放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。

「今年の春、新社会人になるのですが、私はよく『印象が薄い』と言われるので、うまく立ち回っていけるのか不安です。多くの若手を見てきた桝本さんの、印象に残る人・残らない人の差は何ですか? また、残る人になるにはどうすればいいのでしょうか?」という御相談をいただきました。
これは、よく若手芸人とも議論するテーマです。学生時代と違って、社会人は毎日が“初対面の組手”のようなもの。
取引先、顧客対応、グループ会社、プロジェクトによって編成されるチームなど、「はじめまして」が押し寄せてくるので、同じ不安を抱えている人も多いのではないでしょうか?
そこで今回は、育成現場で約1万人の若手を見守ってきた僕の知見をもとに、「印象に残る人・残らない人の違い」や、「印象に残りやすくなるコツ」をシェアしていきたいと思います。
そもそも、なぜ印象を良くしないといけないのか?
まずは、そもそもなぜ印象を良くしたり、印象に残る人にならなければならないのでしょう?
芸人学校に入ってくる生徒は、まだ学生気分が抜けていない若者もいるので、講義中にそっぽを向いたり、質問をしてもスカした返答をしたり、「悪びれる」ことで印象を残そうとする子もいます。
悪びれていても、学生時分は勉強さえできれば一目を置かれますが、社会人はそうはいきません。
どれほど仕事ができる人だとしても、会社の人が見ているのは“この人と一緒に仕事ができるか? したいか?”その一点だからです。
そう聞いても、「大勢に愛想良くするのは媚びを売っているみたいでイヤだ」「自分を分かってもらえる人がきっといるから、その1人だけに好かれたらいい」と思う方もいるでしょう。
ですが“その「出会いたい1人」が大勢のなかにいるからこそ、まずは「大勢に好かれてみよう」という思考を採用する”ことが、僕は“社会人になる”ということだと思っています。
では、「そもそも」を押さえたところで、印象に残る人・残らない人の違いをふまえた4つのポイントへと進みましょう。
①印象に残る人は「非言語」がうまい
若手のうちは言語(トーク)を頑張っても、知識や経験の浅さが滲み出て、かえって悪印象になることも。
印象に残りやすい若手に共通しているのは非言語のうまさ。つまり、姿勢、目線、相づちなどの所作がいいと好感を抱かれやすくなります。
ちなみに、EXIT兼近くんは、約80人がいた最初の授業で、相づちのタイミングが小気味よかったので、「この子はきっとトーク力があるな」と見抜き、会話をする前から一目を置いていました。
②アイスブレイクは「若手も」が令和
最近、多くの上役が用いてきた、初対面の相手を雑談で和ませる手法「アイスブレイク」に変化が起こっています。
それは、セクハラを避けるために、どんどん“平凡でつまらない話題”になってきているということ。
印象に残りやすい若手は、その傾向を知ってか知らずか、上役の溶解力に委ねるのではなく、平凡なテーマでも“一緒に溶かす協力者”になってくれる姿勢が備わっているんです。
③面白い話ができる人<普通の話が長くできる人
これは多くの若手が見落としがちな点。
なんとか印象に残ろうとして、初対面で「背は大きいけど気は小さい○○です!」などの、アイドルの自己紹介のような一行コピーを伝えてきたり、「つかみ」のような面白エピソードを披露してくれるのはいいこと。
しかし、そこにだけに傾注して、その後の会話が尻すぼみになり、結果「なんだかなぁ……」という若手が多いのです。
大切なのは“面白い話ができる人よりも、普通の話を一緒に長くできる人のほうが印象は良い”ということを知ることです。
④ケンカは最初の1分、会話は最後の1分
これは格闘技を習っていた時代の師匠に教わり、実践している教訓です。
最初に会うとき“人は「外見」を見ますが、別れるときは「内面」を心に残す”もの。
どんな会話であれ、最後の1分が好印象・悪印象を分けるので、別れ際の会話や挨拶こそ大切にしてください。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2024年M-1決勝に輩出。