放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、王者「令和ロマン」をはじめ、多くの教え子を2023年M-1決勝に輩出した・桝本壮志のコラム。
年末らしい御相談がきました。
「仕事がうまくいかず逃げ出したい。でも、やらなければいけないことがある。そんなときの心の不安定さとは、どう向き合うべきなんでしょうか?」
とくに師走は、年末進行などで仕事が山積するけどメンタルはいつも快調ではない。「逃げたい」と「やらなければ」の板挟みでモヤモヤしている方も多いですよね。
そこで今回は、吉本興業で芸人さんのメンタルサポートをこなし、テレビ制作、コラム・小説、企業コンサルなどの仕事を同時進行させてきた僕の知見を、相談者さんが抱えている3つの感情、「①仕事がうまくいかない」「②逃げ出したい」「③でも、やらなければいけない」に沿って、言葉の酸素を届けてみたいと思います。
1.「仕事がうまくいかない」は、あなたが〇〇な人だから
ご存じのように、芸人さんは下積みが長いので、よく教え子たちから「仕事がうまくいかない」という相談を受けます。では、そもそもなぜ「仕事がうまくいかない」と感じるのでしょう?
それは“数ある職業の中から、好きな仕事を選んだから”です。
たくさんいる異性の中から「いいな」と感じた相手は、好きになった人だからこそ、嫉妬したり、モメたり、大嫌いになったりするもの。
それと同じで、好きで選んだ仕事には、それなりの熱とテンションがかかっているので、「うまくいかない」と感じることも多く、心もかき乱れやすいんです。
仕事がうまくいかないと感じる人は、嫌いな仕事をして偉くなるより、好きな仕事をして汗をかきたいという「働く意欲のある人」でもあるので、まずは、そんな自分を誇らしく思い、肯定していきましょう。
ちなみに、僕が芸人さんに伝えている、仕事がうまくいかないときの対処法は“うまくいっているときこそメモしろ”です。
誰でも必ず定期的に「うまくいかない」と感じるターンが来るので、爆笑がとれた漫才、ぜんぶ答えがハマった大喜利など、うまくいったときこそ、そのイメージを書き留め、うまくいかないときに読み返す。これは一流アスリートも実践しているスランプ脱出法でもあります。
2.SNSで広がった「逃げてもいい」への誤解
今では、「しんどいときは逃げてもいい」という考えが一般化していますが、吉本NSC生と対話をしていると、以前にくらべて「逃げる=自分に合わないと感じたらすぐ辞める」という思考の人が増えているように感じます。
もちろん、心を病むぐらいなら辞めたほうがいいでしょう。しかし、押さえておきたいのは“アドバイスをしている人は、逃げたあとの面倒はみてくれない”ということ。
「逃げろ! そのあとはオレが食わしてやる」という男前さんの言葉なら真に受けるのも一興ですが、現実は、あなたが離職しても「あとは自力でヨロシク!」の人がほとんど。
大切なのは、「逃げたい=辞める」を直結させるのではなく、スタバのコーヒーのサイズが4種類あるように、自分に降りかかっている“重圧のサイズに合わせた逃亡先をつくる”こと。
例えば、知人の一流ヒットメーカ―は、「小旅行があるなら、小逃亡があってもいいよね」が口ぐせで、プレッシャーに合わせた逃避行先をいくつも持っているけど、仕事は絶対に辞めない。
成功者がSNSで発信する「逃げろ」の本質は、こういった姿勢でもあるので誤解しないようにしましょう。
3.「やらなければいけない仕事」に対する思考法
最後に、僕にも「逃げたいけどやらなきゃダメな仕事」はたくさんあります。
年間1000をこえる締め切りに追われる仕事をするうちに分かってきたのは、“人は「やらない理由」を考えたがる生き物”だということ。
「今日でなくてもいい」とか「発注者のオーダーが曖昧すぎる」とか、一度「やりたくない」と感じたら、何かと理由を生産して「やらない」に着地しようとする。
そして、「やる」から距離をおいていくうちに、“それが難しい仕事のように思えてくる”から厄介なんですね。
やらなきゃと感じた仕事は、この「遠ざける=難しく感じてくる」を回避するために、最初の3行を書いてみましょう。すると案外スラスラやれたりするのでおススメです。
ではまた来週、別のテーマでお逢いしましょう。