PERSON

2026.02.05

「結果より成長」日本代表・上田綺世のストライカー思考

2026年6月11日に開幕するFIFAワールドカップ北中米大会。優勝を目標に掲げる日本代表で攻撃の軸を担うのが​、FW上田綺世(フェイエノールト)だ。2025年10月のブラジルとの親善試合で決勝弾を決めて歴史的初勝利に貢献。2025-26年シーズン、オランダリーグで得点ランクの首位を独走する。欧州で活躍するストライカーの思考に迫った。

サッカー日本代表・上田綺世が語る、結果より成長を追うストライカーの思考法

目標は数字じゃない――成長を優先する上田綺世のプレースタイル

トップアスリートには短期​・中長期的な目標を設定した​うえで、目の前の課題を一つずつクリアしていく選手が多い。

ステップアップへの常套手段​だが、上田は違う。シーズンの得点数など具体的な目標を掲げることはない。数字やタイトルよりも、自身が成長するために必要な本質的な部分を重視する。

「僕自身には常に具体的な目標はない。例えば“シーズンで20点取る”という目標を立てると、視野が狭くなり、プレーの幅も狭くなると感じる。それ以上に自分がどう成長するか。できなかったことをできるようにすることを重視している。得点にこだわるのはいいけど、その原動力は20点の目標を立てなくても僕にはある」

基本的には目標にする大会などのマイルスト​ーンも置かない。だが、3年2ヵ月前だけは普段と違う感覚に陥り、頭に明確な目標が浮かんだ。

2022年12月5日。ワールドカップ・カタール大会決勝トーナメント1回戦で、日本代表はクロアチアに1-1のPK戦の末に敗れた。16強敗退。チームが目標に掲げた“新しい景色​=ベスト8”に1歩届かなかった。

上田は当落線上からワールドカップメンバーに滑り込んだが、ピッチに立ったのは​0-1で敗れた​1次リーグ第​2戦コスタリカ戦の前半45分のみ。チームがスペイン、ドイツを撃破する快進撃を見せた大会で、自身は何もできないまま、世界​の舞台を去った。

「前回はW杯​2ヵ月前の活動で森保監督から​“今のままではメンバーに選ぶのは難しい​”と言われていた。そこから選ばれたのはうれしかったけど、本番は正直、何もないというか、案の定、何もできなかった。チームが新しい景色に向かう​なかで何も助力できない。同じ船にただ乗っているだけということが、​すごくむなしくて、悔しがる立場にもなかった。自分は先を見るタイプではないが、その時だけは4年後にリベンジしたいと明確に思った」

欧州ステップアップと日本代表での歴史的勝利

ワールドカップ・カタール大会翌年の2023年夏にベルギーのセルクル・ブリュージュからオランダの名門フェイエノールトに移籍。着実にステップアップし、森保ジャパンの中心選手に成長した。

2024年10月のブラジルとの親善試合では、​2点差を追いついた後半26分にヘディングで決勝弾をマーク。過去​2分け11敗と一度も勝ったことのなかったサッカー王国から歴史的白星を挙げる立役者となった。

それでもボールを支配される時間が長かった試合内容に満足はしていない。

「カタールのワールドカップ後は主導権を握る主体的なサッカーを掲げて​3年やってきた。ブラジルに勝てたのはよかったが、僕らがやりたい戦い方ではなかったので、個人的には納得していない」

所属するフェイエノールトでは得点ランクの首位を独走。元オランダ代表のファンペルシー監督からの信頼も厚い。欧州でも一目置かれる存在となった。

「調子がいいという感覚はあまりない。少しずつ積み上げてレベルアップしてきたことが、今かみ合っているという感覚。ファン・ペルシー監督とは個人的なミーティングをして、細かいプレーの話もしてくれる。彼自身の現役時代の話は勉強になる。具体的な内容? それは僕がフェイエノールトにいる特権なので教えられない」

ゴールへの執着――少年時代から変わらぬ思い

得点へのこだわりは誰よりも強い。

少年時代からゴールに魅せられ「小さい頃からボールを蹴りたいというより、ゴールを取りたいという思いでサッカーをしてきた。壁にボールを蹴る時もパスを意識したことはない。壁は全部ゴール。それぐらい点を取ることに魅了されてきた」と振り返る。

ワールドカップ本番は​1次リーグでオランダ、チュニジア、欧州プレーオフB組(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者と対戦する。上田にとっては生活拠点を置くオランダとの対戦となる。

「難しい大会になりそう。オランダはリスペクトしているし、戦わないに越したことはないと思っていたけど、いざ同組になったら楽しみ。僕らが挑戦する側であるのは間違いない。いいチャレンジにしたい。W杯でゴールを決めれば、どんな感覚になるのか、楽しみ。4年前とはまっく違う立場で臨めるので、チームの目標である優勝に対して、しっかり助力したい」

上田綺世/Ayase Ueda
1998年8月28日​茨城県水戸市生まれ、。鹿島ノルテジュニアユースから鹿島学園高、法大へ進学。3年時にサッカー部を退部して鹿島に加入した。2022年​7月にベルギー​1部セルクル・ブリュージュに、2023年​8月にオランダ​1部フェイエノールトに完全移籍。日本代表は2019年南米選手権のチリ戦でデビュー。国際​Aマッチは36試合16得点。​1m82​cm、76kg。利き足は右。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=ANP Photo/アフロ

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