アスリート、文化人、経営者など各界のトップランナーによる、人生の特別講義を提供するイベント「Climbers(クライマーズ)」。その第9弾が、2026年6月8日、9日の2日間にわたって開催され、ビジネスパーソンを大いに熱狂させた。今回、高野山大学 学長/文学部教授・博士(密教学)の松長潤慶さんによる特別講義を一部抜粋して掲載。すべての講義を聴くことができるアーカイブ配信はこちら。※7月22日(水)7:00〜7月28日(火)23:59までの無料限定公開。申し込みは画面内下の「無料で視聴登録する」より。

人間は180万分の1の存在に過ぎない
人はどうして生まれてきたのか、そして何のために生きるのか。私は高野山大学にて人間が抱える普遍的な疑問について授業を行っています。高野山は和歌山県北部に位置する真言密教の聖地。今から1200年前に弘法大師空海によって開山されました。この弘法大師空海の教えには現代の人々が学ぶべき多くのことが含まれています。
私たち人間はホモサピエンスという種族になります。現在、世界に80億を超えるホモサピエンスが存在していますが、実は地球上の生命のうちの180万分の1に過ぎません。地球には約180万種の生き物が存在し、その90%以上を昆虫が占めています。179万9999種は人間以外の生き物。そのすべての生き物が地球の環境に適応しながら、命をつないでいっているのです。
この世の中に存在するもので無駄なものは何一つありません。80億の人類だけでなく、180万種の命あるものと、さらにそれ以外の命のないものも含めて、世界は成り立っています。それぞれがそのものにしかない価値を持ち、役割を果たしています。これが空海の教えであり、空海が説いた宇宙の法則の根本です。
しかし、私たち人類は人の視点で見たもの、判断したもの、感じ取ったもののみを判断の材料にしてしまいます。今の時代はことあるごとに「エビデンスが重要」といわれます。物事すべてにエビデンスを求める風潮があります。
そうした時代において、我々はつい自分の物差し、自分の価値観だけで物事を測ってしまいます。でも、80億の人間がいれば、80億通りの物差しが必要。それぞれの人間に価値があって、意味があって、この世に生を受けているのです。
知識よりも知性が大切
人間は生きるうえで、知識が重要だといわれます。もちろん、その通りです。本を読んだり、学校で勉強したりしながら、人間は知識を増やしていきます。そして知識や知恵といったものが、社会生活のなかで非常に重要な役割を果たしています。
でも、この知識や知恵が導き出す答えは「最適解」に過ぎません。はたして既存の知識を使って得た「最適解」は、いつの時代、どんな場面でも本当に「最適」といえるのでしょうか。
知識というものに対する言葉は「知性」です。知識や知恵は答えを求める一つの手段ですが、知性は答えのない事柄をずっと考え続ける力といえます。最終的に解答を得られなくても、ずっと考え続ける姿勢のことなのです。
あらゆる命と同じく、私たちひとりひとりも生かされている存在です。周りとの関係性がなければ命を保つことはできません。生かされた命であるから、自分を生かしていただいている周囲のお役に立っていこうという考え方が重要。これが「利他」ということです。
知識よりも知性を大切に、ヒューマンセンタードのものの見方から、ネイチャーセンタードへ視点を転換していく。これがこれからの時代を生きる大事なヒントになるのではないでしょうか。
松長潤慶/Junkei Matsunaga
1962年和歌山県生まれ。専門分野は密教学、密教図像学。1996年3月に高野山大学大学院 文学研究科密教学専攻 博士後期課程修了、博士(密教学)学位取得。2021年4月に高野山大学 副学長就任、2025年4月に同大学学長に就任し、現在に至る。出版物に『インドネシアの密教』(法蔵館 1999年)がある。
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2026年7月22日(水)7:00〜7月28日(火)23:59までの無料限定公開。申し込みは画面内下の「無料で視聴登録する」より。

