PERSON

2025.01.14

木村拓哉、運を切り開くために大事なこととは

仕事も人生も謳歌する男のスタイルにフォーカスする、人気スタイリスト・野口強による連載「The character of G」に、俳優・木村拓哉が、モデルとして出演! タフなレザーに身を包むその姿は、ひとりの男のリアルをかくも雄弁に物語る。【特集 勝ち運アイテム】

木村拓哉さん
スエードパンツをはいて跨ったのは、1957年式のハーレーダビッドソンFLH。バイク好きの木村もテンションが上がる。ユーズドTシャツ¥393,800(ベルベルジン 遊歩道店 TEL:03-6434-0338)、パンツ¥132,000、ハンドルに掛けたジャケット¥110,000(ともにアンダーカバー×マインデニム)、ブーツ¥82,500(マインデニム/すべてマインド TEL:03-6721-0757)、他スタイリスト私物

映画では皆の「気質」がうまくハマッた気がします

藁焼きしたロブスターから立ち上る薫煙、ぷっくりと艷やかなキャビアのビーズ、パリッと香ばしく焼き上げた魚の皮目、そしてそれらを俊敏な手さばきで芸術的なひと皿に仕上げる料理人の真剣なまなざし――。現在公開中の映画『グランメゾン・パリ』は、木村拓哉演じるシェフ・尾花夏樹と仲間たちが、フレンチの本場・パリでミシュランの“三つ星”獲得に挑む物語。

極上の美食が準主役ともいえる本作に、豊かな奥行きと臨場感を添えているのがシズル感たっぷりの料理の数々だ。実際、試写でエンドロールの最中には、そこかしこから「お腹空いたね」の声が聞こえた。あたかも料理人のドキュメンタリーを見ているような没入感を感じた旨をインタビュー冒頭に投げかけると、木村は「してやったり」というような表情でこう返してきた。

「そう感じていただけたのはすごく嬉しいです。本来なら味も匂いも伝わらないはずの映画という媒体で、料理の描写は見る方に最も味わっていただきたい部分でもありましたから。演る側としては芝居に没頭しているので忘れがちでしたが、自分も試写で見た際は『なんてクレイジーなことをやっていたんだ』と改めて感じたほどです」

映画の舞台は、世界的なパンデミックを経た後のパリ。フランス料理の本場でアジア人初の“三つ星”を獲得するため、『グランメゾン東京』のかつての仲間たちとともに新店舗を始動した尾花。国境や文化の壁を乗り越えながら、挫折を経て栄光を摑むストーリーが描かれるなか、物語のカギとなる料理の監修を手がけたのが、自身も2020年にパリでアジア人初となるフランスの“三つ星”を獲得した「Restaurant KEI」の小林圭シェフだ。

現地の料理で外国人シェフが、それも個人店で“三つ星”を獲得するのは奇跡ともいわれており、映画では小林シェフが経験したであろうコミュニケーションの困難さも随所に投影。木村自身も、膨大なフランス語の台詞には、大いに面食らったと吐露する。

「文法も発音も素人の自分がフランス語を話すんですから『できるわけない』というメンタリティからのスタートです。でもこれは、共演した沢村(一樹)さんも危惧されていたことですが、演じる側が生半可な発音で話したら、シーンのリアリティは半減してしまう。フランス語指導の先生も、こちらが上手く発音できなくても、トライし続ける限り忍耐強くポジティブに指導してくれて。現場では毎回、吐きそうになっていました(笑)。

それを支えてくれた言語指導の先生、料理監修の圭さん、共演者ももちろん、彼らの『諦めない、捨てない』という気持ちがなかったら、まず形になってないと思います。今作に限ってかもしれないですが、皆が持つ『気質』のようなものがうまくハマッてくれたような気がします」と振り返る。

料理に人生をかけ、時に周囲とぶつかりながらも“三つ星”獲得に突き進む主人公・尾花夏樹の情熱は、全身全霊をかけてプロジェクトを遂行させるビジネスパーソンにも大いに共感を呼び、刺さりまくる。だが意外にも当の木村は尾花という役柄に対して「あまり共感はしたくないかな」と一歩引いて眺める。

「自分の中に譲れないものがあり、挑む構えを取り続ける意志の強さはすごいと思いますが、尾花ほど素直じゃないヤツは同じ現場にいたらめんどくさいかもしれない(笑)。自分は尾花ほどではないにしろ、プレッシャーを足かせには絶対にしたくないタイプ。なにかをやり抜こうとするモチベーションが砂時計のようなものだとしたら、自分は、それが日々ちょっとずつ足されていく感じに近いです」

つま先だけでも前に進む。運を切り拓くにはそこから

数多くの代表作を持ち、全国各地でライヴを精力的にこなすアーティストでもある木村。多忙な日々のなかで「お守り感覚で肌身離さず」と語るのは、本誌の撮影でも身につけたゴローズのジュエリーだ。親交の深かった髙橋吾郎が手がけたネイティブアメリカンジュエリーは、古くは高校時代に入手したものもあり、リペアなどには自身が故人の家族に直接連絡を入れ出向くという。

ラッキーアイテムでもある? との問いには、「道を拓くきっかけは、モノよりも、気持ちの持ち方のほうが大きいのかなと思います。人によっては大きな一歩をポンと踏みだすこともできるけれど、反動で大きなダメージを食らうこともありますよね。大事なことはつま先だけでも日々少しずつ進んでいくこと。そしてそれを『試みる』ということが、結果的に運を切り拓くということにつながるんじゃないかな」と謙遜する。

木村拓哉の挑戦は、これからも着実に進んでいく。

木村拓哉/TAKUYA KIMURA
1972年東京都生まれ。1991年にCDデビューを果たし、バラエティ、広告などで活躍。映画やドラマでは数多くの主演作を持ち、アーティストとしてもライヴをこなす。映画『グランメゾン・パリ』の公開前日の2024年12月29日(日)には、スペシャルドラマ『グランメゾン東京』がTBS系にて放送された。

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TEXT=畠山里子

PHOTOGRAPH=伊藤彰紀(aosora)

STYLING=野口強

HAIR&MAKE-UP=中嶋竜司

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