今大会、まだピッチには立っていない。それでも、ワールドカップ北中米大会に出場中の日本代表に欠かせない存在がいる。39歳で5大会連続ワールドカップ出場を果たしたDF長友佑都(FC東京)だ。試合中はベンチから誰よりも大きな声で仲間を鼓舞し、過去4度の出場経験で得た教訓をチームメートへ惜しみなく伝える。ムードメーカーの域を超えた存在として、欠かせないピースになっている。【特集 2026FIFAワールドカップ】

「W杯中毒」39歳、5大会連続出場のモチベーション
何度経験しても特別な大会であることに変わりはない。2010年南アフリカ大会の初出場から5大会連続5度目の大舞台。「W杯中毒」を自称する長友は大ベテランの域に入る39歳になっても、誰よりも目をギラつかせている。
「この興奮とアドレナリンは他にない。モチベーションは誰よりも高い。このために4年間やってきたので」
今大会は選手のステータスを示すパッチが導入されている。初出場の選手は「デビューパッチ」、5大会以上の出場となる選手は「レガシーパッチ」がユニホームの右肩に付けられている。
レガシーパッチの対象者は6人だけ。6大会連続のアルゼンチン代表FWメッシ、ポルトガル代表FWロナウド、メキシコ代表GKオチョア、5大会連続のクロアチア代表MFモドリッチ、ドイツ代表GKノイアーに加え、長友も名を連ねている。
出場ゼロでも存在感抜群。ベンチから戦う長友佑都
日本は1次リーグ2試合を終えて1勝1分け。第1戦でオランダに2-2の好勝負を演じ、第2戦はチュニジアを4-0で圧倒した。順調に勝ち点を重ねて最終戦のスウェーデン戦を残して3大会連続の決勝トーナメント進出を確実にしている。
ここまでの2試合でフィールド選手で出場機会がないのは体調不良でチュニジア戦を欠場したFW町野修斗(ボルシアMG)と長友だけ。ピッチに立ててはいないが、存在感は際立っている。
ベンチから誰よりも声を張り上げて選手を鼓舞。チュニジア戦ではベンチから出過ぎて開始2分で第4審判から注意を受ける場面もあった。
「ベンチから一緒に戦っている。相手がサイドにいる時は相当な声で圧をかけているし、ピッチの中は実質12人で戦っている。そう見えるでしょ?この前は始まって2分ぐらいで審判に注意されたけど、うまくコミュニケーションとりました。“大丈夫だ”とハグしして、審判のことも包みました」
出場ゼロでも存在感抜群。ベンチから戦う長友佑都
初戦のオランダ戦の2日前の選手ミーティングではW杯に懸ける思いを吐露してチームのモチベーションを高めた。第2戦のチュニジア戦前には第2戦が過去1勝3分け3敗と勝率が低いことを仲間に共有。その教訓を生かして、チームを引き締め直した。
日本代表は26人中13人がワールドカップ初出場。生き字引ともいえる長友の存在はチームに安心感を与えている。リーダーシップを目の当たりにした21歳のFW塩貝健人(ヴォルフスブルク)は言う。
「長友さんとはよく話すけど、本当に今でも一番アツい。ベンチでも一番声を出している。だからこそ、ここにいるんだと思う。そういうところは見習わないといけない」
不要論を力に変える。「存在価値を示したい」
第3戦のスウェーデン戦は引き分け以上で2位以上が確定。負けても3位で1次リーグを突破できる可能性が高い。決勝トーナメントを見据えてチュニジア戦からメンバーを大幅変更する可能性もあり、長友も万全の状態でスタンバイする。
「絶対にチャンスはどこからで来ると思うので、(出場を)絶対に諦めない。(自分が)出たらエグいほど盛り上がるでしょ? 拓実(南野)からも“佑都君が出たらベンチからエグいほど応援しますよ”と言われています。僕が出たら一気にボルテージを上げますよ」
アジア最終予選では事前合宿には常に招集されながら、全10試合でベンチ外。ワールドカップメンバーに選出された際には批判的な声も多かった。長友は不要論があることを自覚した上で、一蹴する。
「ワールドカップが終わるころには賞賛の言葉しかないでしょうね。そのくらいの自信と魂をもって、自分の存在価値を示したい」
今大会は練習から日の丸の入ったヘッドバンドを着用する。最高の雰囲気でスウェーデン戦に向かうチームの中心には、いつも長友の姿がある。出番があろうが、なかろうが魂のサイドバックが欠かせないピースであることに疑いの余地はない。

