PERSON

2026.06.04

25歳HBD・久保建英、「ぶっきらぼう」な鎧の下にある、生真面目な素顔

若くして「神童」と呼ばれ、過剰な注目を浴び続けてきた。そんな久保建英がかつて報道陣に向けたその視線には、周囲を寄せ付けない冷徹さと、強気な言葉の端々にのぞく若さゆえの鋭さがあった。しかし、日本代表のピッチや舞台裏で見せる本当の姿は、私たちの抱く「エリート像」とは少し異なる。長くその歩みを見続けてきた者だけが知る、彼の素顔とキャリアの変遷を紐解く。【特集 2026FIFAワールドカップ】

25歳・久保建英、「ぶっきらぼう」な鎧の下にある、生真面目な素顔

日本代表のピッチや舞台裏で見せる本当の姿

一見、ツンとすましたように見える久保建英の取材対応だが、長く見ていると、実は人の良さを隠そうとしてそう振る舞っているように思える。若く、実績も残していないうちから過剰な注目を集めてきた選手が、足下を見つめ続けるために、あえて素っ気ない態度を取っているのかもしれない。

時折強気な発言をしてきたのも、自分を奮い立たせていたのだろう。まだ日本代表でゴールがなかったとき、報道陣から「初ゴール」について質問が出ると「それは期待してもらっていいと思います」と即答した。その堂々たる物言いは報道陣に驚きを持って受け取られていたが、結局得点なく終わると失望が浮かび上がってきた。

2022年カタールワールドカップのときは、とにかくぶっきらぼうだった。一つの質問にほぼ一言か二言だけ。「話したくない」というオーラを身に纏い、報道陣を見渡し、早々に対応ゾーンを後にする。

だが、実像はどうだろうか。

ウォーミングアップの一つに「ロンド」「鳥籠」と呼ばれるメニューがある。円周上の選手と円の中の選手に分かれ、円周上の選手は円の中の選手にボールを奪われないようにパスを回すというトレーニングだ。円周の選手に比べると円の中の選手は大変だ。ボールを追い回さなければならない。

この練習が始まると、久保はいつも最初に「僕、中に入ります」と言って、大変な役割のほうを自ら買って出ていた。チームの中でもっとも若かったからかもしれない。だが、小学校のころにスペインの名門バルセロナに見出され、スペインで研鑽を積んできたとは思えないほど、彼の礼儀作法は日本的で生真面目だった。

久保が円の中に入らなくなった姿を見たのは2024年1月、アジアカップのときだった。そのときはU-19日本代表の選手が帯同していたため、22歳の久保は円周上を選んだ。そのことについて水を向けると「僕ももう長くやっていますから、そろそろ」と当然のことのように答えてきたが、2019年5月に初選出されて以来、5年間も円の中に入り続けていたのだ。

25歳の「クボ君」が手にした、安堵と誇り

ときおり報道陣の前でも「やんちゃ」な姿を見せることがある。2023年6月20日、パナソニックスタジアム吹田でのペルー戦に出場した久保は、GK中村航輔と一緒に報道対応エリアに出てきた。手にモバイルスピーカーを持っていて、4-1の勝利ということもあってご機嫌だった。

久保は「やっと音楽の趣味の合う人ができたんですよ」と言いながらラテン系の音楽をかけている。まるで海外の選手のようだった。そのまま話を聞こうとするが、やはり音がうるさくて声が聞こえない。そこで「聞こえないよ」と言うと、すっとボリュームを落とした。とても素直なのだ。

実際、2022年カタールワールドカップのときも「質問しないでくれ」という無言の圧力を全身で表現しつつ、報道陣とアイコンタクトして「もう大丈夫」という合図を待っていた。無視して通り過ぎるようなことはなかった。

そのワールドカップのスペイン戦で、久保は先発したものの前半だけで交代となった。自分がプレーしているスペインとの対戦は久保にとって楽しみだっただろう。しかも久保と交代した堂安律が同点ゴールを叩き込んでいる。

ところが試合後に取材対応エリアに現れた久保は笑顔で「よかった!」とまず一言。続けて「僕個人的なことを言わせてもらうと、今日は体もキレてたので、このままやろうと思った矢先の交代だったので、そこはちょっと悔しかったですけど、ま、もう出てない自分ができることは味方を信じることだけだったので」と語った。文字にすると交代に不満を持っているように見えるかもしれないが、このときの久保は声を弾ませ、陽気に語っていた。捻くれた様子など、微塵も見えなかった。

それに久保は自分をすごいエリートだとは思っていない節もある。2022年ワールドカップ開幕直前にそこまでの歩みを「そんなに順調ではなかったと個人的には思っていますし、今回のワールドカップもギリギリでなんとか滑り込んだという感覚が自分の中にはあります」と語っていた。

2024年には「勝敗の責任を問われるような立場になった」と言われ、うれしそうな表情になったのは、やっと「クボ君」と言われるようなアイドルではなくなったという安堵感だったのかもしれない。

そして今回のワールドカップ。「前回はギリギリで選ばれましたと言っていましたが、今回は立場を違えて迎える大会です」と聞かれた久保は「今回選ばれるとは思っていました。そういった意味では前回とは違った立ち位置にいるとは思います」と自信を見せている。

17歳で日本代表入りした久保も6月5日で25歳を迎える。チーム内での年齢順は下から5番目だが、出場試合数で数えれば上から6番目という実力者だ。強気なプレーは変わらないが、報道陣への対応には角の取れた柔らかさが漂う。

年齢を問われると、「年齢でサッカーしているわけじゃないんで」と突き放した後に「なんか誕生日プレゼント、待ってます!」と笑わせ、久保は取材対応エリアを後にした。

TEXT=森雅史

PHOTOGRAPH=松尾/アフロスポーツ

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