帰戦を完封で飾りリズムをつかむと、続く4月1日のイングラド戦では19本のシュートをシャットアウトした。会場はロンドン北西部に位置するウェンブリースタジアム。約8万人の観衆を集めたサッカーの聖地で日本4度目、アジア勢12度目の挑戦で初めてイングランドを撃破する歴史的金星を手にした。

骨折からの復帰。鈴木彩艶が語る「焦りはなかった」リハビリ期間

2025年11月に左手第3指と舟状骨を骨折。キャリアで初の長期離脱だったが、W杯に間に合わない不安は「なかった」と手術3日後からリハビリを開始した。

「左手以外のところは全部やった」

握力が一時8kgまで落ちた左手以外は筋力を維持しながら、足元の技術強化を中心に取り組んだ。右手1本でのハンドリング、特殊メガネをつけて神経を鍛える脳のトレーニング、さらに英会話やピラティス、取材対応まで。リハビリ期間中も1日のスケジュールはびっしり。

完治しておらず患部に痛みは残るが、左手の握力は約50kgまで戻った。約70kgあるの右手との差はまだあるが、プレーに支障はない状態まで回復していた。

W杯を見据えた決断。プレミアリーグを断った理由

所属するパルマで3月13のトリノ戦に先発して戦列復帰したが、4失点で大敗し、続く3月21日のクレモネーゼ戦も先発したが、0-2で敗戦。

試合勘の欠如もあり、復帰後2試合で6失点を喫した。厳しいリスタートなり、イタリアメディアから批判も浴びた。

満足いく結果を得られないまま日本代表に合流したが、焦りはなかった。3月28日のスコットランド戦前にこう語っている。

「長い間ピッチに立つことはできなかったが、できることもたくさんあったし、それをやってきた自負もある。感覚は日に日に良くなっている。これからのプレーでリハビリ期間にやってきたことが間違っていなかったと証明したい」

そして、有言実行のプレーを見せた。

鈴木は常に2026年6月11日開幕のW北中米大会を見据えた選択をしてきた。

浦和レッズからシントトロイデンに移籍した2023年夏には、世界最高峰プレミアリーグの強豪マンチェスター・ユナイテッドからもオファーが届いたが、出場機会を優先して断った。

少年時代からの夢であるプレミアリーグを蹴ったのは、所属クラブでピッチに立ちつづけなければ日本代表に招集される可能性がなくなると考えたから。

2025年夏にも複数のプレミアクラブから獲得を打診されたが、W杯前に移籍するリスクを考えてパルマに残留した。

「4ヵ月という初めて経験するリハビリ期間だったが、常にワールドカップという目標を持ちながらできた。自分としてはポジティブに捉えている」

森保ジャパンの守護神へ。鈴木彩艶がW杯で果たす役割

日本代表が優勝を目標に掲げるW杯。森保一監督は「まだ実力的に本命ではない。ダークホースとして優勝を狙いにいく」と語る。

格上との対戦では押し込まれる展開が予想されるため、守護神の活躍は不可欠だ。開幕まで2ヵ月余り。鈴木彩艶が復活を遂げたことは大きな意味を持つ。

鈴木彩艶/Zaion Suzuki
2002年8月21日、埼玉県さいたま市生まれ。小学生時代から浦和の下部組織で育ち、2019年2月にクラブ史上最年少16歳5ヵ月11日でプロ契約締結。2021年3月のルヴァン杯湘南戦でプロデビューした。2023年8月にベルギー1部シントトロイデンに移籍し、2024年7月にセリエAパルマにステップアップ。2021年東京五輪代表にも出場し、A代表は2022年7月の東アジアE-1選手権香港戦でデビュー。国際Aマッチ通算22試合出場14失点。身長1m90cm、100kg。利き足は右。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=PA Images/アフロ

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