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2026.06.08

日本代表・上田綺世、「悔しがる権利もないような感覚」だった2022年W杯から4年

万能型ストライカーとして活躍が期待される上田綺世だが、決して順風満帆な道のりの果てにここまで来たのではない。ジュニアユースからの挫折、海外リーグでの苦悩、そして前回ワールドカップでの無念。停滞と飛躍を繰り返すキャリアは、まさに山あり谷ありの連続だった。しかし、そのすべてが今の不動のエースを形作っている。かつて「悔しがる権利すらなかった」男が、なぜ今、絶対的な自信を胸に頂点を目指せるのか。その進化の軌跡を紐解く。【特集 2026FIFAワールドカップ】

日本代表・上田綺世、「悔しがる権利もないような感覚」だった2022年W杯から4年

「万能型FW」の覚醒を支える挫折という栄養

日本代表のストライカー、上田綺世には決して答えない質問がある。他のFWに関する意見を求められることだ。

「彼の特長は彼のものでしょうし、自分が出たらどうこうとは考えていません。ピッチに入ってみなければ分からない部分も大きいですから」「彼のことは彼に聞いてもらったほうがいいと思います」

他者を評価し、あまつさえ上から物を言うことを厭う。そんな心優しい人柄だが、押しも押されもしない日本代表のエースであることは疑いようがない。

音を聞いただけで威力の違いが分かる強烈なシュート、ポストプレーの巧さとヘディングの強さ。身体のしなりと反応スピードを兼ね備えた「万能型」のFW。だが、2022年カタールワールドカップでは苦しんだ。森保一監督が選んだファーストチョイスは、前線から何度でも相手を追う「スピード型」の前田大然だった。押し込まれる展開が多かった日本にとって、前田のような献身的なファーストディフェンダーが適任だったのだ。

挫折はこれが初めてではない。外部から見る上田の人生は光と影が交互にやってくる。中学時代、所属していた鹿島アントラーズのジュニアユースからユースチームへの昇格を果たせなかった。だが法政大学で大活躍し、注目を集めて鹿島に舞い戻った。

2021年の東京五輪では攻撃の核として期待されたものの、メンバー発表直前に負傷し本領を発揮できなかった。それでも2022年、移籍したベルギーのサークル・ブルッヘでは40試合出場22得点という圧倒的な数字を残す。

ところが2023年に移籍したオランダのフェイエノールトでは初年度が5得点、2年目は7得点と苦しんだ。怪我、メディアからの厳しい批判、出場機会の減少など、うまくいかない時期を過ごした。それでも3年目でついに信頼を勝ち取ると31試合で25得点を挙げ、オランダリーグの得点王に輝いた。

今は、不思議なほどボールが上田に向かって飛んでくる。彼はこの現象について、コンディションの良さからくる「嗅覚」だと語る。「得点感覚というか、嗅覚で飛んでくるところが分かるのは自分の状態がいい部分でもあると思います」と明かす。ストライカーとしての長年の経験から「なんとなくここにボールが来るだろう」とボールの飛ぶ先を察知していると説明している。上田は日本のファンの前でもその独特の嗅覚を証明したことがある。

4年前と比べると立場も価値も全く違う

2025年10月10日にパナソニックスタジアム吹田で開催されたパラグアイ戦。1点ビハインドで迎えた89分に上田は投入された。そして出場からわずか5分後の90+4分に同点弾を叩き込んで見せた。

右サイドから上がったクロスに、ニアサイドで瀬古歩夢が突っ込む。瀬古がボールに触れず流れてきたところに上田が合わせた得点は、単に短い出場時間で奪ったことだけが素晴らしかったのではない。不思議な体勢でボールを待ったことがゴールを生んだのだ。

瀬古が飛んだ時点で、瀬古はそのままゴールを狙うか、そらして自分より後ろの味方にパスするのがよくあるプレーだ。そしてボールは瀬古がかすかに頭に当てそうなタイミングだった。だが瀬古はギリギリで触れられない。予想が外れたパラグアイの選手は2人がボールを見送った。しかし、そこにファーサイドから一人飛び込んだのが上田だった。

もしも瀬古がしっかりボールに触れられれば、そのままボールはゴールに向かうか、そらしたボールがファーサイドに飛ぶかのどちらかだった。上田がいたポジションなら瀬古からのふわりとしたボールに備えていてもおかしくない。

ところが上田は腰を落として低いボールがこぼれてくるのを待っていた。そして狙い通りのボールが予定していたかのように上田の前に来た。この研ぎ澄まされた読みと予測が、今の彼にゴールを引き寄せている。

実は2022年カタールワールドカップで日本が敗退し、最後の囲み取材があったときに、筆者が上田に4年後の期待を口にした。そのとき上田は深く頷いていた。2025年11月に「ここまで順調に来ていますね」と水を向けると、彼はこう振り返った。

「成長率は悪くないと思っていますが、うまくいかないシーズンのほうが個人的には多かったと感じています」

「うまくいかなかったシーズンで受けた刺激や、そこで感じた課題としっかり向き合ってきたからこそ今の状態があると思っています」

そして「4年前は代表にギリギリ呼んでもらえた。ただその期待に応えられず、何も貢献できませんでした。結果的に4年前と比べると立場も違うし、選手としてのクオリティも価値も全く違うものになっていると思います」

2022年大会は「悔しがる権利もないような感覚」だったと語る上田だが、充実した4年間を経て、今は不動のエースとなって新たなワールドカップの舞台へと挑む。光と影が表裏一体となって巡る運命ならば、4年前が深い影だった分、今回はその分だけ眩い光が待っているはずだ。

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=松尾/アフロスポーツ

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