PERSON

2025.11.27

森保監督、史上初の通算100試合、歴代最高勝率69%。日本代表を強くしたその“人間力”

サッカー日本代表の森保一監督が2025年の最終戦となった11月18日のボリビア戦(国立競技場)で国際Aマッチ100試合目の采配を振り、3-0で快勝した。大台到達は日本史上初の快挙で、歴代2位の長沼健氏の73試合を大きく引き離す。歴代最高勝率69%を誇る長期政権を実現している指揮官の人間力に迫った。

森保一、史上初のAマッチ通算100試合。日本代表を強くした“人間力”の真価

日本史上初のAマッチ100試合

キックオフ直前の国歌斉唱で、森保一監督はほぼ毎試合、感極まって目頭を熱くする。100試合の節目となったボリビア戦も5万3000人を超える観衆を前にハンカチで涙を拭った。

「私が1人で100試合をやってきたわけではない。選手、スタッフを含めてチーム一丸で一戦一戦を戦う気持ちでここまで来た。感謝の気持ちでいっぱいです」

Aマッチ100試合到達は日本史上初の快挙。現役代表監督ではフランスのディディエ・デシャン氏らに次いで6番目に多い。通算成績は69勝14分け17敗。勝率は日本歴代最高の69%を誇る。

勝率69%を支える“気配り”と対話。森保流マネジメントの核心

長期政権を支えるのは、周囲への気配りだ。森保監督は主力、控え、ベテラン、若手、コーチ、スタッフを問わず誰に対しても分け隔てなく接し、皆との対話を欠かさない。根底にあるのは、相手への感謝とリスペクト。だからこそ自然体で嫌みもない。

代表活動後、三々五々にホテルを発つ選手たちをロビーで夜通し見送るのが恒例だという。その姿に選手は意気に感じ、チームの結束力はおのずと高まっていく。

森保政権下で最多71試合に出場するMF南野拓実(モナコ)はこう証言する。

「人間性の部分ですごく尊敬できる人だというのは、みんなが感じている。試合に出られる選手、出られない選手がいるなかでも、チームのために戦える雰囲気があるのは、森保さんの人間性あってこそ」

指揮官を「ボス」「ポイチさん」と慕う名波浩コーチも「日本代表のコーチの仕事をやらせてもらって、ポイチさんが率いるチームがなぜ強くなっていくか、なぜ粘り強いかがすごくわかった気がする」と話す。

森保監督がリスペクトするのはチーム内だけにとどまらない。

会見の冒頭では必ずメディアに対して「今日も取材に来ていただいてありがとうございます」と感謝を述べる。また、プライベートの外出先でもファンに囲まれれば1人1人に丁寧に対応。サッカー少年を見つけると、自ら歩み寄り「日本代表で待っているよ!」と声を掛けることも多い。

危機と変化の連続。進化し続ける指揮官

決して平たんな道のりではなかった。2022年W杯カタール大会のアジア最終予選では、3試合を終えて1勝2敗。解任危機に立たされたが、そこから息を吹き返し6連勝して本大会出場権を獲得した。

第1次政権の発足当初、練習メニューのほぼすべてを森保監督自ら指揮していた。しかし、W杯カタール大会アジア予選後の2022年6月からは斉藤俊秀コーチに守備面を任せるなど一部で分業制を導入。

W杯カタール大会後の第2次政権では、名波、前田遼一長谷部誠コーチを招き、完全分業制に変更した。指揮官は現場型から全体を統括するマネジメント型にシフト。

積み重ねた試合の分だけ、試行錯誤と進化を続けてきた。

2026年W杯優勝へ。視線はすでに101試合目

森保監督は「一戦一戦、次に続くのか、その試合で終わるのかを、自分のなかで覚悟してやってきている。本当に幸せなことをやらせていただいている。鞄持ちでもいいから日本代表の中にいたい。それぐらい日本を背負って戦う舞台にいられることは誇りでもあるし、喜びでもある」と言う。

ボリビア戦では後半26分に勝負を決定づける2点目が決まると、森保監督は珍しく選手たちが作る歓喜の輪に加わり、100試合到達を祝福された。

「2点目が決まった後に何人かの選手と目が合った。“来い、来い”と呼ばれたので、乗っかりました」

森保監督の人徳を象徴するシーン。試合後はペットボトルのウォーターシャワーを浴び、背番号100の記念ユニホームも贈られた。

大台到達は通過点に過ぎない。目標は、あくまで2026年6月11日に開幕するW杯北中米大会優勝。2025年12月5日には米・ワシントンで組み合わせ抽選会が実施される。

「W杯で優勝するためには、サッカーを国民の関心事にしないといけない。今まで以上の勝率を目指してW杯まで戦う」

次の代表活動は2026年3月。すでに森保監督の視線は101試合目に向けられている。

森保一/Hajime Moriyasu
1968年8月23日長崎県生まれ。長崎日大高校卒業後の1987年に日本サッカーリーグのマツダ(現サンフレッチェ広島)に入団。Jリーグではサンフレッチェ広島、京都パープルサンガ、ベガルタ仙台でプレー。日本代表として国際Aマッチ35試合に出場し、1994年W杯米国大会アジア最終予選では土壇場で出場権を逃した「ドーハの悲劇」を経験した。2004年1月に引退後はサンフレッチェ広島の監督として3度のJリーグ制覇。2017年10月に東京五輪代表監督に就任した。2018年7月からはA代表の監督を兼任し、2022年W杯カタール大会は16強に導いた。愛称はポイチ。身長1m74cm。

TEXT=木本新也

PHOTOGRAPH=西村尚己/アフロスポーツ

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